企業と地方の「人がいない」を解決する~地方創生テレワーク&BPOという選択肢~

第36回

BCPとBPO──災害に強い企業の新常識

株式会社aubeBiz  酒井 晶子

 

はじめに──「もしも」の時に、仕事を止めない体制を作っておく

自然災害が身近なものとなっている昨今、「もしも」の事態にどう備えるかは、経営において避けては通れないテーマとなっています。
BCP(事業継続計画)という言葉も、今や特別なものではなくなりました。
しかし、「重要性はわかっているけれど、何から手をつければいいのか」「立派なマニュアルを作っても、いざという時に機能する気がしない」というのが現場の本音ではないでしょうか。
10年以上フルリモートで多くの企業様をご支援してきたなかで、私たちが気づいたことがあります。

BCPとは「いざという時のための備え」ではなく、「いつもの業務をどう定義し直すか」という切り口で捉えるのが正解ではないでしょうか。

それは、日常のなかでいかに「属人化」というリスクを削ぎ落とし、「離れていてもつながり合える構造」を作っておけるかという、経営の設計そのものだと考えています。

1. 「そこに行かなければならない」というリスク

震災やパンデミックを経て、私たちが痛感したのは「場所への依存」が組織にとって大きなリスクになり得るという事実です。

・「事務所にしかない紙の資料」
・「そのPCでしか使えないソフト」
・「その人に聞かないとわからない手順」

これらが積み重なっている状態は、有事の際、一瞬にして業務をストップさせてしまいます。
もちろん、経営者の中には「顔を合わせることで生まれる熱量こそが大事だ」と考える方もいらっしゃるでしょう。
その想いは痛いほどわかります。
しかし、「オフィスに行けない=仕事ができない」という構造は、有事においては、働く人にとって大きな心理的プレッシャーになりかねません。
自分の身の安全や家族の心配をしながらも、「会社に行かなければ迷惑をかけてしまう」と焦燥感に駆られる。そんな状態は、私たちが目指すウェルビーイングとは程遠いものです。

BCPの本質は、物理的な拠点がダメージを受けても、あるいは誰かが一時的に動けなくなっても、「仕事という営みが止まらず、誰かの無理に依存せずに回り続ける状態」をいかに平時から作っておけるかにあるのではないでしょうか。

2. BPOが「バックアップ」として機能する理由

自社でBCP対策を行うハードルが高い場合の選択肢の一つが、BPOを利用することです。
単なる「外注」として業務を切り出すのではなく、組織の機能を分散させ、ネットワーク化しておく。
これが、有事に強い組織をつくるための新しい戦略になると感じています。
BPOを導入し、外部のプロフェッショナルチームと連携することで、次のような効果が期待できます。

拠点の分散化: 自社のオフィスとは別の地域に住むリモートワーカーに業務を委託しておくことで、特定の地域が被災しても、別の拠点で業務を継続できる「分散型」の体制が自然と整います。
業務の「ブラックボックス化」の解消: BPOを導入するプロセスでは、必ずマニュアル化やクラウド化が進みます。誰でも、どこからでも業務を再現できる状態にしておくこと自体が、有事への備えになるのです。
「人」の代替可能性の確保: 属人化を排除し、チームで業務を支える「ワークシェアリング」の構造に移行することで、万が一担当者が一時的に離脱しても、業務が止まる不安から解放されます。

「外部の人間に大切な業務を任せて大丈夫か」という懸念を持たれることもあるでしょう。
しかし、実際には徹底したセキュリティ教育を受けたプロフェッショナルがチームで対応するほうが、情報の管理レベルが格段に上がるケースも多いのです。

3. 災害時にこそ発揮される「つながり」の力

東日本大震災の際、被災地に住むメンバーがぽつりと漏らした言葉が、今でも忘れられません。
震災直後、彼女は「仕事があることで救われた」と話してくれました。
もちろん、安全確保が最優先ですが、生活が非日常に包まれるなかで、「いつもの仕事がある」「オンラインでつながっている仲間がいる」ということが、明日へ向かうための活力になったといいます。
これは、テレワークとBPOを組み合わせ、一人ひとりに役割を分散させている組織だからこそ、無理なくたどり着ける「組織の強さ」なのだと感じています。

経営者にとってのBCPは「事業を守ること」ですが、働く人にとってのBCPは「自分の居場所と役割を守ること」でもあるのではないでしょうか。
「いざという時も大丈夫」という安心感。それがあるからこそ、社員はプロとしての誇りを持って、自律的に動き続けることができるのだと考えています。
そこには、強制された義務感ではなく、「自分たちの組織を支えたい」という能動的なマインドが宿ります。

4. 「守り」を「攻め」に変える設計図

BCPのためにコストをかけるのは、少し重たいと感じるかもしれません。
しかし、BPOを活用して業務を整理し、テレワーク環境を整えることは、単なる「備え」に留まりません。
それは、日常の生産性を劇的に高め、「人材不足」という課題を解決するための「攻めの戦略」でもあります。
例えば、業務を切り出してマニュアル化する過程で、それまで誰も気づかなかった「無駄な工程」が浮き彫りになることがあります。
また、優秀な外部人材をチームに迎えることで、社内にはなかった新しい視点や専門スキルが持ち込まれます。
「もしも」のために作った仕組みが、実は「今」の現場を楽にし、働く人の笑顔を増やしていく。
そんな相乗効果こそが、これからの時代に求められる経営のあり方だと考えています。
不確実な未来に怯えるのではなく、変化に耐えうる「余白」を組織の中に設計していくこと。
それが結果として、企業の競争力を高めていくのではないでしょうか。

おわりに──「共に生き抜く」という意思表明

BCPに取り組むということは、単に「会社のシステムを守る」ことではありません。
それは、「どんな状況になっても、あなた(社員や顧客)を路頭に迷わせない」という、経営者としての意思表明に他ならないのではないでしょうか。
すべてを自社で抱え込み、誰かの「頑張り」に依存して事業を継続させる時代は、もう終わりを告げようとしています。
外部の力を借り、仕組みで守り、ネットワークでつながり合う。
その強固でありながら柔軟な構造こそが、不確実な未来を共に歩んでいくための土台になると信じています。経営とは、一人で背負うことではなく、信頼できる誰かと手をつなぐこと。
そう考えるだけで、BCPという重たい課題も、未来を切り拓くためのワクワクする設計図に見えてきませんか。

次回は「二拠点生活とテレワーク──移住・関係人口の新しい形」
有事に強い「分散型」の暮らしと仕事。その先にあるのは、都市と地方を自由に行き来する、新しいライフスタイルの提案です。テレワークが描く、新しい「住まい」と「働き方」の未来を考えます。


 

プロフィール

株式会社aubeBiz(オーブ・ビズ)
代表取締役 酒井晶子(さかい あきこ)

兵庫県出身。繊維メーカー、外資系企業、広告代理店勤務を経て、これまで3000名以上の研修企画、採用・人材育成に携わる。

2011年に全員がフルリモートで働く組織構築に携わり、様々な事情で外勤が難しい人が在宅で起業家をサポートする「在宅秘書サービス」を展開。

2022年 株式会社aubeBiz設立。サービス名称をMy Back Office®に改め、秘書業務に限らず、あらゆるバックオフィス業務や各種サポートをワンストップで提供。

著書に、電子書籍「女性を活かす組織作りの教科書」「リモートワークで人も組織も伸びる」「0から始める地方創生テレワーク」等。


Webサイト:株式会社aubeBiz

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