企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~

第41回

生成AIは「作業」を奪い、「創造」を解き放つ──AI時代の共創パートナーシップ

株式会社aubeBiz  酒井 晶子

 

AIという「新しい風」がもたらす革命

かつて、テレワークという言葉がまだ一般的ではなかった頃。
私たちは「場所」という物理的な制約をどう解き放つかに心血を注いできました。
画面越しに顔を合わせ、住んでいる場所に関わらず誰もがプロとして輝ける環境を整える。
それが、aubeBizが10年以上かけて積み上げてきた「土台」です。

そして今、私たちの前にはまた新しい風が吹いています。
生成AIという、驚くほどのスピードで進化を続けるテクノロジーです。

経営者の皆さまとお話ししていると、期待の一方で、戸惑いの声もよく耳にします。
「便利そうだけれど、どこか人間味が欠けている気がする」
「自分たちの仕事が奪われてしまうのではないか」
「進化の早いツールを使いこなせるのだろうか」
など、ふとした不安がよぎることもあるかもしれません。
それは、組織を守り、人を育ててきた経営者としての、極めて誠実な反応ではないでしょうか。

現場の泥臭い苦労を知っているからこそ、魔法のようなツールに対して、「足下をすくわれないか?」という「心許なさ」を感じるのは当然のことだと感じます。

しかし、2011年からフルリモート組織を運営し、常に「人を活かす仕組み」を模索してきた私たちが今、AIを手にして感じているのは脅威ではありません。
それはむしろ、私たちがより人間らしく、より自由に価値を生み出すための「解放」であると確信しています。
テレワークが場所の制約を解いたように、AIは今、私たちの「時間の制約」を解こうとしているのです。

「一瞬」が生む、経営の純度と余白

これまでのビジネスにおいて、私たちはどれほどの時間を「作業」に費やしてきたでしょうか。
膨大なデータの集計、報告書の骨子づくり、市場のリサーチ。
それらは事業を支える大切な工程ですが、その準備だけで頭が飽和し、気づけば一日が終わってしまう……そんな経営現場も少なくなかったはずです。

生成AIは、こうした作業を文字通り「一瞬」で終わらせてくれます。
これまで何時間、時には数日かけていた準備が、AIというパートナーに問いかけるだけで、数秒のうちに整えられる。
これが意味するのは、経営者が「作業に疲弊した頭」で判断を下す必要がなくなる、ということです。

AIが整えてくれたクリアな土台の上で、私たちは「この事業の本当の目的は何か」「目の前の社員が抱える不安にどう寄り添うべきか」といった、より純度の高い意思決定にエネルギーを注げるようになります。

時間のゆとりは、そのまま心のゆとり──「経営の余白」へと繋がります。
呼吸を整え、社員一人ひとりと向き合う。
あるいは、5年後、10年後の未来を静かに構想する。
経営者が本来担うべき、そして最も創造的な仕事に立ち戻るための時間を、AIは創り出してくれるのです。

「イージーミスの消滅」と「在り方の露呈」

AIを導入する大きなメリットの一つに、正確性があります。
人間がどれほど注意を払っても避けられない計算違いや転記ミス。
こうした「ケアレスミス」をテクノロジーがカバーしてくれることで、現場には大きな「安心」という土台が築かれます。

「間違えてはいけない」というプレッシャーから解放されることは、働く人の心にゆとりを生み、よりその人らしい、のびのびとした力を引き出すことにも繋がるでしょう。
しかし、ミスが減り、作業が効率化された先に、私たちは一つの大きな問いを突きつけられることになります。
それは、「本当にこれで良いのか」「この先にどんな価値を届けたいのか」という、私たちの「在り方」そのものです。
AIは膨大なデータから「正解らしきもの」を一瞬で提示してくれます。
しかし、その答えを採用するかどうかを決めるのは、AIではありません。
私たち自身の倫理観であり、プロとしての矜持であり、お客様への想いです。

