昨年秋から予告されていた「中小企業信用保証制度見直し」が本年4月1日からスタートしました。昨年6月に成立した法案(「中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案」)が施行されたことによるものです。
<中小企業庁告知サイト>
http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/shikinguri/hokan/index.htm
この見直しによる中小企業への影響は、多くの論者で意見が別れているようです。「今までと同じ、信用保証の拡大策だ。今までより広く、多くの中小企業が信用保証を活用できるようになる」と考えている人もいれば、「この改正は、多くの中小企業にとって大きな影響を及ぼすことになる」と考えている人もいます。筆者は後者に属していますが、必ずしも否定的に考えているわけではありません。この見直しの方向性をしっかりと受け止めて対応することで、中小企業は自らの企業体力を強化できるのではないかと考えています。これから3回にわたって連続して、このことについてご説明しようと思います。
見直しのあらまし
今回の見直しによる措置は2本柱で構成されています。第1の柱は「中小企業の多様な資金需要に対するきめ細かな対応」、第2の柱は「信用保証協会と金融機関とが連携した支援」です。様々な論者の意見が異なる理由については、前者に注目する論者は「今回の信用保証見直しは拡大策」だと考え、後者に注目する論者は「この改正によって中小企業の資金調達が変わるのではないか?それに、大多数の中小企業や金融機関は対応できるのだろうか?」と疑問を持っているからではないかと考えられます。今回は、まず第1の柱についてご説明します。
中小企業の多様な資金需要に対するきめ細かな対応
第1の柱である「中小企業の多様な資金需要に対するきめ細かな対応」について、以下のように提示されています。
(1)危機関連保証の創設【信用保険法改正】
・大規模な経済危機、災害等による信用収縮への対応)
(2)小規模事業者への支援拡充【信用保険法改正】
・特別小口保険付保限度額拡充(1250万円→2000万円)
・小口零細企業保証についても同様
(3)創業関連保証の拡充【産業競争力強化法改正】
・創業関連保証付保限度額を拡充(1000万円→2000万円)
※保証割合は100%保証を維持
・創業関連保証の拡充
(4)特定経営承継関連保証の創設【経営承継法改正】
・認定取得中小企業代表者個人の株式取得資金等を対象
・特定経営承継関連保証の創設【経営承継法改正】
(5)経営改善・事業再生の促進、再チャレンジ支援等
・保証メニュー充実
・抜本再生円滑化(求償権放棄条例の整備等)
・信用保証協会による経営支援
(6)円滑な撤退支援
・撤退資金保証
・撤退支援
(7)信用保証協会における出資ファンド対象拡大等
・再生ファンド以外のファンドに対しても出資可能に
制度の対象
信用保証制度見直しのうち第1の柱である「中小企業の多様な資金需要に対するきめ細かな対応」を見て、「お、7項目もあるとは、かなりの大盤振る舞いだな。これほどバラエティある支援策が準備されたのなら、普通の企業も適当に理由を付けて申請すれば利用可能だろう。中小企業の資金調達は楽になるのではないか」と思われる方がいても不思議ではありません。しかし、これらの制度の対象が誰とされているかをチェックする必要もありそうです。
<…持続可能な信用補完制度の確立に向けて(概要) URL>
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20161220002_01.pdf
この図からすると、第1の柱として提示されている信用保証の拡充は「創業期」や「再生期」、「持続的発展」、「危機時」にある企業を対象とするもので、「成長発展」にある企業を対象とした保証制度の拡充策は記載されていません。信用保証拡充により全ての企業が資金調達しやすくなるとは言えない状況かもしれません。 では「成長発展」にある企業はどうなるのか?これについては次回、中小企業庁が発表している情報から検証してみることにしましょう。
<本コラムの印刷版を用意しています>
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙1枚のボリュームなのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達できる企業になるための方法をしっかりと学んでみてください。