「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第308回

石破総理退陣から学ぶビジョンの大切さ

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



石破総理大臣はなぜ辞任せざるを得なかったのか?本コラムは政治には関わらないことを旨としますが、本小シリーズ(3回)では会社活性化のヒントを得るため、特別に検討しています。今回は企業活用の1回目です。



筋違いの期待→失望を打破する「ビジョン」

石破政権が持続できなかった理由は、表向きには自民党内の支持が得られなかったからです。それら議員は次の選挙での当選が最大の関心事なので、つまるところ「石破政権では国民の支持が得られそうにない」という危機感が、石破政権の持続を阻んだと言えそうです。

ではなぜ国民の支持が失われたのか?内閣成立時には「これまで反体制姿勢だった石破総理は、中小企業や庶民のために、今までになかった政策を打ち出してくれるかもしれない」との期待があったものの、時間が経つにつれて「期待していた成果を出したとは言えない」との感想に変わったと感じられます。

その期待がもし「大企業から資金を吸い上げて中小企業・庶民に再分配して欲しい」であるなら、資本主義で法治国家である日本では叶わぬ期待です。今回の辞任劇には「反対勢力だからと、あり得ない成果を期待され、それを実現できなかったので失望を生んだ」一面があると感じています。


では石破総理は「筋が通らない期待が原因なので、なす術がなかった。自分には責任がない」と言えるのか?それはないと筆者は考えています。

国民は「日本を住みやすい国にしたい。子供世代が幸せに暮らせる国として引き継ぎたい。そのために今為すべきことを実行したい」との石破総理のビジョンを見たかったのではないでしょうか?それがなかったので、失望してしまったのです。

例えば(体制派政権が作成した)『骨太の方針』に国民の生活水準や質まで織り込めば、つまり個人・企業の自助努力と相互扶助が相乗効果を生む社会の仕組み構築に波及させていれば、政権への期待は高まったでしょう。産業・経済のみならず国民生活、社会の仕組みまで及ぶ広範な理想の実現に向けて中長期アクションプランの策定を始めていれば「この政権が倒れると将来への道筋が途切れてしまう」と、支持が高まったかもしれません。

「体制派の総理なら、少なくとも体制は安泰と安心できる。しかし反体制派総理だと、ビジョンがなければ支持のしようがない。体制維持を超える魅力的なビジョンの提示が必要だ。」この「目に見えぬ意識」が石破政権の維持を認めなかったのではないかと考えられます。



企業におけるビジョンの大切さ

このように考えると、企業におけるビジョンの大切さも、理解できるでしょう。社員はなぜ会社で働くのか?もちろん「今、生活するため」との動機が最大でしょう。「十分な給料が得られる」とか「働き甲斐のある仕事である」あるいは「労働条件が良好である」などです。「気持ちよく働ける」ことも、含まれていると思います。

一方で「将来も生活するため」という動機もあります。「十分な給料を続けて得られる(減額しない)」はもちろん「給料が増えていく」のが理想です。自分個人の生活水準を高めるためだけでなく、配偶者ができ、子供を持ち、親を支えるために収入増が必要なのです。

加えて、働き甲斐も「成長」する必要があります。経験やノウハウはないが体力や度胸のある、多少の変動にも耐えられる若い世代の働き甲斐と、経験やノウハウを積んだ一方で家族を持ったため変動は望ましくない、体力勝負もできれば避けたいという世代にとっての働き甲斐は異なるはずです。将来へのビジョンが、とても大事になります。


「今を乗り越えるため苦労しているのに、ビジョンを示すなど悠長なことは難しい。」そのお気持ち、分かりますが、実は危険をはらむ可能性について、政権の教訓から読み取ってもらいたいのです。社員は「もし『今を乗り越えるため協力してもらいたい』と言うなら、それに見合う報酬を今すぐ欲しいところだ。それが無理なら少なくとも『もっと明るい将来を一緒に手にしよう』と、希望(ビジョン)を示して欲しい」と考えるでしょう。

「ビジョンなど単なる絵空事ではないか。それに力があるのか?」その答えは「ありません」です。そうではなく経営者自身が「このビジョンを実現したい。そのために皆の力を結束させたい」と伝えることで力が生まれます。このようなビジョンを社員に示すことが経営者の役割だとの教訓が、今回の政変から学べます。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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