「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第74回

中小企業に求められる臨機応変

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 先週、金融機関への融資審査(のみならず実際には金融機関の経営全般)に係る検査のため金融庁が使っていた「金融検査マニュアル」が本事業年度で廃止されることを受けて、企業の資金調達環境が大きく変化する可能性があると、お話ししました。今週は「金融検査マニュアル廃止で資金調達環境はどう変わるか、どうすれば良いか」について考えたいと思います。



金融検査マニュアル後に来る「事業性評価」

 倒産や貸倒れの可能性が高い企業に融資しないよう促す金融検査マニュアルに基づいて金融機関は「信用格付け」という仕組みで融資判断するようになったと、前回ご説明しました。これにより金融庁と金融機関は融資案件について同じ基準でコミュニケーションする「金融検査」が円滑になりましたが、「一方で経営改善に努め、他方でそのための資金を必要とする企業」への融資が難しくなったのです。それを金融庁前長官である森長官が問題視して「事業性評価」を推進するようになり、その隘路となっていた金融検査マニュアルが廃止されることになりました。このような次第から、金融検査マニュアルの次に来るのは「事業性評価」であることは明確です。



「事業性評価」とは

 では「事業性評価」は、どんな仕組みで融資審査するよう金融機関に求めているでしょうか。実はここが問題なのです。事業性評価は「財務データなど定量分析を中心とする『信用格付け』では企業の事業改善意欲や取組みの妥当性などが考慮しにくくなっていた。その弊害が出ないよう、定性情報も考慮に入れ『この企業の事業改善努力は実を結ぶのか(事業性はあるのか)?金融機関として地元の発展に貢献できるのか?』も考慮に入れながら融資判断する」よう促すものです。融資判断する特定の仕組みを提示していないのです。


 「なんだ、自分が求めてきた仕組みを取り下げて、それに代わる仕組みを提示しないなんて無責任だな。」そういう意見もあるでしょう。一方で、特定の仕組みを提示しない金融庁の考え方も理解できます。「信用格付け」が導入される前まで各金融機関は、自分なりの審査方法を持っていました。その中には今、金融庁が推奨する「事業性評価」に似た仕組みもあったでしょう。金融庁としては、必要ならば以前の仕組みを復活させて対応するよう期待していると思われます。



金融機関の動きを推察する

 「では金融機関には以前の通り、中小企業の事業性を評価して積極的に融資してもらいたい。」はい、筆者も同じ考えです。とはいえ、金融機関としては「それでは!」と即応できない事情があるようです。その理由は、平成11年に金融検査マニュアルができて約20年経過してしまったという事実が関係しています。


 人が働く期間を約38年(大学卒業から60歳定年退職まで)とすると、20年はその大半です。新入社員やマネジャーである期間も考えると、20年間とはバリバリと現場仕事に携わる年数とほぼ同じと言えます。これはつまり、ある金融機関に「信用格付け」以前に「事業性評価」のノウハウがあったとしても、それが忘れ去られるに十分な時間が経過したという意味です。


 一方で「信用格付け」は直ちに破棄すべきほど欠点だらけかというと、そうとも言えません。金融機関と金融庁のコミュニケーションを円滑化するだけでなく、中小企業と金融機関のコミュニケーション、そして金融機関の内部で現場担当者から中間管理職、決裁者までコミュニケーションするツールとしても使えます。


 とすると、金融機関は今後どう動くでしょうか?「信用格付け」による融資を中心としつつ、時には事業性評価融資を交えると思われます。「事業性評価融資には消極的なのか?」そう考える必要はないでしょう。ノウハウを身に付けるまでは、ペースを上げられないだけです。事業性評価するための情報がしっかりと揃った案件なら、勇気を出して事業性評価にチャレンジする金融機関もあると思われます。



金融機関に「事業性評価」をしてもらう

 以上の事情から、金融機関に事業性評価融資を検討してもらうには、中小企業の方から情報提供することがポイントになります。「これまでは、金融機関から求められた時だけ情報提供していたが。」はい、しかしここは臨機応変で「自分から情報提供する」に変わりましょう。「それは難しいな。」だったら顧問の税理士に仲介役を頼みましょう。「そんなこと、私の税理士にできるのかな?」その判断はとても重要です。このため事業性評価融資や税理士との付き合い方等に関するセミナーを東京池袋で2月13日に開催します。ご興味のある方は是非、以下URLをクリックしてみてください。

https://www.innovations-i.com/seminar/schedule/2618.html




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。



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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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