企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~

第4回

地域で働く、地域を支える──「ローカル・テレワーク」という新しい仕組み

株式会社aubeBiz  酒井 晶子

 

第3回では、地方に眠るチカラを最大限に活かす「地方創生テレワーク」が未来へつながる希望の架け橋となり、地域、企業、そして働く私たち、みんなが笑顔になれる未来を描ける可能性についてお話をしました。

「地方創生テレワーク」は、都市部の企業が地方の人材をリモートで活用する仕組みで、政府も推進しているものです。一方で、地方にはもう一つ、「地元企業が、地元の人材とつながる仕組みがない」という課題があります。

この課題に対し、国や自治体の補助事業の受託企業様や、各地の自治体様と連携をさせていただく中で、aubeBizとして「ローカル・テレワーク」という新しい仕組みをスタートさせました。
今回は、この「ローカル・テレワーク」についてお話します。

「ローカル・テレワーク」とは何か?

「ローカル・テレワーク」は、地方在住者が、都市の仕事をリモートで担うという一般的なテレワークのイメージとは違い、地元企業の業務を、地元のテレワーカーに委託・分担する仕組みです。

これは、地元の人材と地元の仕事のマッチングを、単なる求人紹介で終わらせず、業務プロセスを整理し、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、人材育成、そしてディレクションを通じて総合的にサポートすることで実現します。「ローカル・テレワーク」の最大の特徴は働く場所の自由さだけではなく、地域で仕事を回す、持続可能な仕組みを構築することに重きを置いています。

なぜ「ローカル・テレワーク」が必要なのか?

多くの地域が抱えているのは、地元企業が「求人を出しても人が来ない」「高齢化・後継者不足」といった深刻な人材難です。一方で、地元住民は「働きたいけれど、子育てや介護、通勤がネックで希望する働き方ができない」「フルタイム勤務は無理でも、空いている時間を活用して地元に貢献したい」と願っている声がたくさんあります。また、「若者が地元に残れない」「中小企業が活力を失っていく」という切実な状況もあります。

「ローカル・テレワーク」は、これらの課題を地元の人材と仕事をつなぐことで、一気通貫で解決できる可能性を秘めています。

なぜaubeBizが「ローカル・テレワーク」を推進できるのか?

私たちが「ローカル・テレワーク」の推進を得意とする理由には、長年培ってきた経験と、地域に深く根差したアプローチにあります。単にITツールを提供するだけでなく、地元中小企業の抱える課題を深く理解し、業務の切り出しやDX化支援を具体的に伴走できるノウハウを持っているのです。

私たちは2011年というかなり早期から、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業(当時は在宅秘書サービスとしてスタート)を展開してきました。

その後、時代と共に同業他社が増えていきましたが、多数の方から、「うまくいかない」「オンラインでの労働集約型のビジネスモデルは難しい」「コンサルティングをしてほしい」「仕組みを学ばせて欲しい」という声をいただくようになりました。

ICTツールが充実した現在でも、そうしたご相談は絶えませんが、まだZOOMも登場していなかった当時は、なおさらオンラインでの採用・育成・マネジメント、さらにはオンラインでのサービス提供の仕組み化は難しいものでした。

そこで、同業の企業様や、本業以外に新規にこの事業に参入されたい企業様に向けて、「パートナー制度」を作り、これまでに培ってきた仕組みやノウハウを全てシェアし、伴走型でサポートを行うサービスを始めました。これまで約20社にノウハウを習得する講座にご参加頂き、現在は5社のパートナー企業様と連携しながら、人材不足の解決とテレワークの普及を掲げ、同事業を展開しています。

このパートナー制度を活用し、

①地域でテレワーカー育成講座を開催し、地元の人材を育成。

②育成講座の受講生で地域リーダーになりたい方や、地元住民や企業の中でこの事業に参入したい方とパートナー提携し、事業の推進を支援

③地域パートナーが、地元テレワーカーを取りまとめ、地元企業の仕事を受注

というスキームを軸として「ローカル・テレワーク」を推進しているのです。

「ローカル・テレワーク」導入にあたり、特に重要なのは、企業と働き手の間に立ち、両者のニーズを調整しながら円滑なコミュニケーションを促すディレクター機能を持つことです。ディレクターが、業務の進捗管理や品質維持、トラブル対応までを一貫してサポートすることで、制度の定着と持続的な運用を可能にするからです。この総合的なサポート体制を「パートナー制度」により実現することが、「ローカル・テレワーク」を地域に定着させ、成果を出すための強みとなります。

