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第268回

金融監督指針改正の金融機関渉外担当者への影響

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



2月1日付け金融機関への監督指針改正により、地域金融機関の支援の軸がこれまでの金融支援から経営支援へと大きくシフトしました。

https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/city/index.html

今回はこのことが金融機関の渉外担当者にとってどんな影響をもたらすのかについて考えてみます。


「支援を求める者には与えられる」を目指している?!

2023年11月27日に金融庁HPに掲載された今次改正概要説明資料を見ると「①経営改善・事業再生支援等の本格化への対応」と「②一歩先を見据えた早め早めの対応の促進」そして「③顧客に対するコンサルティング機能の強化」という3つの柱があると示されています。

https://www.fsa.go.jp/news/r5/ginkou/20231127-2/00.pdf

第1の柱は2022年に既に「中小企業活性化パッケージ」及び「中小企業活性化パッケージNEXT」を踏襲、中小企業への支援が資金繰り支援フェーズから経営改善・事業再生支援フェーズへ転換したことを明確化したものと考えられます。

第2の柱は「顧客企業について変化の兆候を把握して一歩先を見据えた対応をすること、実際に悪化の兆候がある事業者には企業経営者に正しく状況認識してもらい解決に向けた提案をプッシュ型で提供すること、融資残高が少ないなど積極的な動きが難しい先には信用保証協会や他の金融機関と早めに連携、上2つの支援が提供されるようにすること」を求める趣旨と考えられます。

第3の柱は「第2の柱に挙げた支援を適切に行えるよう努力し、公的支援が活用できる早期経営改善計画策定支援やこれに付随するモニタリングは必須、そこから事業再生ガイドラインの活用などすそ野を広げると共に、金融機関として支援できない場合には可能な外部機関等を利用して提供できるようにすること」を求める趣旨と考えられます。

以上を総括的にまとめると、金融機関は地域の企業について融資ができる先は金融支援する、できない先には支援や適切な者の紹介などを行う、究極的には支援を求めているにもかかわらず受けられない企業は存在しないことを目指したいとの意向であると考えられます。



支援が必要な者を見付け動機付ける役割が期待されている?!

金融庁の考えからすると渉外担当者は今後、非常に重要な役割を果たす存在になると考えられます。「レベルの高い支援など渉外担当者には無理だ」という声が聞こえてきそうです。確かに支援能力の向上が金融機関として期待されており、渉外担当者も期待されているでしょう。一方で、企業が必要としている支援を全て、レベルの高い支援まで金融機関自身が行えるよう監督指針が求めている訳ではないようです。そのような支援は地域の活性化協議会などと連携して提供すれば良いのです。

渉外担当者に期待される最も重要な役割は、支援を必要とする中小企業を見つけ出し動機付けることだと考えられます。融資申込みを審査(信用保証協会による審査を含む)して「支援はできない」との結論が出た場合、これまでなら申込み企業経営者に結論を通告することで役割は終了したでしょう。資金調達できなくても長年にわたり持続する企業もあります。万一、資金繰り破綻が現実になり倒産してしまったとしても金融機関としては「我々は預金者の利益を守る判断をしたのだ」と言うことができました(それも正しい判断です)。

しかし今後は新しい軸が加わる可能性があります。企業の持続や地域の活性化に貢献することで自行庫の持続化・繁栄に繋げるメカニズムが期待される中、もっと本腰を入れて欲しいとの判断に繋がる可能性があると思われます。

融資申込を断る場合には企業が有するキャッシュを勘案、事業改善・事業再構築に着手して効果が出始めるまで資金繰り破綻する心配はないと想定されるなら「早期改善計画を策定して会社の立て直しを始めましょう。希望があれば伴走支援します」と金融機関が申し出られるかも知れません。あるいはそれほど猶予はないと考えられる場合には「倒産回避の手立てを早急に打つ必要があります。希望があれば金融機関として活性化協議会等と連携して支援します」と申し出られるかも知れません。

いずれの場合もきっかけを捉え動機付けるのは渉外担当者です。企業を良く観察し、自行庫の方針を踏まえて、いち早く援助の手が差し伸べられるようにする役割です。今後の企業・地域そして金融機関の活性化は渉外担当者の腕に頼るところが大きくなると考えられます。



本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>


なお、冒頭の写真は 写真AC から maroke さんご提供によるものです。maroke さん、どうもありがとうございました。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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