「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第79回

税理士と「雨の日」に備える

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 3月も半ばとなり、決算を迎える中小企業も着地点が見えてきたのではないでしょうか?一方で、春以降の景気について不透明な報道等を耳にするようになりました。米中貿易摩擦の高まりなどから年末から年初に株価が下落し、OECDも世界経済の減速を予測しています。今年に入ってから、国内実体経済の先行き不透明感を暗示する統計も発表されるようになりました。


 「それは困るな。中小企業は景気の影響をもろに受けてしまう。」仰る通りです。ここは油断せずに備えをしてください。受注や生産・販売体制などの事業上の対策を行うとともに、もう一つ、資金調達(財務)についての対策も忘れてはなりません。



「雨の日」の資金調達

 「景気後退局面など『雨の日』の資金調達は、これまでは非常に難しかった。しかし今や金融庁が『事業性評価』を声高に叫ぶなど、環境は改善されていると聞いている。資金調達について、あまり気にしなくて良いのではないか。」そのご意見については、はっきりと「危険です。油断しないでください」と言います。


 金融機関について「晴れの日には傘を貸し、雨の日には回収しようとする」と言われることがあります。多くは「金融機関はひどい」との文脈ですが、預金(実は借金)を原資に企業に貸し付けるというビジネスモデルを考えると、金融機関がそのような動きをしてしまう事情があるのです。この言葉の教訓を考える方が得策でしょう(詳しくは「『晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる』の教訓」をご覧ください)。


 第1は「晴れの日に借りておく」ことです。景気が良いうちに、当面の間、資金繰りできる十分な資金を確保しておくことができるかもしれません。


 第2は「雨の日に取り上げられない」ことです。半期や四半期の事業報告などコミュニケーションを密にすることにより、雨の日でも傘を取り返されにくい企業になることができるでしょう。


 第3は「相手の特性を鑑みる」ことです。金融機関(機関全体として・支店として)にはそれぞれ業種や地域などの得手不得手があるようです。自社の支援が得意な金融機関は、不得意な金融機関よりも雨の日の対応が穏当かもしれません。



税理士の助けを借りる

 「言いたいことは分かったが、それを我々経営者に求められても荷が重い。例えば『雨の日に傘を取り上げられないコミュニケーション』というが、どんなコミュニケーションを取れば良いのか、分からない」という社長もおられるでしょう。もっともだと思います。では、どうすれば良いのでしょうか。誰かの助けを借りるという手があります。第1候補は顧問税理士です。



税理士から情報をもらう

 「晴れの日に借りておく」そして「雨の日に傘を取り上げられないコミュニケーションする」教訓の実践場面で、税理士は味方になり得る存在です。税理士は、多くの企業の決算・申告を支援する中で、地域経済・景気に敏感だと考えられます。「最近は景気について不透明な報道もあるようだが、今年の決算・申告では地元企業はどんな業況だったのだろう?」と、地場の温度感を聞いてみることができるかもしれません。もし、このタイミングで借入する方向性となったら、どの程度の金額が適当かについて相談する相手として、顧問税理士以上の適任者はいません。また、金融機関とコミュニケーションしようとする場合、どんな資料を持っていくか、どんな話をすれば良いかについても、意見を求めることもできるでしょう。



税理士と一緒に情報を探す

 「相手の特性を鑑みる」教訓の実践は、少し高度かもしれません。金融機関がどんな企業を得意としているか、支援の実績があるかなどについて、税理士が情報を持っているとは限りません。この場合、一緒に情報を探すことができるかもしれません。税理士と企業経営者が、各々、同業種の交流会や勉強会などで得た情報を持ち寄るのです。1人だけの情報網では得られなかった情報も、複数人の網にかかる可能性があります。



二人三脚のメリット

 「金融機関と対決するため税理士を味方につけるのだな。」それだと味方が1で、敵が1です。それより「金融機関を味方に引き寄せるため、税理士の力を借りる」と考えた方が得策です。そうすれば敵がいなくなり、味方が2となります。「夢のような話だな。」今は、そうかもしれません。しかしトライしないで済ませるには勿体なさすぎる構図です。税理士と二人三脚で、ぜひトライしてみてください。




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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