企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~

第39回

持続可能な地域経済圏──テレワークでつくる共創エコシステム ~「外注」から「共創」へ。地域を動かす新しい経済の循環~

株式会社aubeBiz  酒井 晶子

 

試行錯誤の先に、見えてきたもの

前回は、地域でのキャリア教育を通じて、若者たちに「好きな場所にいながら、やりたい仕事に挑戦できる」という選択肢を届けることの重要性についてお話ししました。
しかし、せっかく芽生えた若者たちの意欲や、育ち始めた地元の潜在的な人材も、活躍できる「場」がなければ、その力は再び外へと流出してしまいます。
教育という「種まき」を、一時的なイベントで終わらせないためには、地域全体で価値を循環させる「土台(エコシステム)」が必要です。
地域の雇用を守るということは、単に国や都会から仕事を「持ってくる」ことだけを指すのではありません。また、安価な労働力として「下請け」を担うことでもありません。
私たちが目指しているのは、自治体、地域企業、そして住民の三者が、それぞれの役割で価値を生み出し、受け取り合う「共創型」の経済圏です。

今回は、その核心となる「ローカル・テレワーク®」の仕組みと、私たちが描く未来の形についてお話ししたいと思います。

「仕事の地産地消」が地域を強くする

私たちが提唱している「ローカル・テレワーク®」は、従来のテレワークとは少し考え方が異なります。
これまでのテレワークの多くは、「地方に住む人が、都市部の企業のために働く」という形でした。
もちろん、これも個人の選択肢としては素晴らしいものですが、地域経済という視点で見ると、労働力と成果が外へ流出している側面は否めません。
地元企業からは、「優秀な人ほど都会の仕事に流れてしまい、自社の採用がますます難しくなる」という切実な声も聞こえてきました。
そこで実現したいのが、地域の人材が、地域の企業を支える「仕事の地産地消」です。
育児や介護、あるいは移動の制約があってフルタイムでは働けないけれど、確かなスキルを持った住民がいる。
一方で、深刻な人手不足に悩み、DX(デジタルトランスフォーメーション)や業務効率化の必要性を感じながらも、どこから手をつければいいか分からない地域企業がある。
この両者を「テレワーク」という糸で編み直すことで、新しい循環が生まれます。

住民は、住み慣れた地域でプロとしてのキャリアを継続し、適正な対価を得る。
企業は、必要な業務を切り出して仕組み化し、テレワークを前提とした組織へと変革することで、地元の優秀な人材を「チーム」として迎え入れることができる。
そして自治体にとっては、人口流出の防止だけでなく、地域内での経済循環が生まれることで、持続可能な地域経営の足腰が鍛えられていく。

誰かが誰かに依存するのではなく、全員が「共創」のパートナーとして潤う。この三者還元の構造こそが、私たちが各地のプロジェクトで大切にしている視点です。

「テレワーク」はPC作業だけではない

ここで一つお伝えしたいのは、私たちが考えるテレワークとは、単なる「パソコン仕事」に限定されないということです。
本来、テレワークとは「ICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」を指します。
これを地域に当てはめると、その可能性はさらに大きく広がります。
例えば、地域の農家の繁忙期だけ収穫を手伝いに行く。
空き家再生事業の清掃を担当する。
あるいは、ワーケーション施設の管理を担う。
こうした地域に根ざした「現場の仕事」も、ワークシェアリングという考え方とデジタルでのマッチングを組み合わせれば、隙間時間を活用した立派な仕事になります。
パソコンでの事務作業を担う人が、時には地域に出て体を動かす仕事も引き受ける。
そうしたハイブリッドな働き方ができるのも、場所を選ばない「テレワーク」という概念が根底にあるからです。

境界線を越えて「巡る」人材

さらに、ローカル・テレワークは「地元の人が地元の仕事をする」という枠組みさえも超え始めています。
都会に住みながら、大好きな地域の企業の仕事をテレワークで請け負い、月に一度は旅行を兼ねてその地域へ出社する。
あるいは、パソコンを持ってワーケーションをしながら、滞在先の農業を手伝う。
こうした「外からの風」が吹き込むことで、地域企業の課題が解決されたり、新しいアイデアが生まれたりする。
人が巡ることで、経済だけでなく、地域の文化やコミュニティも活性化していく。
これこそが、私たちが理想とする「開かれたエコシステム」の姿です。

「ハブ」を育てるという、究極の伴走

この循環をスムーズに回すためには、住民と企業の間を繋ぎ、複雑な業務を交通整理する「ハブ」の存在が不可欠です。
aubeBizはこれまで、各地でこのハブとしての役割を担ってきました。経営者の頭の中にある「漠然とした忙しさ」を整理し、マニュアル化や仕組み化によって、テレワーカーが活躍できる形に整える伴走支援です。
しかし、私たち一社ができることには限りがあります。
10万人の雇用創出という大きな目標に向けて本当に大切なのは、aubeBiz自身がハブであり続けることだけではなく、地域の中に「ハブとなる人材や組織」を増やしていくことだと考えています。

地域のコミュニティリーダーや地元のBPO事業者の方々に対し、私たちが培ってきた「業務設計・チームビルディング」のノウハウを惜しみなく共有する。
地域の事情を誰よりも知る「地元のハブ」が自走し、自ら雇用を生んでいく。
共有し、共創し、やがて地域のパートナーが主役となって循環を回せるようになる。
この「知恵の共有」こそが、本当の意味での地方創生であり、持続可能なエコシステムの完成形だと考えています。

10万人の「生きる場」を共に創る

私たちが掲げる「2030年までに10万人の仕事創出」という目標。
それは、単に10万個の作業データを作るということではありません。
10万人の「その人らしい働き方」を、地域の中に一つひとつ形にしていくという挑戦です。
子どもに「おかえり」と言える環境で、プロとしての誇りを持って働くお母さん。
介護をしながら、長年培った専門性を活かして地元企業を支える方。
地域には、まだ眠っている才能と、解決を待っている課題がたくさんあります。
それらをテレワークという技術と、共創という思想で繋ぎ合わせれば、日本の各地に、もっと温かく、もっと豊かな経済の形が生まれると確信しています。
「外注」という言葉を、「共に未来を創るパートナーシップ」へと書き換えていく。
そんな一歩から、地域を動かす大きな循環を作っていきたいと考えています。


次回は未来を変える働き方──テレワークが導く“次の社会像
これまでの歩みを振り返りながら、テレワークから始まる新しい雇用・地域・社会のビジョンを描き、私たちが向かう未来への約束をお伝えします。


 

プロフィール

株式会社aubeBiz(オーブ・ビズ)
代表取締役 酒井晶子(さかい あきこ)

兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。

2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。

2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。

著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。


Webサイト:株式会社aubeBiz

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