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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第89回

景気低迷前に事業改善する!

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 





前回は消費税率アップ(増税)や米中経済摩擦、日韓関係の悪化などの要因で景気が悪化する可能性があること、それへの準備が中小企業にとってポイントとなることを、お伝えしました。特に、売上減少はキャッシュフローに対して思った以上に素早く、大きな影響を及ぼすので、早めの対応が必要です。今回は景気低迷への備えについて、経営上の対策に焦点を当てて検討します。


売掛金回収の早期化

「景気の悪化が見込まれるが、その影響はそんなには出ていない」という今は、経営上の対策を執るにあたり程よいタイミングと言えます。影響が出始めたら難しい取組が、成功する可能性が高いからです。


第1は、売掛金の回収を買掛金の支払に先行させることです。80円の品物を100円で売るビジネスを回せると20の儲けが出て借金の必要はないと思われがちですが、買掛金の支払が売掛金の回収より先行してしまうと、自己資金での対応が必要となります。取引が大きいほどその負担は大きくなり、借入が必要になるかもしれません。


これを防止するため、売掛金の回収を買掛金の支払に先行させるよう顧客や取引先に依頼するようお勧めしています。「そうは言うがな、売掛について請求書を出してから支払ってもらう期間をそう簡単に短縮はできない。相手も、そのための準備が必要なのだから。」おっしゃる通りです。ポイントは、売掛の請求書を出すタイミングの早期化です。「それは難しいな。人手不足なのだから。」そういう企業にはIT導入をお勧めしています。


資金調達に苦しむ中小企業のご支援をしていると、売掛金回収の長期化が原因の一つと言える例に出会います。多くの場合「それで何十年もやってきた」という経緯がありますが、買掛金の支払いは短縮化傾向にあります。例えばクレジットカード払いについて。消耗品等をネット購買してクレジットカードで払うと、以前は翌々月払いが多かったが、最近は翌月払いが多くなったと思われませんか?それは店舗側の請求処理が早くなったからです。以前は店舗側が販売した伝票を処理してクレジットカード会社に請求するため一定の期間を要していましたが、しかし今はITを活用すると受注から発送までの流れに加えて、クレジットカード会社への請求までの流れが瞬時で処理できます。これを、利用するのです。


「IT化は、ハードルが高いのではないか?」確かに無料では実現しません。しかし、売掛回収の早期化による資金調達の不要化(減額)と、売掛金請求処理にかかる残業代節約を考えるとペイできるはずです。働き方改革時代に、最適なソリューションとも言えます。「IT導入補助金」などを推進する政府も、まさにこの効果を期待してのことです。是非、前向きに検討して下さい。



適正価格への引き上げ

景気悪化が見込まれるが影響はあまり出ていないタイミングで、次にご検討頂きたいのは、適正価格への引き上げです。「売値が安すぎるので利益が出ない。当社にも利益が出る価格を認めてもらいましょう」という趣旨です。これを言うと「中小企業に値上げは難しい。それに、原価以上の値段だったら売れるだけ利益が出るので、値下げしても売り切った方が良いと聞いたぞ」と反論される場合があります。それは、スーパーが閉店前に安売りするための理論です。中小企業が最初からその値段で売ると、売れば売るほど赤字になってしまいます。


筆者がご支援している企業にも、同様の例がありました。50年以上の業歴を持つ事業サービス業で、優れたサービス品質でお客さまからも高い信頼を得ていました。しかし、利益が出ていません。よくよく話を聞くと、リーマンショック時に引下げに応じて以降、価格がそのままになっていたのです。一方で、サービス向上のため必要となる機材の調達価格は年々、引き上げられています。これでは、利益が出るはずがありません。


社長も営業担当役員も「値上げを依頼した瞬間に取引を止められてしまうのではないか」と疑心暗鬼で、決心を固めるまで約1年を要しましたが、実際はほとんど、顧客を失うことはありませんでした。最初は「だったら今回は契約しない」と言われても、数ヶ月経ったら「やはり貴社でないと」と言って戻ってきてくれます。当社ほどの高品質なサービスは他にはなく、実は妥当価格(割安?)だということに気が付いてくれたようです。


「しかし景気が悪くなったら、また値下げを求められるのではないか?」おっしゃる通りです。だからこそ、今、適正価格までの引き上げをお勧めしています。このままだと、利益が取れない価格から更なる引き下げが要求されてしまいます。今、引き上げておけば、現在の水準に戻るだけでしょう。景気が回復した時に適正価格へ戻すことも、容易になると期待できます。


景気悪化は、中小企業にとって死活問題です。予め準備することでダメージを軽減できる可能性があります。支援が必要ならば、ぜひStrateCutionsにご連絡下さい。手遅れにならないよう、是非、今、手を打ちましょう!




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


印刷版のダウンロードはこちらから






なお、冒頭の写真は写真ACからbBearさんご提供によるものです。bBearさん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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