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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第133回

コロナ特別長期貸付を提案します

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 


コロナ禍により今まで経験したことのない景気の後退が続いています。報道によると、内閣府が発表する景気動向指数による景気判断は2020年7月時点で12ヶ月「悪化」となり、リーマンショック前後の11ヶ月を超えて過去最長を更新しました。GoToキャンペーンの実施など明るい話題もありますが、その効果は限定的で「一息つけた」といえるほどの回復は、まだ窺えません。


この状況は、特に中小企業にとって厳しいものになっています。経済構造からすると、多くの場合、景気回復の恩恵を受けるのは中小企業が最後だからです。下請構造で機能している中小製造業は、その典型例です。大企業が在庫を売れるようになり、補充分を生産するようになって中小企業に注文が来ます。実際に仕事をして注文された部品等を納めても、代金を手にできるのはずっと後なのです。街の小売店、飲食店などでも、大企業従業員が仕事に戻り、前のような給料をもらえるようになって一息つけるようになり、中小企業にも波及するようになって初めて以前の活気が戻ってきます。今は、その状態にほど遠いと言わざるを得ません。事業を継続していこうと心に決めている企業も、ビジネスが本調子に戻らない中、資金繰りを借入等に頼らなければならない状況です。このため政府系金融機関や信用保証を利用した「コロナ特別長期貸付・保証制度」を提案します。



「コロナ特別貸付・特別保証」を活用した中小企業

前回、本年4月に提案したコロナ特別短期貸付は、コロナ禍という緊急事態に素早く対処して、企業の傷みを最小限に抑えることを目的としていました。大規模な景気後退のみならず大災害や取引先等の倒産などに見舞われた中小企業は、時間が経過すればするほど「傷んで」しまいます。例えば買掛金や家賃が払えない、あるいは従業員に給料を払えないという事態は、企業の信用と、それに波及して体力を確実に落としていきます。手形を決済できないという事態が2回続けば「アウト」の宣告が出ます。そうならないように、一度でも不渡りを発生させないように、買掛金や家賃、給料を支払えない状況を発生させないように、必要な資金を迅速に供給するため、コロナ特別短期貸付及び特別保証を提案しました。実際は、この提案は受け入れられませんでしたが、この春に政府が講じた特別貸付及び特別保証を活用して、多くの中小企業は、傷みが致命傷にならない程度の期間内に、それなりの迅速さでもって資金調達できました。



事業性評価融資としてのコロナ特別長期貸付

一方で今、第2の危機が静かに近付いています。コロナ禍が長引き企業活動が本調子に戻らないために、コロナ特別貸付・特別保証を利用して調達した資金が底を尽きかけている企業があるという危機です。「ならば、コロナ特別貸付・特別保証をもう一度活用して資金調達すれば良いではないか。まだ制度は継続しているのだから。」そう単純にはいかないのが、金融支援の難しさです。春から夏にかけてコロナ特別貸付・保証を実施した政府系金融機関や信用保証協会は、コロナ禍の影響を受けた企業からの融資申込みに、普段に認める金額を超える金額での融資に応じました(これは、申込みに対して減額などした場合であっても言えることです)。


それから約半年が経過して、何が生じているか?企業は借入により調達した資金で買掛金や家賃、給料を支払ったでしょう。しかし売上は前ほどには振るいません。このため資金が流失したのですが、それは企業の決算が傷んでいる、企業によっては債務超過に陥っていることを意味しています。この春に政府が準備したコロナ特別貸付・信用保証は、既存制度の枠組み内で「特別の事象が認められるなら別枠を設ける」という趣旨の制度なので、融資額を増やせても、踏み込んでリスクを取るよう促すことは困難です。この制度のもとで政府金融機関や信用保証協会は、窮地に陥った企業への融資に前向きになろうとしても、なりにくい(なれない)のです。


「だったら、制度を工夫して対応できるようにすれば良いではないか。」はい、それがコロナ特別長期貸付です。ここで「長期」と言っているのは、春に提案した「短期」制度との対比ではありますが、貸付・保証期間の長短を言っているのではありません。企業の事業性を「今、この瞬間」だけでなく「かなり先の将来にわたって」判断するという趣旨です。柔軟に事業性を評価することで、今までの基準では受け入れられないリスクを取ることを可能にする制度とします。そのような制度でなければ、これらの企業を支援することができないからです。


「それでは貸し倒れが増えるのではないか?」結果的に貸し倒れが増える可能性を否定できませんが、この制度のもとで政府系金融機関に取ってもらいたいリスクは、「事業性が劣る」というリスクではなく、「信用格付では見つけられない事業性を評価する」というリスクです。金融庁が金融機関に求めている事業性評価で想定されているリスクに近いものです。これをどうやって実現するかについて、次回にご説明します。




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は写真ACからFineGraphicsさんご提供によるものです。FineGraphicsさん、どうもありがとうございました。



 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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