企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~

第34回

人材流動化の時代に「選ばれている会社」は何をしているのか? 〜給与でも制度でもない、“最後に見られているもの”〜

株式会社aubeBiz  酒井 晶子

 

はじめに──労働人口減少の時代に「選ばれる土俵」に立つには

「人手不足」「採用難」という言葉を聞かない日は、ほとんどなくなりました。
実際、日本の労働人口減少は不可逆であり、この流れ自体を、個々の企業努力だけで止めることはできません。
ただ、多くの企業様と関わる中で感じるのは、同じ環境に置かれていても、人が集まり続けている会社と、そうでない会社があるという事実です。
その違いは、規模の大きさや知名度、あるいは特別に高い給与条件にあるわけではありません。
もっと手前の、「そもそも、選ばれる土俵に立てているかどうか」という点にあるように感じています。
今の時代、求職者は「どこかで働ければいい」のではなく、自分の価値観やライフスタイルに合う場所を、主体的に選びます。
つまり企業側には、選ぶ前に、まず“選ばれる存在”になることが求められているのです。
では、労働人口が減り続ける時代に、企業はどうすれば「選ばれる土俵」に立つことができるのでしょうか。 本コラムでは、そのヒントを、データと現場の視点から整理していきます。

データが教えてくれる「選ばれる会社」の共通点

「選ばれる会社」と聞くと、「給料が高い会社」「有名な大企業」を思い浮かべる方も多いかもしれません。
もちろん、それも一つの要素です。
ただ、データを見ていくと、少し違う景色が見えてきます。

帝国データバンクが行った調査では、人材を確保できている企業の理由として、賃上げに次いで多かったのが「働きやすい職場環境づくり」や「働き方の多様化」でした 。
つまり、今選ばれている企業には、「自分のライフスタイルに合わせて、人間らしく働ける余地がある」、そんな共通点が見えてきます。

・子育て中は、少し時間を短くできる。
・週に一度でも、リモートワークができる。
・副業として、自分のスキルを試せる入り口がある。

「全員同じ働き方」ではなく、「自分に合った選択肢がある」という安心感。 それが、給与額と同じくらい、今の求職者の心を動かしているように感じます。

若者たちは、会社の「どこ」を見ているのか?

では、これからを担う若者や優秀な人材は、具体的に何を見て会社を選んでいるのでしょうか。
かつては、給与や勤務地、休日といった「条件」が最優先でした。
けれど今は、その優先順位が大きく変わっています。

就職情報サイトの調査では、学生の約8割が「企業のビジョンやパーパス(存在意義)を重視する」と答えています 。
仕事内容以上に、「社員との相性」や「会社の雰囲気」を重視する傾向も見られます 。
彼らが知りたいのは、「何をやらせてくれるか」だけではありません。

「この会社は、どこに向かおうとしているのか」
「ここでは、どんな人たちが、どんな想いで働いているのか」

条件ではなく、価値観や姿勢、空気感を見ているのです。
採用は、条件を並べる「スペック勝負」から、想いや姿勢をどう可視化できているかという勝負に変わりつつあります。

無意識のうちに、多くの人材を入り口で手放していないか

ここで、テレワークや副業といった働き方の話がつながってきます。
もし、求人の入り口が「正社員・フルタイム・毎日出社・一社専属」しかなかったとしたら。
知らず知らずのうちに、多くの候補者が「最初から検討対象に入れない設計」になっている可能性もあります。
実際、転職時に「在宅勤務ができるかどうか」を重視する人は少なくありません 。

「うちは現場仕事だから無理だよ」 そう思われるかもしれません。
ただ、一度だけ立ち止まって考えてみてください。
本当に、すべての業務が出社しないとできないのでしょうか。
経理や事務だけでも、週に数回のリモートはできないでしょうか。
多様な働き方を否定してはいなくても、結果として多様な人材から「選ばれない設計」になっていないか。
この問いを持つことが、採用の壁を越える最初の一歩になります。

「理念採用」は、きれいごとではない

「理念やビジョンなんて、大企業の話でしょう」 「中小企業は、もっと実利で勝負しないと」
そんな声もよく耳にします。
けれど現場を見ていると、むしろ中小企業ほど理念が採用に効いていると感じる場面があります。
理念採用とは、きれいな言葉を並べることではありません。

「私たちは、こういう考え方で仕事をしています」
「だから、合う人もいれば、合わない人もいるかもしれません」

そうやって判断基準を隠さずに見せること。
それが、理念採用の本質です。
理念は、人を集めるための飾りではありません。
企業と個人が選び合うための共通言語なのです。

ありのままの姿を、隠さずに

今の採用市場の中心である20代〜40代にとって、応募前にSNSやブログをチェックすることは、ごく自然な行動になっています 。
彼らが見たいのは、完璧に整えられた採用ページではありません。
そこで働く人の表情。日常のやり取り。仕事の失敗や、悩み、葛藤。
そうした「人間味」に触れたとき、初めて「この会社、いいかもしれない」と感じるのです。
どれだけ良いことを書いていても、社風や文化は、必ず透けて見えます。
だからこそ、着飾らず、ありのままを発信する。
それが、結果として一番の信頼につながっていきます。

おわりに──「選ばれる会社」は、「人が辞めにくい会社」でもある

これからの時代、すべての人に好かれる必要はありません。
ただ、「私たちは、どういう人と、どう働きたいか」。
それを、自分たちの言葉で語れることが大切だと思います。

・「会社にどう貢献してくれるか」だけでなく、「どうしたら、気持ちよく働ける環境になるか」を考え続ける。
・「ここに来たら、どんな成長ができるのか」を示す。
・社員の幸せを、本気で願っている。
そんな体温のある会社に、人は少しずつ集まり始めています。
「選ばれる会社」を目指すことは、決して遠回りではありません。
それは結果として、今いる社員を大切にし、人が辞めにくい、しなやかな組織を育てていくことにつながっていくのだと感じています。


次回は「働き方とウェルビーイング──幸せが生産性を高める理由」
「社員を大切にすること」と「成果を出すこと」。 一見すると別のものに見えますが、現場では、実は深くつながっている場面を多く見かけます。ウェルビーイングという視点から、働き方と生産性の関係を、構造的に見つめ直していきます。

 

プロフィール

株式会社aubeBiz(オーブ・ビズ)
代表取締役 酒井晶子(さかい あきこ)

兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。

2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。

2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。

著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。


Webサイト:株式会社aubeBiz

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