「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第116回

資金調達したら事業改善をスタートさせる

落藤 伸夫 2020年6月8日
 


コロナ禍のような重大なインシデントに見舞われた時、当座の資金繰り(資金調達)が一番大切です。緊急事態宣言が解除され、6月に入ってからさまざまな経済活動が以前のペースに戻りつつありますが、今だに本調子ではなく、第2波の心配もあります。資金繰りが不安でも「もう少し頑張れる」と先延ばししたタイミングで第2波が訪れると、思わぬアクシデントに見舞われる可能性もあります。余裕を持った資金調達を心がけてください。 

一方で、経済活動が再開され仕事に戻ったとしても「なかなか調子は戻らないな。仕方ない、焦らず対応していこう。成り行き任せになるのは仕方ない」と思ってしまう経営者もおられるかもしれませんが、これはお勧めできません。資金調達と同時に事業改善も検討し、資金を手にしたら攻めの姿勢で事業改善に取り組むのです。


「したくても事業改善できない時」が来る可能性

以前にも申したように、筆者は、昭和60年に中小企業信用保険公庫(何回かの統合を受け、現在は日本政策金融公庫)に入庫し、一貫して中小企業信用保険(信用保証協会が運営する信用保証をバックアップする保険)に携わってきました。金融機関から融資を受けたお金を企業が返済できずに信用保証協会が代位弁済した場合に、公庫が支払う保険金の審査です。

倒産に至る経緯を調査する中、「抜本的な取組みを行なっていなかったようだ」と感じたことが多々あります。「本当か?倒産を前にして手をこまねいているような経営者はいないと思うのだが。」はい、その通りです。訂正しましょう。「抜本的な取組みを決意したときには手遅れだった」ことが多いようです。

「手遅れだなんて、そうやって中小企業を切り捨てる金融機関の姿勢の方に問題があるのではないか!」そう仰りたいお気持ち、すごく分かります。しかし、金融機関は中小企業を切り捨てたいと思って融資を断るのではありません。そのタイミングで資金を提供しても、改善効果が現れる前に企業の体力が尽きてしまうことが明らかなので踏み出せないのです。経営改善の取組みは、新製品開発・新規顧客開拓などからリストラや経費削減まで、共通して言えるのは「効果が現れるまで、時間がかかる」ということです。それまで、どんな状態か?固定費を上回る粗利が得られず資金の流出が止まりません。企業の体力はどんどんと低下してしまいます。


簡単なシミュレーション

「その時は、金融機関が支援すれば良いではないか。会社の不調は会社の責任ではなく、コロナ禍が原因なのだから。」そうはいかない事情を、想定例で考えてみましょう。コロナ禍の前は毎年、微額ながら利益を出していた会社です。借入金も月商の3ヶ月分程度で、利益を積み上げは少ないけれど、資本金は丸々自己資本だったとします(業績良好な中小企業と言えるでしょう)。

インシデントが発生して売上が激減したので、制度融資を使って月商3ヶ月分に相当する借入を行いました(元本返済不要の据置を1年間としました)。年度末(決算期)には売上・利益が回復すると見込んでいましたが、それは難しく赤字だったので、翌年度末にまた月商3ヶ月分の借入を行いました。その次の年度は当初借入金の返済が始まりましたが、コロナ禍の影響を受けた市場は活性化せず、売上や利益の改善が進まなかったとします。年度末にまた借入を申し込むと、どうなるでしょうか?

金融機関が「はい分かりました。前向きに検討します」と返答すると期待するのは、楽観的に過ぎると思います。売上不足を借入金で賄う経営を2年続けると、金融機関は2期連続赤字で実質債務超過の「破綻懸念先」と格付せざるを得ません。「いや、今度こそ事業改善に取り組むから、もう一度チャンスを!」と申し出ても、金融機関としては世間から集めて口座に蓄えてある大切な預金や取引資金を危険にさらすのは難しいのです。事業改善の努力はインシデントが発生してから約2年間、継続して行ってきたはずで、それでも効果が見られなかったのに、今後は効果が出ると説明されても現実味が湧きません。


資金調達を伝え事業改善開始を宣言する経営会議を

先日、ある打合せに参加させてもらいました。上のシミュレーションとほとんど同じ状況にある会社が、コロナ禍対応のため資金調達するにあたって、その事実を現場や営業の担当役員・管理職に伝える経営会議に関する社長とコンサルタントの打合せでした。その経営者は、促されるまでもなく、事業改善の開始をセットで宣言する方針でした。これこそが、正しい姿勢です。事業改善の取組みに早めに着手することで効果が得られる可能性が高まるのと共に、万一の時も金融機関が継続的に支援してくれるだろうと期待できます。「資金調達できたらすぐに事業改善に着手する」これを忘れずに実行することが、あなたの会社を守る鍵となります。



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本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

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なお、冒頭の写真は写真ACからfujiwaraさんご提供によるものです。fujiwaraさん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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