企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~
第40回
未来を変える働き方──テレワークが導く「次の社会像」 ~自分らしく豊かに生きるための、新しい「組織」と「個人」のあり方~
株式会社aubeBiz 酒井 晶子
これまで、人材不足への対策や、地域での教育、BPOを通じた組織変革など、さまざまな角度から「働き方のアップデート」についてお話ししてきました。
この連載を通じて私自身が改めて確信しているのは、テレワークというインフラは、単に「効率を上げるための道具」ではないということです。
それは、私たちがどう生き、どう社会と関わりたいのかという「ウェルビーイング(幸福)」を形にするための、大切な手段の一つであるということです。
「自分らしく働くこと」を、もう諦めなくていい
私たちの組織をはじめ、テレワーカーの創出事業、地方創生テレワークの現場には、かつて「自分らしく働くこと」を、一度は諦めそうになった方々がたくさんいます。
子どもの急な発熱に心を痛めながら、無理をして通勤電車に揺られていたお母さん。
長年キャリアを積み上げ、確かな専門スキルを持ちながらも、介護との両立という壁を前に「これ以上、周りに迷惑をかけてまで仕事を続けるのは無理なのかな」と、自分自身の可能性を閉じ込めてしまいそうになっていた方。
こうした方々がテレワークという扉を叩いたとき、最初に手にするのは「仕事」そのもの以上に、「人生の主導権を自分自身が握っている」という感覚です。
私自身が、子どもの持病でフルタイム勤務を諦め、今の事業を立ち上げた経緯がありますので、誰よりもその気持ちが分かります。
「仕事をしながら、子どもに『おかえり』と言えるようになったことが何より嬉しい」
「住む場所を諦めなくていい。この町にいながら、全国のプロジェクトに挑戦できる」
こうした声を聞くたびに、ウェルビーイングとは、決して遠い理想の概念ではないと感じます。
育児、介護、地域での生活、そして自分自身の健康。
これらを仕事のために切り捨てるのではなく、すべてを自分の一部として大切に抱えながら、なおかつ社会に貢献できているという手応え。
その調和こそが、これからの時代に私たちが目指すべき「豊かさ」の正体ではないでしょうか。
「幸せな個」が組織を、そして社会を動かす
経営者の視点に立てば、こうした自由な働き方に対して「管理が難しくなるのではないか」「本当に回るのだろうか」という、ふとした不安がよぎることもあるかもしれません。
しかし、メンバーが「自分らしく、満たされた状態」で仕事に向き合っているチームは、実は驚くほど強いものです。
そこには「言われたからやる」という受動的な姿勢ではなく、自らの専門性や個性を活かして「誰かの役に立ちたい」という内発的な動機に基づいた熱量が生まれます。
私たちがaubeBizとして積み上げてきたのは、この「幸せな個」がゆるやかに繋がることで、結果として組織の生産性が向上し、想像もしなかったようなクリエイティブな課題解決が行われるという事実です。
経営とは、リソースを抱え込むことではなく、志を同じくするパートナーと「手をつなぐ」こと。
そんな共創の形が、これからの組織のスタンダードになっていくのではないかと考えています。
境界のない未来へ向かって
私たちの働き方は、これからさらに自由に、そして境界のないものになっていくでしょう。
地域の境界、組織の境界。
そして「仕事とプライベート」を無理に切り分ける境界。
テレワークというインフラは、それらの壁を少しずつ溶かし、私たちをより本質的な「繋がり」へと導いてくれます。
都会の刺激も、地方の安らぎも、どちらも享受しながら働く。
そんな、多層的で彩り豊かな人生を送る人が、あちこちで増えていくはずです。
aubeBizの挑戦も、ここで止まることはありません。
誰もが「働くことを諦めなくていい」という一歩を越えて、誰もが「この働き方だからこそ、今の幸せがある」と心から思える社会を、これからも皆さんと共に丁寧に形にしていきたいと考えています。
次なるステージ、テクノロジーとの共創へ
時代は常に動き続けています。
働き方が自由になった先に、私たちは今、新たなパートナーを迎えようとしています。
それが「生成AI」という強力な存在です。
AIという、私たちの知恵を補い広げてくれるパートナーを得ることで、私たちの働き方はどう変わるのか。
AIに作業を任せ、私たちはどのような「人間らしい時間」を創り出し、ウェルビーイングをさらに深めていくのか。
次回は、この最新のテクノロジーと私たちの感性が溶け合う、新しい働き方のステージについてお話ししたいと思います。
「誰もが自分らしく豊かになれる社会」を目指して。
未来を変える働き方を模索する旅は続きます。
次回は生成AIは「作業」を奪い、「創造」を解き放つ
AIを単なるツールとしてではなく、私たちの可能性を広げる「共創パートナー」として捉えたとき、組織と個人のあり方はどう進化するのか。具体的な活用事例と共に探っていきます。
プロフィール

株式会社aubeBiz(オーブ・ビズ)
代表取締役 酒井晶子(さかい あきこ)
兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。
2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。
2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。
