デキる!社員の育て方~子育て経験との対比~

第2回

業務に主体的に取り組ませたい

奥野 政樹 2015年4月24日
 
~指示待ちは本当にだめなのか?~

 僕のところに電話をかけてきて、「社長、社員が指示待ちでお困りじゃないですか?」と聞く人事系のコンサルタントがたまにいる。「指示待ち」はよくないことと一般的に言われているから、こういう営業アプローチは受けがいいのかもしれない。でも僕は、部下が「指示待ち」で困ったという経験は今まで一度もない。確かに、指示を出さないと動かないタイプもいる。けれども、指示を出せばそれをやってくれるのであれば、僕は困らない。困るのはむしろ、指示を出してもそれができないか、やらないタイプだ。

では一体、「指示待ち」の何が問題だというのか。話を聞いてみると、社員が「指示待ち」だと「上司が大変」なのだそうだ。だからそうならならないよう、社員に業務に対する目標設定を詳細にさせて、その達成のためのプロセスを管理する仕組みを作るのがよいとのことである。なるほど、わかりやすい。これはつまり、自分で指示を出せない上司のために開発された方法論だ。部下たるもの、上司の胸の内を慮り、何も言われなくても上司の満足のいくように万事上手くやってほしい。しかし、自分も問われれば部下が何をやっているのかわかっているという体裁が必要なので、その材料は確保しておきたい。この要望をかなえてくれるというのだろう。

僕は断言したい。このように、指導する側がその責任を放棄しているにもかかわらず、それを管理という手法で形だけを作ろうとしている環境下では、人間の主体性、自主性、あるいは挑戦心といったものは絶対に育まれない。端的に言えば、上司からは指示もなればアドバイスももらえない。それでは部下は暗闇にいるのと同じであり、形だけの目標など立てても、怖くて実行できないのだ。

「親に言われなくても何でも自分でやる子」にするにはどうしたらいいでしょうか?」という質問を子育てサイトなどで見かける。要するに子供の主体性、挑戦心はどうしたら出てくるのかということだ。僕は、それはいくつかの段階があると思う。まず大事なのは、子供に2つの安心を与えることである。一つは、失敗しても自分は親から決して見捨てられないという安心。具体的には失敗に対して罰を与えてはならないということである。

そしてもう一つ、いつでも助けてくれる存在がすぐ横にいるという安心である。親は子供の先生になってはいけない。教える立場と教わる立場を明確にし、大人にとっての都合を、あたかも子供のためであるかのように押し付ければ子供は委縮し、親の顔色だけをうかがうようになる。しかし一方で、親が子供を放任すれば、子供は身動きが取れなくなるのだ。そうではなくて、親は子供の伴走者でなければいけない。いつでも横にいて問題意識を共有し、何かあれば本気で対応してくれる存在がいるという安心が大切なのだ。

この2つの安心が揃ってこそ、子供には挑戦する精神的準備ができる。周囲におもねることなく、思い切って自己を発露することができるようになるということだ。次の段階は挑戦の対象選びだが、これも子供は初めから自分で選ぶことはできないから、親が方向付けをする。最初はこれが必要なのだ。そして子供の挑戦が始まったら、親は本当にその伴走をしなければならない。先生になってはいけないし、ファンや評論家でもだめなのだ。

そうしているうちに、子供はだんだんと自分で挑戦する対象を選択し、独力でもそれと闘っていけるようになってくる。それに応じて、伴走者としての親の役割は減っていくわけだが、ここまできたら親は子供の選択を尊重し、頼まれもしないのに口出しをしないようにすることが肝要だ。

断っておくが、これは子供の自主性と挑戦心の醸成だけに目的をしぼった狭論であり、実際には、世間の仕組みとの適合性や生活の上での他の重要事項とのバランスを考えれば、このまますべて実行することは不可能だ。僕も、息子の興味を潰さないように毎週カードゲームショップ通いに付き合ったり、ピアノを嫌がる娘になんとかやる気を出させようと自分も一緒に習い始めたりした。それはそれなりに効果はあったと思う。しかし、息子が「お笑い芸人になろうかな」と言えばやはり、「食って行けないからやめろ。」と言うわけだ。それは、現実とのバランスの上で尊重できないのである。

子供を自主的、挑戦的にするということは、一方で、子供に世間知らずのとんでもない割の合わない行動をとらせてしまうリスクがあるということである。

社員を「指示待ちに」したくなければ、最初は詳細に指示を出さなければならない。社員の成果が自分にとって都合の悪いものでも、決して怒ってはならない。尻拭いをしなければならない。そして大事なことは、社員が助けを求めてきたときは絶対に「自分で考えろ」と言ってはならない。一緒に考え、行動する必要がある。そうこうするうちに、確かに社員は指示がなくても動くようになるであろう。しかしその動き方が、自分にとって都合の良いものである保証はどこにもないのである。

それが本当に自分が望むところなのか。社員に自主性や挑戦を求める前に、そこをよく考えるべきだ。覚悟もなく軽々に語るべき言葉ではない。

 
 

プロフィール

インターナップ・ジャパン株式会社
代表執行役CEO 奥野 政樹(おくのまさき)

<略歴>
1988年 早稲田大学法学部卒業
1988年 日本電信電話株式会社入社
1992年 会社派遣によりニューヨーク大学法科大学院へ留学
1994年 ニューヨーク州弁護士資格取得
     帰国後、数多くの国際M&Aプロジェクトで交渉を担当
2003年 インターナップ・ジャパン株式会社へ出向
2006年 同社代表執行役CEOに就任、現在に至る


HP:インターナップ・ジャパン株式会社

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