企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~
第3回
地方に眠るチカラを活かす!「地方創生テレワーク」の可能性
株式会社aubeBiz 酒井 晶子
第2回では、「潜在労働力」の活用こそが人材不足解消の重要な鍵となる可能性についてお話ししました。
総務省の調査によると、多くの地方自治体で若年層の転出超過が続いており、高齢化率は都市部と比較して高い水準にあります。帝国データバンクの調査(2023年)では、非製造業を中心に人手不足を感じる企業の割合が地方で高まる傾向にあります。
地方の人材不足は、どこまで行っても解決の糸口が見えないような深刻さを増すばかりで、「地元で人が採用できない」「せっかく育った若者が都市部へ出ていってしまう」——そんな嘆きの声が後を絶ちません。
しかし前回お話ししたように、地方には「人がいない」のではなく、「潜在労働力」が存在するのに、活かしきれていないというのが現状なのです。
今回は、地方に眠る働くチカラを活かし、新たな活力を生み出すための重要なキーワード、「地方創生テレワーク」の秘められた大きな可能性についてお話します。
<地方創生テレワークとは>
「地方創生テレワーク」とは、内閣府が積極的に推進する、地域活性化のための重要な政策モデルであり、都市圏に本社を置く企業と、地方に住む人々を、情報通信技術(ICT)を活用して結びつける構想です。
もっと分かりやすく言うと、都会の企業と地方をオンラインで繋ぎ、地方にいながらも都会のオフィスで働いているかのように仕事ができる仕組みなのですが、ただ単に「地方で都会の仕事をする」ということではありません。この取り組みの真の目的は、地方に新たな雇用機会を創出し、そこで働く人々が地域社会との繋がりを深めながら、地域内で人材が循環していくような、持続可能な経済の仕組みを築き上げることにあります。
具体的には、都市部の企業が、地方にサテライトオフィスを設置し、新たな雇用を生み出したり、豊かな自然の中でリフレッシュしながら仕事もできるワーケーションを、地域全体で温かく受け入れ推進したり、都市部の住民が、地方の魅力的な環境に惹かれて移住・定住し、そのままテレワークで従前の仕事を続けるUIターンの促進をしたりなど、それぞれの地域の特性や、企業のニーズに合わせて、柔軟に展開することができます。
これまでは、若者が地方を離れることで、地域の産業が寂しくなり、後継者不足が深刻化するという、少し悲しい連鎖がありましたが、テレワークという新しい働き方が広がることで、地方に暮らしながらも都会の仕事にアクセスできるようになり、若者が大好きな地元に留まるという選択肢が増えるかもしれません。また、一度都会に出た方が、「やっぱり地元がいいな」と、故郷に帰ってくるUターンや、都心で育った人が移住をするIターンを、そっと後押しすることも期待できます。
さらに、「地方創生テレワーク」は、地方だけでなく、都市部の企業にとっても、多くのメリットをもたらします。例えば、大規模な自然災害が発生した場合でも、地方に分散された事業拠点は、事業継続のための強固なバックアップ体制となり得ます。また、地方にオフィスを設けることで、都市部と比較して賃料などのコストを大幅に削減できる可能性もありますし、何よりも、これまで出会えなかった、多様な価値観やスキルを持つ素晴らしい人材を、全国規模で確保できるという、大きな魅力があるのです。
では、この「地方創生テレワーク」が、企業、自治体、そして働く人々、それぞれの立場にとって、具体的にどのようなメリットをもたらすのか、詳しく見ていきましょう。
企業にとって
・採用難の解消と優秀な人材の確保: 地理的な制約を受けずに、全国各地にいる優秀な人材にアプローチできるため、都市部を中心とした慢性的な採用難の解消が期待できます。地方に眠る潜在的なスキルを持つ人材を活用することで、企業の競争力強化にも繋がります。
・コスト削減と生産性向上: 地方にサテライトオフィスを設立したり、フルリモートのチームを構築したりすることで、都市部の高額なオフィス賃料や通勤手当などのコストを大幅に削減できる可能性があります。また、従業員がより快適な環境で働くことで、生産性の向上も期待できます。
・事業継続性の強化とリスク分散: 地方に事業拠点を分散することで、大規模災害発生時における事業中断のリスクを軽減し、事業継続性を高めることができます。
自治体にとって
・新たな雇用の創出と地域経済の活性化: 地域に新たな企業が進出したり、テレワークという新しい働き方が根付くことで、地域住民の雇用機会が増加し、所得向上、ひいては地域経済全体の活性化に繋がります。
・移住・定住の促進と人口減少対策: 都市部の住民が、地方の豊かな自然や魅力的な生活環境に惹かれて移住・定住する動きを促進し、若者世代の流出に歯止めをかけ、地域の人口減少対策に貢献します。
・関係人口の拡大と地域ブランドの向上: ワーケーションなどを通じて地域を訪れる人が増え、地域の魅力を体験してもらうことで、地域への関心が高まり、継続的な関わりを持つ「関係人口」の増加に繋がります。これは、地域ブランドの向上にも大きく貢献し地域の魅力を全国に発信するきっかけにもなります。
・新たな産業の育成とイノベーションの創出: 都市部の企業との連携や、地域資源とICT技術を組み合わせた新たなビジネスの創出など、地域にイノベーションの種を蒔き、新たな産業が育つ可能性があります。
働き手にとって
・地元でのキャリア継続と豊かな生活の実現: 生まれ育った愛着のある地域を離れることなく、これまでのキャリアを継続できることは、働く人の生活の安定と幸福感の向上に繋がります。豊かな自然の中で、自分らしいライフスタイルを実現することも可能です。
・ワーク・ライフ・バランスの向上と時間の有効活用: 通勤時間の削減や、柔軟な働き方を選択できることで、育児や介護との両立、趣味や自己啓発など、自分の時間を大切にしながら、充実した生活を送ることができます。
・社会との新たな繋がりと自己肯定感の向上: これまで様々な理由で労働市場から遠ざかっていた潜在的な労働力が、テレワークという形で社会と再びつながりを持つことで、自己肯定感の向上や、地域社会への貢献意識が高まります。
<「地方創生テレワーク」=未来へ繋がる、希望の架け橋>
「地方創生テレワーク」は、単なる場所にとらわれない働き方ではありません。地方に眠る「潜在労働力」を掘り起こし、都市部の企業の新たな成長を力強く後押しし、多様な働き方を求める人々の新しいライフスタイルを創造する、まさに三者にとってWin-Win-Winとなる、「未来へ繋がる、希望の架け橋」と言えるでしょう。
地方に眠るチカラを最大限に活かし、地域、企業、そして働く私たち、みんなが笑顔になれる未来を描ける可能性を秘めているのです。
次回は、この地方創生テレワークの考え方をさらに一歩進めた、「ローカル・テレワーク」という、地域に根差した新しい働き方について、ご紹介したいと思います。
※地方創生テレワークについての小冊子を無料配布しております。
ご関心のある方は以下よりダウンロード下さい。
https://drive.google.com/file/d/18rwP34IfHBxwDcaBZ2J71QK7SXVO1FjU/view?usp=drive_link
プロフィール
株式会社aubeBiz(オーブ・ビズ)
代表取締役 酒井晶子(さかい あきこ)
兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。
2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。
2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。
著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。
Webサイト:株式会社aubeBiz
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