私たちが実践する「ローカル・テレワーク」は、企業と働き手の双方に寄り添ったものです。

仕事を切り出す企業側(地元中小企業)に対しては、クラウド導入やDX(デジタルトランスフォーメーション)の支援、業務の可視化、そして効率的な業務分担の設計をサポートします。これにより、企業はこれまで抱えていた業務負担を軽減し、生産性を向上させることができます。

一方、働く側(地元住民)には、業務に必要な事前研修やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を提供し、さらに業務中のディレクションを通じて安心のサポート体制を構築しています。

実はこの部分でも、地域パートナーが力を発揮します。

通常、お互いが離れた場所にいるテレワークの教育はOFF-JT(Off the Job Training)、つまりマニュアルや動画によるeラーニング、オンライン勉強会など業務外で学んでもらうことが一般的です。

しかし、ITスキルに自身がない方や、テレワークという働き方に不安がある方は、この環境だけでもハードルが高く感じ、テレワークを諦めてしまうこともあります。

地域パートナーがいれば、パートナーのディレクションのもと、時には地域テレワーカーが集まり、一緒に仕事をしながらOJTで仕事を覚えていくことも可能になります。これにより、未経験者でも安心して地域での仕事に挑戦できる環境がさらに整うのです。

企業・自治体・働き手をつなぐディレクターとして、地域パートナーが各所の連携を円滑にし、「ローカル・テレワーク」を実現することで、地元企業の経理代行、広報支援、事務作業の分業といった業務で成果を上げています。

具体的な「ローカル・テレワーク取組み事例ー山口県下関市
2024年2月、総務省の「テレワークを活用した地域課題解決事例の創出に関する実証事業」を受託された(株)パソナJOB HUB様、そして実証地域である下関市様より、『中山間地域における地域共創テレワーク実証プロジェクト』の一環として、弊社に「働き方リノベーションセミナー テレワーク入門ミニ講座~テレワークの『基本のキ』~」という講座の講師を依頼され、下関市豊北町で2日間開催、約60名が参加しました。

その後2024年2月~5月に、山口県下関市様より「オンラインスキルアップ講座」を受託、実施し、メール講座10回+ZOOM講座6回+オンラインコミュニティによるフォローアップが含まれ、72名が参加しました。そのうち8名が弊社にてテレワーク就業を開始しました。

この講座の参加者のうち22名が、弊社が運営するテレワーカーのためのスキルアップ・コミュニティ(ONE with)に参加。

また講座に参加されていた地元でガソリンスタンドを経営される企業様が、弊社パートナーとしてBPO事業に参入し、「ローカル・テレワーク」を行おうと手を挙げてくださいました。現在、弊社aubeBizと連携しながら、地元下関の企業様のご支援が実際に始まっています。

まとめ

「地元に仕事がない」のではなく、本当は「つなげる仕組みがない」だけなのかもしれない——まさにこれが、「ローカル・テレワーク」の仕組みの根幹となる考え方です。これは単なる雇用創出対策ではなく、地域経済を内側から活性化させる、「自走エンジン」となる大きな可能性を秘めています。

私たちaubeBizは、この取り組みをもっともっと推進して、誰もが好きな場所で自分らしく豊かに生きられる社会の実現を目指していきます。

次回は、「テレワークがうまくいかない」と言われる背景と、よくある誤解についてひも解いていきたいと思います。

※地方創生テレワークやローカル・テレワークについての小冊子を
 無料配布しています。ご関心のある方は以下よりダウンロード下さい。
https://drive.google.com/file/d/18rwP34IfHBxwDcaBZ2J71QK7SXVO1FjU/view


 

プロフィール

株式会社aubeBiz(オーブ・ビズ)
代表取締役 酒井晶子(さかい あきこ)

兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。

2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。

2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。

著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。


Webサイト:株式会社aubeBiz

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