よどみのうたかた

第45回

コロナ禍より厳しい? 中小飲食店の経営環境

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 

いよいよ年度末。卒業式や入学式、入社式の時期であり、人事異動も多い。いま住んでいる静岡市内の集合住宅でも、連日引っ越しが行われている。

これに伴って、送別会も増えてきた。静岡に来て3年半になるのだが、2~3年周期で異動する人が多いせいか、一緒に仕事をする人たちもだいぶ入れ替わった。わずか3年半だが、仕事仲間の中では長く居るほうだ。そんなこともあって、送別会の幹事を頼まれることが増えている。

幹事は、日程調整や場所取り、参加者への連絡などいろいろと作業が多い。そんな中で、今年は場所取りに苦労している。よく会場にしていた店のいくつかが相次いで閉店してしまっていたからだ。

3年半前に来た時はちょうどコロナ禍が終わり、送別会のような会合が久しぶりに再開された頃だった。その頃も、閉店した店が多かったと聞く。そんなコロナ禍を乗り越えた店も、ここにきて閉店するケースが増えているように思う。たまたまなのだろうか。

そんなことを考えていたところ、実態がわかる統計調査をみつけた。帝国データバンクの「『飲食店』の倒産動向」だ。それによれば、2025年の負債1000万円以上の法的整理による倒産は900件で、それまで最多だった昨年を上回り過去最多を更新したのだという。やはり“ここにきて多かった”のだ。

倒産した飲食店の中では居酒屋などの「酒場・ビアホール」が多いという。これに、ラーメン店や焼肉、カレー店などの「中華・東洋料理店」「日本料理屋」が続いた。いずれの分野も過去最多の倒産件数だという。

ただ、負債総額は前年を大きく下回り、8割近くが小規模倒産(負債額5000万円未満)だという。大手のチェーン店などは、コロナ禍を機にセントラルキッチン化や大規模化によるスケールメリットの追求、インバウンドの取り込みなどをはじめとした集客拡大策も進めて好業績を実現しているところも少なくない。

コロナ禍後の飲食店倒産は、そうした改善が難しい、あるいは遅れた中小規模の事業体で多発している、ということらしい。

コロナ禍は、消費者の行動変容を促した。送別会や忘年会のような会合も、コロナ禍前ほどは開かれていないようだ。接待などはよりはっきりと減ったように思う。

一方で、光熱費や原材料費、人件費、家賃、金利などは上昇し続けている。にもかかわらず、飲食業全体の価格転嫁率は32.3%と、4割に迫る全業種平均を大きく下回っている(「『飲食店』の倒産動向」より)。

多くの中小飲食店には、コロナ禍時の特例貸付の返済なども重くのしかかる。今後、食料品の消費税が下がれば、外食と内食(家庭での料理)の価格差も増す。景気動向にもよるが、中小の飲食業は極めて厳しい経営環境下に置かれているのだ。

今後の先行きはよく見えない。というか、米国とイスラエルによるイラン攻撃もあり、良くなる気がしない。有事のドル高、ということで円安に振れる中、原油価格は急高騰している。一バレル150ドルあたりまでは上昇するとの見方も出ている。

それ以前に、日本に原油を運ぶタンカーの8割はホルムズ海峡を通過するが、ここが事実上封鎖されると、そもそも原油の供給はどうなるのだろう。いずれにせよ、こういうのが長引けば経営環境はさらに厳しくなる。

米国を巡っては、イラン攻撃もそうだが新関税もどうなるのかもよくわからない。11月には中間選挙があり、トランプ大統領はそれに向けて人気をとりにいくのだろう。

これまでのところ、トランプ関税やイラン攻撃はあてがハズれて支持のアップにはつながっていない。通信社によるイラン攻撃についての米国内での世論調査では、賛成が27%なのに対し、反対は43%だったという。これじゃ、手柄が足りない。じゃあどうするのだろうか。米国以外のことは考慮しないだろうから、次の手も怖い。

変化はチャンスだというが、金融商品関連の投資と違い、飲食業も含めた実業は変化への対応に手間と時間、費用がかかる。帝国データバンクの調査はイラン攻撃等による影響を盛り込んだものではないが、調査レポートは、経営環境の厳しさを背景に「(飲食業の)倒産件数は、高止まりすることが見込まれている」と予想している。困った話だ。

 

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