企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~
第6回
成長戦略としてのBPO活用法 〜“外注”にとどまらない、企業の柔軟性と競争力を高める選択肢〜
株式会社aubeBiz 酒井 晶子
人手不足対策だけじゃない── 戦略的BPO導入
「人が足りないからBPOに出す」──そんな“苦肉の策”のようなイメージを持たれている方も多いかもしれません。
しかし近年、BPOは単なる人手不足への対処法やコスト削減の手段ではなく、企業の競争力や柔軟性を高める“成長戦略”の一環として捉えられるようになってきました。
変化のスピードが増すこの時代、企業にとって本当に大切なのは、限られたリソースを「核となる業務」に集中させること。BPOは、そうした集中を可能にし、企業が時代の荒波を乗り越えていくための頼もしい“羅針盤”にもなり得るのです。
従来の「外注」との違い
BPO(Business Process Outsourcing)と「外注」の違いは何でしょうか?
外注は、単発または部分的な業務の委託であるのに対し、BPOは業務プロセス全体──たとえば、経理・人事・顧客対応・IT運用など──を包括的かつ継続的に任せることが前提です。業務の設計・実行から改善までをパートナー企業と共に進めていくのがBPOの本質です。
つまり、BPOは単なる労働力の提供ではなく、プロフェッショナルチームによる業務の最適化と継続的改善を提供する“ビジネスパートナー”。法改正や技術進化にも即応しながら、業務品質の安定・向上を図れるのが特徴です。
BPOを“成長戦略”として活用する4つのメリット
① 採用難を乗り越える“安心感”と“スピード”
「採用しても続かない」「即戦力がいない」と悩む企業にとって、BPOは、時間をかけて採用・育成することなく、必要なタイミングで経験豊富なリソースを確保できる手段です。
属人化リスクの軽減や、育休・退職時のリスク対応としても有効です。
② 本業に集中できる“解放感”と生産性の向上
定型業務や間接業務をBPOに任せることで、社員は本来の専門領域に集中できます。例えば、開発担当が新サービスの創出に、マーケティング担当が効果的なプロモーション戦略に、営業担当が提案や顧客対応に、各々が全力を注げる環境が整えば、組織の生産性も大きく向上します。
③ 外部の“知恵”で業務を革新
BPOパートナーは、さまざまな業界で得たベストプラクティスを活用し、業務の見直しや改善のヒントを提供してくれます。自社では思いつかなかった視点や、最新の仕組みを導入できるチャンスになります。
④ 柔軟な体制構築と“賢い”コストコントロール
BPOは、繁忙期・閑散期に応じて業務量を調整できる柔軟な体制づくりも可能にします。
人件費を固定費から変動費化し、経営の安定性と機動力を両立できます。
弊社aubeBizの支援事例と工夫
aubeBizでは、14年以上にわたりフルリモートでBPO支援を行ってきました。
その中でも、特に好評いただいている導入事例をいくつかご紹介します。
・協会運営事務局の一括BPO
会員管理、問い合わせ対応、セミナー運営などを包括的に代行。主催者はコンテンツ開発やブランディングなど「本来やりたかった活動」に専念できるように。
・秘書業務、経理業務、事務業務のバックオフィス支援
スケジュール管理、プロジェクトの進捗管理、会食やパーティ会場のリサーチや予約、会計ソフト入力、給与計算、請求書発行、支払い管理など全てをオンラインで対応。正規雇用の人件費の約1/3のコストで秘書業務、経理業務、事務業務など横断的なサポートを実現。
・SNS運用代行・コンテンツ作成
企画から投稿、効果分析までトータルで支援し、ブランド力向上、テーマ性のある継続的な情報発信を実現。正社員の方が本来の業務の隙間に苦戦して行っていたS N S発信を運用のプロが代行することで、正社員の方の負担を軽減し、フォロワー数、インプレッション数、エンゲージメント率がアップ。
私たちが大切にしている3つの工夫
1.専任窓口+チーム体制による安定運用
属人化せず、担当者が不在でも業務が止まらないチーム体制を整備。
2.ノウハウの見える化・マニュアル化
プロセスを標準化・共有することで、将来的な内製化や引き継ぎもスムーズに。作成したマニュアルはクライアント様社内でナレッジとして蓄積していただける形で提供。
3.クライアントと“共創”する姿勢
単なる受託ではなく、ビジョンや課題を共に考える“伴走型パートナー”として支援。
BPO導入成功のために大切なこと
■ DXの前に「アナログ脱却」を
高額なシステムを導入しなくても、B P O導入は可能です。ペーパーレスやクラウド化など、基本的なデジタル環境整備がBPO活用の土台です。
■ 切り出す業務の見極め
どの業務を外部に任せるべきか、定型・非コア業務を見極めることが重要です。まずは業務の切り出しと、B P O活用するための仕組みとフローづくりから伴奏します。
■ 導入目的の明確化
「人手不足」「DX推進」「新規事業集中」など、BPO導入の理由を明確に。ゴールの明確化と全体設計からスタートします。
■ 情報整備と“任せる覚悟”
情報の整理、引き継ぎ体制の準備、そして任せる覚悟と旗振り役の存在が成功を左右します。従来のやり方を変えるにはエネルギーが必要ですが、B C P(事業継続計画)と組織の未来を見据えて3ヶ月〜6ヶ月の短期間で集中して体制をつくることがポイントとなります。
BPOは“弱さ”の象徴ではなく、“強さ”の選択肢
「全部自社でやらなければならない」という時代は終わりました。
BPOは、“不足”に対応するための消極的手段ではなく、“強み”を最大限に活かすための、前向きで戦略的な選択肢です。
限られた経営資源を、企業の成長に直結する「本業」へ集中させるために──
「任せる」という選択が、組織の未来を切り拓く一歩になると考えています。
次回は、「テレワークでも離職率5%未満を実現するチームづくりの秘訣」
──組織の土台を支える“仕組み”と“信頼文化”のつくり方をご紹介します。
※地方創生テレワークについての小冊子を無料配布しております。
ご関心のある方は以下よりダウンロード下さい。
プロフィール
株式会社aubeBiz(オーブ・ビズ)
代表取締役 酒井晶子(さかい あきこ)
兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。
2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。
2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。
著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。
Webサイト:株式会社aubeBiz
企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~
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