よどみのうたかた

第49回

激変する電子機器、メーカーも店頭も様変わり

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 

仕事でICレコーダーとかボイスレコーダーなどと呼ばれる小さな録音機をよく使う。会議や取材などの様子を録音するためだ。

仕事をはじめた35年前はカセットテープ、その後マイクロカセットのタイプも使ったが、2000年ごろからはICレコーダーばかり。当初はソニー製を使ったが、録音データのファイル形式に対応できるパソコンがなくなり、東芝製に変えた。東芝製の記録媒体はミニSDだったので、ミニSDの入手が難しくなったころ、今度はマイクロSDを記録媒体にした三洋電機製に。この機種が老朽化したために、機能的にはほぼ同等のオリンパス製に替え、これを使っていた。

しかし、これを先日紛失した。いろいろ探したが、見当たらない。2日後にはICレコーダーを使う用事があったので、通販では間に合わないとみて、店頭で購入しようと電器店を訪ねた。

ところが、2、3店ほどみたが、そうした商品は置いてない、とのことだった。確かに、無くてもことは足りる。というか、スマホにもそうした機能があるため、専用機はもはや不要になった、ということらしい。

仕方なく、売ってそうな近隣の店舗をネットで探し、片っ端から電話した。そして、店頭在庫があるという店舗を見つけた。東京とかと違い、地方都市ではこういうモノを探すのも一苦労だ。

店は中心市街地の民鉄駅に接続するショッピングモール内の電器店。全国展開する大規模チェーンの店舗だが、郊外店と違って白物家電は少ない。オフィス街も近いためか、パソコンやスマホなどの情報機器を中心とした品揃えになっているように思えた。

ICレコーダーは、この店舗の隅の一角に置かれていた。とはいえ、10品種ぐらいはあっただろうか。置いていない店が多い反面で、その店は充分な品揃えといえる。

商品は、3000円ぐらいのものから数万円のものまであり、機能もいろいろ。AI搭載で翻訳やオンライン文字起こしに対応するものや、音楽などの録音に対応する高性能モデルなどもあった。が、7000円ほどの従来とかわらない会議や取材の音声録音用を購入した。

そうした機種はアイワブランドとOMシステムブランド(OMデジタルソリューションズ製=オリンパスの元事業部門)のものしかなかったので、今回はアイワにしてみた。アイワは日本の伝統的なオーディオ機器ブランドだか、創業してしばらくしてからソニーグループ入りし、その後ソニーに吸収されて同社のブランドの一つになったが2008年に廃止された。現在のアイワは、このブランドを取得した別法人の製品だ。

筆者は2000年代初頭にソニーがアイワを吸収すると発表した記者会見に出席した。その時のことを思い出した。

アイワは1990年代の末に過去最高の業績をマークしたが、当時急速に進みはじめたデジタル化への研究開発投資が遅れ、その数年後には自力で再建できないほどの経営不振に陥った。この結果がソニーによる吸収だった。

その当時のアイワも、こうしたICレコーダーなどを手掛けていた。いまでは、会議の録音やスナップ写真などはスマホで充分ではある。このため、簡易型のデジタルカメラやICレコーダーはスマホに駆逐された格好だ。要は、専用機をわさわざ買わなくても、スマホでことは足りる。わざわざ専用機を買うなら、ネット通販が便利で選択肢も広い。急いでなければそうしたと思う。通販サイトを覗くと、中国を中心とした海外の聞いたことのないブランド商品が盛りだくさんで、価格も1000円程度からある。仕事で使うので、そうした商品を選ぼうとは思っていなかったが…

そんなわけで、あえて専用機を探してまで店頭で購入。その製品がアイワブランドだというのは感慨深い。そして、この話にはしょーもないオチがある。

購入した翌日、記者会見を録音しようと会場に持って行った。上着のポケットに名刺を出そうとして手を入れると、なんと紛失したはずのオリンパス製ICレコーダーが出てきたのだった。真っ先に探した場所だったが、その時は気が付かなかったようだ。

というわけで、現代においては過去の遺物のように思われているICレコーダーが2つになった。次に無くしたり故障したらもう購入できないかもしれない、と思うと決して無駄な買い物ではない。そう思うことにした。

 

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