著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。
Webサイト:株式会社aubeBiz
企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~
- 第40回 未来を変える働き方──テレワークが導く「次の社会像」 ~自分らしく豊かに生きるための、新しい「組織」と「個人」のあり方~
- 第39回 持続可能な地域経済圏──テレワークでつくる共創エコシステム ~「外注」から「共創」へ。地域を動かす新しい経済の循環~
- 第38回 企業×地域×学校──共創型キャリア教育モデル ~地元の若者たちに「世界と繋がる選択肢」を届ける~
- 第37回 二拠点生活(デュアルライフ)とテレワーク──移住・関係人口の新しい形
- 第36回 BCPとBPO──災害に強い企業の新常識
- 第35回 働き方とウェルビーイング──幸せが生産性を高める理由
- 第34回 人材流動化の時代に「選ばれている会社」は何をしているのか? 〜給与でも制度でもない、“最後に見られているもの”〜
- 第33回 地域リーダーが拓く未来──ローカル・テレワーク・パートナーの力 〜企業と地域をつなぐ「新しいハブ人材」という選択肢〜
- 第32回 生成AIとBPOの未来──AI時代の“人と組織”の役割とは? 〜AIが当たり前になる時代に、企業やビジネスパーソンは何を強みにするのか〜
- 第31回 “全国採用”の時代──人材不足を突破する採用戦略 〜「求職者が来ない」から「選ばれる会社」へ、発想を切り替える〜
- 第30回 中小企業のDXとテレワーク──小さな一歩からの業務改革 〜属人化をほどき、手の届く範囲から未来志向の仕組みづくりへ〜
- 第29回 観光とワーケーション──“訪れる人”を“関わり続ける人”へ 〜テレワークだからできる、新しい関係人口づくり〜
- 第28回 BPOアワードから見えた未来──“外注”ではなく“共創”が、人材不足を超えていく~受賞社の取り組みが示す、これからのBPO活用の正解~
- 第27回 ダイバーシティとテレワーク──多様性が生むイノベーション 〜“働きづらさ”を“戦力化”へ変える、新時代の仕事づくり〜
- 第26回 自治体の挑戦──テレワーク推進政策の最前線 〜「施策」を現場で回す“仕組み”の作り方〜
- 第25回 教育とテレワーク──地域で育てる次世代キャリア 〜「地元で働きたい」を仕組みにする、教育×テレワーク〜
- 第24回 農業×テレワーク──デジタルで広がる“第六次産業化”の可能性 〜“つくる”と“伝える”をつなぐ、新しい地域のかたち〜
- 第23回 地方と企業をつなぐ“BPOモデル”の進化 ──自走型チームが地域経済を動かす 〜“任せる”から“共に創る”へ。地域BPOが生み出す新しい共創のかたち〜
- 第22回 「地方創生テレワーク」の進化形──自治体×企業×住民で生み出す『ローカル・テレワーク』 〜地域の人・企業・文化が輝く、循環型の“しごと生成エコシステム”〜
- 第21回 自治体・企業・住民でつくる 地方創生テレワーク推進モデル 〜“点”で終わらせない、持続可能な三者連携とは?〜
- 第20回 「“よくわからない”を乗り越える──テレワーク導入Q&A」 〜不安を解消し、最初の一歩を踏み出すために〜
- 第19回 「“社会貢献企業”としてのテレワーク導入」 〜採用力とブランド力を高める組織戦略〜
- 第18回 「“自走できる人材”を育てるマインドと環境づくり」 〜指示待ち型から“目的を理解し、動ける人材”へ〜
- 第17回 「“信頼される会社”の条件──テレワーク時代の組織文化とリーダーシップ」 〜制度や仕組みを超えて“信頼”を築く組織の土台とは〜
- 第16回 生成AIとテレワーク ──中小企業が直面する“AI格差”を乗り越えるには?
- 第15回 「地域×テレワーク」──地方創生ローカル・テレワーク 〜地域企業と地域人材のハブとなる地域リーダーの創出〜
- 第14回 「“個の力”を最大化するチームづくり──テレワークでも成長・定着する組織のつくり方」 〜孤独・疎外感を防ぐコミュニティ型組織づくりの工夫〜
- 第13回 「“副業・複業人材”を活かす!兼業社会における新しい雇用戦略」 ── 多様なキャリアが交わる“パラレルワーカー”活用の可能性
- 第12回 「“スキマ時間”を活かす働き方──ワークシェアリングという選択肢」
- 第11回 「成功するテレワーク採用」 〜離れていても成果を出す組織づくりのヒント〜
- 第10回 「“全国から採用する時代”へ!採用戦略の発想を切り替えるヒント」 〜テレワークが生み出す“新しい雇用のかたち”〜
- 第9回 「BPOとBCP」―― 有事の際の事業継続に備える新常識
- 第8回 ーDX化の第一歩となる業務改革ー「属人化を防ぐ仕事の仕組み化」
- 第7回 完全テレワークでも離職率5%未満を実現するチームづくりの秘訣 〜組織の土台を支える“仕組み”と“信頼文化”のつくり方〜
- 第6回 成長戦略としてのBPO活用法 〜“外注”にとどまらない、企業の柔軟性と競争力を高める選択肢〜
- 第5回 「テレワークは難しい?」──よくある誤解と“うまくいかない理由”を解きほぐす
- 第4回 地域で働く、地域を支える──「ローカル・テレワーク」という新しい仕組み
- 第3回 地方に眠るチカラを活かす!「地方創生テレワーク」の可能性
- 第2回 眠れる働くチカラ 「働きたいけれど働けない」潜在労働力を社会へ
- 第1回 これからの時代に選ばれる働き方とは? ― 少子高齢化・人材不足を乗り越える組織づくりのヒント