デキる!社員の育て方~子育て経験との対比~

第6回

まとめ

奥野 政樹 2015年8月28日
 

~社員に仕事を好きにさせるには~

 この標題についてコラムを書かせてもらってきたが、今回で最終回。考えてみると、デキる社員とはどういう社員なのか。それは一言で言えば、組織目標の達成の役に立つ社員のことであるが、そうなると、組織目標によってデキる社員の要件もそれぞれだということだ。つまり、当たり前のことだが、社員に求められるスキルというものは、組織目標によって変わってくる。極端な話だが、現状維持を最大の目標とする組織なら、いかに、退屈な日常に文句を言うことも疑問を感じることもなく時間を潰すことができるかというスキルが、非常に重要になってくる。いや、何もこのスキルはこうした停滞組織だけに必要なものではなく、変化の大きい革新的な組織においてすら、相当程度求められるスキルだ。世の中そんなに、毎日間断なく刺激に満ち溢れた組織など存在しないのである。

 デキる社員は、組織目標の実現に資する高いスキルを持っている。これはまず第一条件だろう。しかし、この高いスキルも発揮できないのでは宝の持ち腐れだ。よく専門スキルなどというものも語られる。語学力とか技術力、あるいは財務や法務のスキルのことである。しかしこういうスキルというのは、個人の知識として完結して持っていても組織の中で生きることはない。こうしたスキルを組織の中で活かしていくには、周囲の人間のニーズを意識しながら、相当に修正していかなければいけないのである。そのために、デキる社員にはそうしたニーズを感知する能力と周囲の人間への影響力、つまりリーダーシップと協働性の高さが必須ということになる。

 要約すると、デキる社員とは組織目標に資する高いスキルを持っていて、周囲のニーズに敏感であり、リーダーシップと協働性に富んだ社員であるということになる。では、どうしたらそういう人材をつくれるのか。それについてはこれまで、いくつかの要素に分けて論じてきたわけだが、それは僕の一つの考え方であり、絶対的なものではない。ただ、今回はまとめだから一つ絶対的なことを挙げるとすると、デキる社員というのは、例外なく仕事が好きだということである。勿論、仕事というのはつらいことや難しいこともあるから、趣味で旅行でもしているかのような、気の抜けた、ひたすらに楽しいというものではない。しかしデキる社員というのは、そうしたつらさや緊張感も含めて仕事が好きなのである。こういうタイプの人間は、社会と関わっていること、自己と他の間で刺激を与え合い、お互いに貢献し合い、認め合うことに生きがいを感じるし、そういうことが楽しいし、好きなのである。つまりこうした人間は、孤立しておらず社会的なのだ。

 よって、デキる社員をつくるということは社員を社会的にするということである。そしてこれは、実は子供を育てる目標とまったく一緒なのだ。子供を育てるというのは、まさしく子供が大人になって社会でちゃんとやっていけるようにすること、つまり社会的な人間をつくることなのである。

 子供を社会的に育てるにはどうするか。当たり前のことだが、まずは子供を社会に置くことが大切だ。内に囲ってはいけないし、大人がつくった大人の世界に子供を置いてもいけない。子供同士で自然発生する社会の中にできるだけ子供を置く必要があるのである。そして一見矛盾するようだが、子供は放任してはいけない。親は子供に常に関心を持ち、必要な手助けは行わなければいけないし、危険からの防御も行わなければいけない。よく過干渉はいけないと言うが、あれは親が自分の願望を子供を通じて叶えるために、子供のやることに干渉することである。それは確かに駄目だろう。けれども、子供が自分の願望を叶えようとすることを親が手助けしてやることは、親の愛情と子供に対する関心の表れであり、これが無ければ、子供は怖くて社会には飛び出していけないし、挑戦もできないのである。

 デキる社員を育てるということも、基本はまったく同じだ。まず社員を社会的にしなければいけないのだから、社会を用意しなければならない。あまりに効率と利便性だけを重視した職場環境だと、社員はデキるようにはならない。また、社員がお互いのやりたいことを実現するためのサポートが得られるという、安心感のある職場環境が必要だ。

 結局、社員をデキるようにしたいなら、人間が重視され、大切にされる組織をつくれば良いということなのである。上に立つ者が、自分では叶えようもない夢を社員を通じて叶えようと社員に過干渉をしている組織では、人は育たないのである。

 
 

プロフィール

インターナップ・ジャパン株式会社
代表執行役CEO 奥野 政樹(おくのまさき)

<略歴>
1988年 早稲田大学法学部卒業
1988年 日本電信電話株式会社入社
1992年 会社派遣によりニューヨーク大学法科大学院へ留学
1994年 ニューヨーク州弁護士資格取得
     帰国後、数多くの国際M&Aプロジェクトで交渉を担当
2003年 インターナップ・ジャパン株式会社へ出向
2006年 同社代表執行役CEOに就任、現在に至る

同じカテゴリのコラム

キーワードからコラムを検索する