企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~

第21回

自治体・企業・住民でつくる 地方創生テレワーク推進モデル 〜“点”で終わらせない、持続可能な三者連携とは?〜

株式会社aubeBiz  酒井 晶子

 

「この地域を、もっと元気にしたい」
そんな熱い想いで始まったプロジェクトが、いつの間にか失速してしまう。
「立派な報告書はできたけれど、何も変わらなかった…」──そんな経験はありませんか?
なぜ、せっかく灯った火は、単発の打ち上げ花火のように消えてしまうのでしょうか。
その答えは、意外なほどシンプルです。
そして、その先には、あなたの地域を輝かせるための「奇跡の方程式」が待っています。


1. 犯人は、たった一つの『分断』だった

多くの挑戦が“点”で終わってしまう現場。
その根本原因を探ると、いつも同じ壁に突き当たります。
それは、主役であるはずの自治体・企業・住民の『分断』です。

 自治体は叫びます。
「住民のために何かしたい!でも、ビジネスのことは分からない…どうやって企業と話せばいいんだ?」

自治体だけでは、企業との接点や雇用・事業化につながるノウハウが不足しがちです。

 企業は悩みます。「地域には素晴らしい人材がいるはず。でも、どうすれば出会える?地域にどう溶け込めばいい?」
企業だけでは、地元の信頼関係を築いたり、継続的な支援の基盤を確保したりすることが難しい。

 住民は思います。「このまちが好き。ここで働き続けたい。でも、私にできる仕事なんてあるんだろうか…」
住民だけでは、せっかく身につけたスキルを活かす機会や、外部との接点を見つけることができません。

それぞれが同じ未来を願いながら、違う言語を話し、違う場所に立っている。 このもどかしいすれ違いこそが、可能性の芽を摘んでしまうたった一つの“犯人”です。
 でも、これは誰かのせいではありません。 むしろ、「構造的なすれ違い」なのです。

2. “最強のトライアングル”が未来を創る

では、どうすればこの分断を乗り越えられるのでしょうか。
 その鍵は、自治体・企業・住民の三者がパートナーとしてつながることにあります。
この三者がパズルのピースのようにカチッとはまった瞬間、地域に眠っていたエネルギーが一気に動き出します。
それが、「自治体×企業×住民」による“最強のトライアングル”です。

まず自治体が、講座や支援制度といった「場と仕組み」を整備する。
 誰もが主役になれる環境をつくることで、住民が挑戦の一歩を踏み出す“きっかけ”を生み出します。

次に企業が、BPOやDX、副業マッチングなどを通じて「仕事」を提供する。
たとえば、SNS運用・経理・データ入力など地域企業の身近な業務から始めるケースも多く、地域に新しい雇用の流れをつくります。

そして住民が、「働き手」としてスキルを活かし、自分のキャリアと地域の未来を重ねながら、豊かな暮らしを築いていく。

このトライアングルが動き出すとき、「人」が「仕事」を呼び、「仕事」が「地域」を潤し、「地域」が「人」を育む。 そんな美しい循環が生まれるのです。それは、“誰かがやってくれる地方創生”から、 “自分たちが関わり合って育てる地方創生”へ。 まさに、共に育つ時代の幕開けです。

3. “三者をつなぐ魔法使い”の存在

とはいえ、言うは易し、行うは難し。
立場も言葉も違う三者が、どうすれば本当に手を取り合えるのでしょうか。
そこで登場するのが、三者の間に立ち、連携を促進する推進ハブ(中間支援者)の存在です。
自治体の想いに耳を傾け、企業の課題を理解し、住民の希望を拾い上げる。
そして、それぞれの言葉を“共通言語”に翻訳して、再び結び直していく。

自治体の「想い」を、企業の「ビジネス言語」に変える。
企業の「課題」を、住民の「仕事(やりがい)」に変える。
ときに現場で汗をかき、ときに第三者の立場で調整役に回り、プロジェクトをゴールまで伴走する――。
それが、地域に“魔法”を起こす人たちの仕事です。

私たちは、そうした役割を「ローカル・テレワーク・パートナー」と名付け、育成とノウハウ提供を実施しています。
2019年から全国で育成講座や勉強会を展開し、今では各地で地域のヒーロー&ヒロインとして活躍する姿が生まれています。
 彼らの存在が、“点で終わらせない地域づくり”を支える原動力になっています。

4. 連携が生む“幸せの連鎖”

このトライアングルと推進ハブが揃った地域では、魔法のような変化が起きます。
企業の「こんな人がいてくれたら…」という願いが、地域に住む誰かの「やってみたい」に変わり、 ひとりの「ここで働き続けたい」という想いが、地域全体の未来への光になる。
最近では、地域外から関わる“関係人口”の輪も広がり始めています。
都市部の副業・リモート人材が、地域企業のSNS運用や広報支援を担い、地元の人々と交流しながら地域のファンになっていく。 こうした小さな循環が、確かな“幸せの連鎖”を生み出しているのです。

そして、どんな仕組みも最終的には「人」が土台。
「この土地が好きだから住み続けたい」
「あの人に会いたくてまた訪れたい」 ──そんな温かいコミュニティの存在こそが、地方創生を成功に導く真の鍵です。
 制度やツールは変わっても、“人のつながり”は地域の力を支え続けます。

5. さあ、「点」を「面」に変える冒険へ

地方創生テレワークは、単なるリモートワーク導入の話ではありません。
それは、地域に関わる全員で“働くエコシステム”をデザインする壮大な冒険です。
その地図を広げるために必要なコンパスは、たった3つ。

1.「自分だけ」から「みんなで」へ、意識をシフトすること。
2.地域の中に、未来への案内人(推進ハブ)を育てること。
3. 目先の「数字」より、未来に続く「人のつながり」を信じること。

この3つが揃ったとき、地域の小さな「点」は、やがて地域を覆う大きな「面」となり、全国へと広がるネットワークへ成長していくのではないでしょうか。


次回は「“地方創生テレワーク”の進化形──自治体×企業×住民で生み出す『ローカル・テレワーク』」
守りのテレワークから、攻めのテレワークへ。地域が自ら“仕事を生み出す”力を育てる──。
aubeBizが全国で実践してきた「ローカル・テレワーク」の仕組みを紐解き、実践のための具体的なステップをお届けします。

 

プロフィール

株式会社aubeBiz(オーブ・ビズ)
代表取締役 酒井晶子(さかい あきこ)

兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。

2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。

2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。

著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。


Webサイト:株式会社aubeBiz

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