作業という「隠れ蓑」がなくなったとき、私たちがどんな志を持って仕事に向き合っているのかが、これまで以上に鮮明に露呈するようになります。
答えのない問いに対し、自らの意志で光を当てていく。
AI時代の共創とは、効率化によって空いた手を使って、こうした「人間としての誇り」を磨き直すプロセスではないでしょうか。

自律的で創造的な「新しい働き方」の形

作業の自動化が進む社会では、働き方そのもののパラダイムシフトが起こります。

「何をすればいいですか?」と指示を待つ姿勢では、AIという圧倒的なスピードを持つ存在の前で、居場所を見つけるのが難しくなるかもしれません。

これからは、自ら問いを立て、AIという道具を使いこなしながら価値を生み出す「自律的な働き方」へのシフトが不可欠です。

ここに、aubeBizが大切にしてきた「地域人材の活用」の大きなチャンスが眠っています。

地方に暮らし、家族との時間を大切にしながら、AIを自在に使いこなす。

都市部の大企業が数日かけていたタスクを、地方のパートナーたちが数分で、しかも高いクオリティで完遂する。

そんな光景が、あちこちで生まれています。

具体例として、地域の島に住む元漁師の弊社メンバーが、弊社で学んだAIツールを活用して高度なデータ分析や業務整理を行ってくれています。
これについては、また別のコラムで触れたいと思いますが、AIのもう一つの優れた点として、難しいコードを書けるなど「高いITスキル」がなくても、現場で培った判断力や分析力、指示力などがあれば、誰でも「会話」を通して仕事を形にしてくれるというメリットがあります。
これは異業種への転職やセカンドキャリアの構築において、力強い追い風になります。
AIの活用で「作業」を手放した地域人材は、地域のリアルな課題に目を向け、新しい「共創」の種を見つけてきてくれることさえあります。

AIは人を減らすための道具ではなく、人が持つ本来の知的好奇心や創造性を解き放ち、より広いフィールドで活躍するための「拡張装置」なのです。
私たちが目指す「人を活かすインフラ」としてのAIの姿が、そこにはあります。

ウェルビーイングの向上と、AIとの調和

私たちの活動の根底にあるのは、いつだって「働くことを諦めなくていい社会」をつくることです。
10万人の雇用を創出するという数字の先にあるのは、温かな日常の風景です。
AIのおかげで仕事が早く終わり、夕暮れ時に「おかえりなさい」と子どもを迎えられるお母さん。
介護の合間に、自らの専門性を活かして社会に貢献し、仕事への誇りを深めている方。
こうした一人ひとりの笑顔が増えることこそが、テクノロジーを活用する真の目的ではないでしょうか。

効率化という数字の向こう側には、常にこうした温かな日常の風景があります。
「自分らしいライフスタイル」を大切にしながら、同時にプロとして社会と繋がり続ける。
その両立を、AIというテクノロジーが支えてくれるのです。

AIは敵ではありません。
私たちがより人間らしく、より自由に、さらに幸せに働くためのパートナーです。
作業をAIに委ねることで生まれた「余白」を、あなたは誰のために、どんな創造のために使いますか?

作業から解放され、創造を解き放つ。
そこには、まだ見たことのない豊かで風通しの良い未来が広がっているはずです。

次回は「AI×テレワーク」で変わる、これからのBPO──スピードと体温の両立
AIが圧倒的なスピードで「作業」を担うようになったとき、私たちが提供するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)はどう進化するのでしょうか。スピードをテクノロジーが担うからこそ、人が担う「体温」──すなわち、相手の痛みに寄り添い、背景を察し、応援する力の価値が、かつてないほど際立ちます。次回は、テクノロジーと人間性が高次元で融合したとき、BPOが単なる「外注」を超えて、組織の可能性を無限に広げる「真のパートナー」へと進化する姿を描きます。


 

プロフィール

株式会社aubeBiz(オーブ・ビズ)
代表取締役 酒井晶子(さかい あきこ)

兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。

2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。

2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。

著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。


Webサイト:株式会社aubeBiz

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