デキる!社員の育て方~子育て経験との対比~
筆者:パケットファブリック・ジャパン株式会社 奥野 政樹
デキる!社員の育て方~子育て経験との対比~
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この標題についてコラムを書かせてもらってきたが、今回で最終回。考えてみると、デキる社員とはどういう社員なのか。それは一言で言えば、組織目標の達成の役に立つ社員のことであるが、そうなると、組織目標によってデキる社員の要件もそれぞれだということだ。つまり、当たり前のことだが、社員に求められるスキルというものは、組織目標によって変わってくる。極端な話だが、現状維持を最大の目標とする組織なら、いかに、退屈な日常に文句を言うことも疑問を感じることもなく時間を潰すことができるかというスキルが、非常に重要になってくる。いや、何もこのスキルはこうした停滞組織だけに必要なものではなく、変化の大きい革新的な組織においてすら、相当程度求められるスキルだ。世の中そんなに、毎日間断なく刺激に満ち溢れた組織など存在しないのである。
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僕は、協調性という言葉を聞くとイライラする。「あいつは協調性がないからなぁ」という、よくある批判の意味するところは要するに、「あいつ」は空気を読まず、せっかくみんながひとつの方向にまとまろうという和が保たれているのに、それにわざわざ水を差し、混乱を巻き起こす、迷惑な奴だというニュアンスを感じる。
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僕がキャリアを重ねてくる中で、コミュニケーションの大切さやホウレンソウの必要性を唱えている人に何人も出会った。最近では、その為のマニュアル本や研修まで出回っている。しかし僕は、そういうことを唱えている人とコミュニケーションを図りたいと思ったことはないし、そういう人に報告・連絡・相談したいと思ったこともない。したところで何をしてくれるわけではなし、意味がないからだ。
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「最近の若い奴らは社会の基本ができてないのが多いから、新入社員は一からよく教育しなければならない。」そういう声をよく聞くが、僕には今一つよくわからない。「社会の基本」とは一体何なのだろうか。
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~指示待ちは本当にだめなのか?~僕のところに電話をかけてきて、「社長、社員が指示待ちでお困りじゃないですか?」と聞く人事系のコンサルタントがたまにいる。「指示待ち」はよくないことと一般的に言われているから、こういう営業アプローチは受けがいいのかもしれない。でも僕は、部下が「指示待ち」で困ったという経験は今まで一度もない。確かに、指示を出さないと動かないタイプもいる。けれども、指示を出せばそれをやってくれるのであれば、僕は困らない。困るのはむしろ、指示を出してもそれができないか、やらないタイプだ。
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僕も職業柄、人事系コンサルタントの話を聞き、著作を読むことが多い。組織はつまりは人であり、社員の育成に関心のない経営者はいないだろう。色々見聞きしたが、方法論としては心理学をベースとした合理性を重んじるものと、精神性を重視するいわゆる「体育会系」に大別できるかもしれない。心理学は、聞いているとなるほどとは思うが、やはり学問だから、学校の授業と同じでその場を離れると忘れてしまうことが多い。一方、体育会系の話は刺激的だから印象には残る。しかし、どうも僕みたいに周りに合わせることがあまり得意ではない人間には、反発を覚えることが多い。
プロフィール
パケットファブリック・ジャパン株式会社
代表執行役CEO 奥野 政樹(おくのまさき)
<略歴>
1988年 早稲田大学法学部卒業
1988年 日本電信電話株式会社入社
1992年 会社派遣によりニューヨーク大学法科大学院へ留学
1994年 ニューヨーク州弁護士資格取得
帰国後、数多くの国際M&Aプロジェクトで交渉を担当
2003年 インターナップ・ジャパン株式会社へ出向
2006年 同社代表執行役CEOに就任
2024年3月29日 パケットファブリック・ジャパン株式会社に社名を変更、現在に至る。
Webサイト:パケットファブリック・ジャパン株式会社