「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第109回

特別貸付・特別保証で断られる理由

落藤 伸夫 2020年4月13日
 



新型コロナウイルス感染症を防止するため政府は東京などに「緊急事態宣言」を発令、総額108兆円に及ぶ経済対策を発表しました。日本政策金融公庫による実質無利子となる特別貸付や、信用保証協会による保証枠をこれまでの2階建から3階建てとする危機関連保証(以下、「特別貸付・特別保証」といいます。)も実施しています。

一方で「特別貸付・特別保証だからと申し込んだのに断られた。どうなっているのか?」との話を聞くこともあります。今まで借りられなかった中、今回は「特別」なので借りられると期待していたのに借りられないと言われるのです。弁護士さんを通して質問して来られたケースもありました。今日は、特別貸付・特別保証でも断られる場合があるのはなぜなのか(全ての案件をフォローできているとは思いませんが)考えてみます。



借入を断られた方のケース

(筆者が世の中全てを知っている訳ではなく、直接にご照会があったり仲間などから見聞きしたケースに限られますが)借入を断られた企業は、売上等からすると少額とはいえない赤字を数年間にわたって出しているなど、一定の状況にあるようです。中には債務超過に陥っている企業もあります。「いや、我が社はもう赤字ではないぞ」と言われる企業でも、お話をお聞きすると、例えばリーマンショック時に赤字となって借入金の元本返済を棚上げしてもらうリスケジュールを受け、その後は黒字転換したけれども元本返済を再開していない(黒字額が小さいので、元本返済できるほどではない)という状況にあったりします。


このような状況にあった企業は平時でも新たな借入をするのは大変困難でした。金融庁が昨年まで利用していた金融検査マニュアルに基づく信用格付けによると「正常先」や「要注意先」には格付けられず、「要管理先」もしくは「破綻懸念先」に格付けられてしまうからです。一方で、これらの企業は絶対に借入できないかというと、そうでもありませんでした。事業の立て直しに取り組んで「経営改善計画」を策定、それをしっかりと実行する決意を表明することで借入できた例があります。行政もこの努力を後押しすべく、認定支援機関の支援を受けながら経営改善計画(もしくはそれよりも若干簡便な「早期経営改善計画」)の策定・実行にあたって必要となる費用の一部を補助する制度も設けられていました。

(認定支援機関による経営改善計画策定支援事業)

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/kaizen/index.htm



特別貸付・特別保証の目指すこと

一方で、現在に政府が実施している経済対策の一環として準備されている特別貸付・特別保証は何を目指しているか?事業により利益を出すなどして「この企業は事業性があるな」と評価してもらえるような企業が、新型コロナウイルス感染症の蔓延で客足の低迷・売上低下に陥ったことで事業継続が難しくなった状況に対して、コロナ禍が続く中であっても会社を生き延びさせる資金や、解消時に円滑に事業を回復できる資金などについて支援することを目的としていると考えられます。


「そんな企業は、特別貸付・特別保証がなくても資金調達できるのでは?」いえ、例えば正常先に格付けられる企業でも、これほどの経済的ダメージが発生している場合には、やり過ごすための資金調達は困難でしょう。ほとんどの企業は通常の事業を回すための運転資金を借入に頼っており、借入枠の余裕がないのです。また、金融機関そのものが貸倒リスクを最小限に抑えようとして、新たな貸出に及び腰になります。このような状況でも企業が資金調達できるようにと、日本政策金融公庫などの貸付枠や信用保証協会の保証枠を増額して(これが「特別貸付」「特別保証」)支援しようとしているのです。



借入を断られた場合の対応方法

こう考えると、例えばリスケジュールを受けている企業が特別貸付・特別保証を断られてしまう理由が理解できます。一方で、その対処法も分かります。今から「経営改善計画」を策定、実行すると決意表明するのです。


もちろん、平時に作成する「経営改善計画」をすぐに、企業だけで作成することは不可能です(計画策定にあたっては、今まで借入がある金融機関全ての承認が必要などの要件があるからです)。一方で、事業を立て直すための戦略やアクションプランなどのパートは企業が主体となって策定するものです。この部分(「早期経営改善計画」に概ね該当)だけでも作成して金融機関から「この計画をしっかり実行したらこの会社は立ち直る可能性がある」と認められたら、借入できる可能性があります。


「確実に借りられると言い切れるか?」それはできません。事情は企業、業種、地域、依頼する金融機関など様々な要因で異なるからです。確実なのは「それを試みない企業が資金調達できる環境は、今後も期待薄」ということです。状況変化を期待するよりも、自分を変える方が早く、効果的です。「天は自らを助ける者を助ける(ことがある)」という言葉が今まさに真理だと思います。



(StrateCutions連絡先)

https://www.innovations-i.com/shien/contact/13509.html





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本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

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なお、冒頭の写真は写真ACからRRiceさんご提供によるものです。RRiceさん、どうもありがとうございました。




 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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