「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第235回

事業性評価への対応(事業環境の事業性)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



連続企画として金融機関に提出する事業計画について考えています。年末も近づいたのでまとめとして、最近、中小企業への金融支援で切り札といわれる事業性評価を考えてみます。年末に資金調達を考える企業は、今回と次回でご説明する情報を申込時に盛り込むことで、金融機関の門戸を開けることができるかもしれません。


事業性評価とは

金融庁が『平成26事務年度 金融モニタリング基本方針(検査・監督基本方針)(以下「基本方針」と言います。)』において事業性評価という言葉を使ってしばらく、金融機関も中小企業も高い関心を払ってきました。これで「何かが変わる」と感じてのことでしょう。金融庁は「財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価」と表現しただけで特段に定義等は行わなかったので、いろいろな解釈を生むことになりました。


中小企業サイドとしては、資金調達時に「今回の申込みについては、有力な保証人も担保の提供もなく、信用保証協会による信用保証も得られなかったので、融資することはできない」と言われて断られた経験がある中小企業も多かったことから、この文脈から「今後は担保・保証を理由にして断られることがなくなり、融資が受けられる」と解釈した者が多かったと感じられます。


一方で金融機関サイドとしては、先にも触れたように「事業性評価」という言葉の定義も運用方法等も提示されなかったので「どうすれば良いのだろう?しばらく様子を見よう」と考えた金融機関が多かったようです。その後、メガバンクや一部の地域金融機関が「その金融機関なりの事業性評価」を始めましたが、今でも対応できていない地域金融機関も多いと推察されます。


金融庁が「事業性評価」の定義も運用方法等も示さなかったのはなぜか?それは「金融検査マニュアルによる審査方法の事実上の押し付け」の二の轍を踏みたくなかったからだと推察されます。平成10年頃の金融危機で発生した金融機関の多額の不良債権に対処するため金融検査マニュアルが作成され、そこでは「主に財務データによるスコアリングと格付けによる評価(財務データ評価)」が提示されました。それにより不良債権は劇的に減少しましたが、「金融検査マニュアルに厳格に基づくと、中小企業への適切な金融支援が困難になる」との批判が生じました。金融庁は中小企業への審査の場合には弾力的な運用も可能と示す「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」を発表するなどしましたが、大きく改善できなかったようです。このためか金融庁は令和元年12月に金融検査マニュアルを廃止、融資審査において金融機関が自主性な創意工夫を行うよう促したのです。


一方で金融庁は『検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方』において「信用リスクに関する情報の例」図を提示しています。これまでの実務では貸倒などの過去実績と個社の決算などの定量情報、事業の将来性などの個社の定性情報をもとに評価していたが、今後は地域経済や特定産業の変化などの足元の情報、不動産・原油価格の将来予測など将来の情報を反映させることが可能だと示されました。事業性評価は拠り所とする情報の拡大により実現すると示唆したのです。



事業環境に現れる事業性

以上から、年末の資金調達で金融機関に事業性評価を期待する場合、中小企業からの情報提供がポイントだと分かると思います。


「景気に関する情報などは金融機関で押さえているだろう。」確かにそうですが、統計では個別の中小企業を取り巻く事業環境まで把握はできません。統計に掲載されているのは、一定の広さがある「地域」や、産業分類による「業種(例:飲食店)」に関する状況で、各企業が所在する地域や、個別の事業(例:ビジネス街に隣接する駅の駅前商店街にある和風居酒屋)などまで示していません。ましてや各企業の顧客(例:飲食店なら客層や懐具合、飲み会の頻度、単価など。客層の変化など)や取引先(例:飲食店なら原材料の仕入れ先、燃料販売店、家主など)、競合(例:競合店の撤退や業種転換等)等の詳細な情報を金融機関は知り得ないのです。


経営者が自らの事業環境を分析して「これまで苦しかったが潮目が変わってきた。この波に乗る資金が調達できれば飛躍できる」と考えても、その判断や根拠となる情報を提供しなければ、金融機関は事業性評価できないのです。「情報提供が必要なことは理解できた。どんな情報をどのように提供すれば良いのか?」と思われるなら、取引金融機関に相談するのが一番です。もし敷居が高い場合には、StrateCutionsでもご相談に乗っています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は 写真AC から HiC さんご提供によるものです。HiC さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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