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第267回

金融監督指針改正の目指すところを探る

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

中小企業を支える地域金融機関にとって2024年は記憶に残る年になるのではないかと思います。金融機関への監督指針が2月1日でもって改正されたからです。

https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/city/index.html

金融庁が政策変更する場合、事前に案を公開、意見(パブリックコメント)を求めるのを常としています。今回も2023年11月27日に金融庁HP上に改正案と概要説明資料が発表され、改正の柱が「①経営改善・事業再生支援等の本格化への対応」と「②一歩先を見据えた早め早めの対応の促進」そして「③顧客に対するコンサルティング機能の強化」と示されました。

https://www.fsa.go.jp/news/r5/ginkou/20231127-2/00.pdf

今回はこの点について考えてみます。

 

金融機関の支援が資金繰りから事業改善・再生にシフトする

第1は、中小企業への金融支援がコロナ禍による突然死を防ぐ資金繰り支援フェーズから事業者の実情に応じた経営改善・事業再生支援フェーズへ転換したことを明確化したものです。実はこの方針は、中小企業向け政策として既に示されていました。経済産業省は2022年3月に「中小企業活性化パッケージ」を策定、9月にはその改訂版となる「中小企業活性化パッケージNEXT」を発表、そこでは「経済環境の変化を踏まえた資金繰り支援の拡充」と「中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援」が2つの柱として示されていたのです。

https://www.meti.go.jp/press/2022/09/20220908001/20220908001.html

これを前提とすると「中小企業支援の軸を資金繰りから再生支援にシフトするように」との金融機関監督方針は、中小企業向け政策に整合した動きを取るよう金融機関に促すものだと解釈できます。

 

必要とする全ての企業に、必要な支援が提供される

上を読んで「事業改善・事業再生支援は金融機関の本業ではないので、ほどほどにすればよい。業況が芳しくないため融資できない先とは距離を置くように勧める趣旨だろう」と解釈するのは間違いだと考えられます。第2及び第3の柱からその逆が求められていると分かります。

第2の柱の内容として金融庁は3項目を挙げています。それらを通じて流れているのは「今、融資はできないがすぐに破たんするほどでもないという企業については変化の兆候を把握して一歩先を見据えた対応をして欲しい、実際に悪化の兆候がある事業者には企業経営者に正しく状況認識してもらい、解決に向けた提案をプッシュ型で(相手が特段求めていなかったとしても金融機関の方から自主的に)提供して欲しい。融資残高が少ないなど積極的な動きが難しいと感じる場合でも放置するのではなく、信用保証協会や他の金融機関と早めに連携し、上2つで示した支援が企業に提供されるようにして欲しい。つまり、業況が芳しくないため融資できない先を放置してはならない、全ての企業に支援が行き届くようにして欲しい」という趣旨であると考えられます。

第3の柱についても金融庁は3項目を挙げています。これらに通じて流れているのは「第2の柱に挙げた支援を適切にできる存在になれるよう、金融機関として努力して欲しい。事業再生ガイドラインの活用など需要が見込まれるものを手始めに、ソリューションの幅を広げることを勧める。早期経営改善計画策定支援やこれに付随するモニタリングについて、ポストコロナ持続的発展計画事業など公的支援策を活用しての実施は必須だと考えて欲しい。金融機関として支援できない場合には可能な外部機関等を利用して提供できるようにして欲しい」という趣旨であると考えられます。

 

金融機関の本業を捉え直すよう促す

今回の金融監督指針について「荷が重い。金融機関の本業は融資なのだから」との感想があるのではないかと考えられます。しかし同様の内容を経済産業省と金融庁の両方が示しているとは「中小企業のため」とのアプローチでも「金融庁のため」とのアプローチでも同じ答えが出たと解釈すべきと考えられます。「業況が芳しくないため融資できない先への支援は、個社そして地域や産業の発展に繋がる。このため金融機関の本業として融資だけを考えるのではなく、企業への支援も含めた方が金融機関の存立基盤確立につながる」との認識を引き出したいとの想いに基づいた改正だと考えられます。

 

本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>

https://www.innovations-i.com/shien/id/panf_id/?id=665

 

なお、冒頭の写真は 写真AC から 月舟 さんご提供によるものです。月舟 さん、どうもありがとうございました。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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