「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第126回

事業計画を張子の虎にしないために

落藤 伸夫 2020年8月24日
 



前回、コロナ禍を吹き飛ばす戦略を考えたら文字や数値で言語化すること、つまり事業計画として形にすることについてお話ししたところ、「計画書を今のタイミングで作るのはどうかな?金融機関は自分たちが欲しい時に事業計画書を求めてくる。そのタイミングで『ご要望に応じて作りました』と提出した方が良いのではないか」というご意見がありました。事業計画書を、金融機関の求めに応じて作成するのは悪くはありませんが、依頼されて作成するのと自発的に作成するのとでは、後者の方が「この会社、頑張っているな」と認めてもらえます。

「それは分かっているのだが、事前に作成しておくと『進捗度合いは如何ですか』と聞かれてしまい、それで張子の虎であることがバレてしまう。」それでは、せっかく事業計画を作っても意味がありません。事業計画は、金融機関のために作るのではなく、実践して自社を良くするために作るものです。「それは分かっているのだが、『事業計画を実施する』という意味がよく分からないのだ。」では、今日はそれについて考えてみましょう。


なぜ計画が実施されないのか

筆者は時折、金融機関からの要請に基づいてコンサルティングを行っています。「数年前、金融機関から要請して事業計画を作成してもらったが、全く成果が出ていない。このままだと支援が難しくなってしまうので、なんとかならないか」という依頼も少なくありません。計画書を見せてもらうと、いい加減な作りではありません。でも、その計画書が「張子の虎」になっているのです。

立派な計画書がなぜ使われないのか?理由の1つは前回にお話ししました。アクションプランが充実していないことです。計画書に「新規顧客開拓を目指す」と記載しただけでは行動には移されません。例えば「毎月○件、新規先に電話する」と行動を明記することが必要です。「担当者に『自発的に創意工夫して行動しろ』と言うだけではダメなのか?」ダメな理由は多くの場合、経営者にもあります。現場担当者が創意工夫して新しい取組みを行うと、経営者や現場リーダーが「なぜ、今までのやり方をやらないのか?手慣れた、結果が見えている行動を行った方が良い」と言うことがあります。これでは、創意工夫も難しくなるでしょう。予め計画策定段階の話合いで創意工夫を聞き取って皆で合意し、行うべきアクションを計画に書き込んでおけば行動に移せます。


実行に向けたマネジメントを機能させる

事業計画が実行されないもう一つの理由は、実行を確実にする仕組みを作っていないからです。「組織計画なら作ったぞ。新規先への電話実行について、各営業チームリーダーを責任者だと明記したのだ。」少なからぬ企業が組織計画を疎かにしている中で、それを作成したとは立派です。「でも、いつの間にか皆、チェックを怠ってしまう。そうやって計画そのものが忘れ去られるのだ。」

実行に関する組織計画だけでは機能しないなら、もう一歩先を考えてみましょう。新規顧客開拓電話の実施を各リーダーがチェックして必要に応じて現場担当者をサポートしているかについて、推進する責任者を決めるのです。「それは中小企業である我が社としたら経営者、つまり私となる。しかし、どうすれば良いのだろう?それが分からないままだと、責任者欄に私の名前を書き辛い。」まさにここ、実行のマネジメントがポイントなのです。

多くの会社では定期的に「営業リーダー会議」を行なっているでしょう。そこでの報告事項に、新規顧客開拓電話の実施を含めることができます。「たったそれだけで良いのか?」まずはこれから始めましょう。但し「担当者も忙しく、目標件数達成は全体の3割程度です」などの報告をフムフムと聞いて終わらせてはなりません。一方で、「それではリーダーとして失格だ!」と叱りつけてもいけません。「できなかったメンバーの、できない理由は何か?」や「できたメンバーは、どんな工夫をしていると言っていたか?」などと深掘りをしていくのです。

「それって、できなかったリーダーの公開処刑になる。我が社のモチベーションは地に落ちてしまう。」そうならないような司会ができるよう、経営者が率先して創意工夫しましょう。初回で答えられなければ「では来週も同じ質問をするから、担当者に聞いておいて欲しい」と念押しできます。あるチームと別のチームで実行できない理由が違えば、「それはどうしてだろう?」と深められます。全員が達成したチームには「何が成功のポイントだったか?みんなに共有してくれ」と頼みましょう。

ポイントは、実施に向けたマネジメントについても計画に明記することです。経営者が行うことと負うべき責任を書き込むのです。「経営と現場が協力し合い、計画実現に向けて一体で頑張っている。」その構図が見える計画とすることが、実行の可能性を高める最大ポイントです。



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なお、冒頭の写真は写真ACから松波庄九郎さんご提供によるものです。松波庄九郎さん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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