第51回
図書館は確実な情報担保する“砦”
イノベーションズアイ編集局 経済ジャーナリストA

財源不足が判明したことから整備計画を見直すことになった静岡県立中央図書館。 6月中旬には新たな基本構想を検討する有識者会議が開かれた。
県はこの会議で、県内のどこからでも利用できるサービスの充実を掲げ、県内の市町にある図書館を通じた配送サービスの拡充や電子書籍の充実など〝非来館〟サービスを強化する方向性を示した。
この図書館の整備計画を巡っては、県が国からの交付金の見通しを誤ったことから約100億円の財源が不足することになり、計画の見直しが迫られている。県は、当初の豪華な図書館ではなく、シンプルな建屋で機能を果たすことを目指したい考えだ。
こうした、図書館の整備計画を巡る議論は全国でも増えている。県内の市町でも度々行われてきた。
県内の伊東市では昨年5月の市長選で新図書館の整備計画が争点となり、計画の廃止を訴えた田久保真紀氏が初当選。建設工事の入札や国の交付金申請を見送った。
田久保氏はその後、学歴詐称疑惑で市議会が2度の不信任を決議して失職。これを受けて行われた市長選に立候補するも落選したが、図書館整備計画は廃止されたままになっている。
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本など紙の印刷物は減少し続けているが、図書館の数は2021年時点で全国に約3400あり、過去最多の状態だという。
全国の図書館の利用者数は合計で1億5000万~1億8000万人という規模だが、こちらは2010年ごろをピークに減少を続けている。この背景には、インターネットの普及やマンガ喫茶などの増加があるとされている。特に、インターネットの普及は本や雑誌、新聞といった紙媒体の減少にも拍車をかけている。これに伴って、書店なども減少している。
こうした状況下で、図書館は触れる機会が減少していく紙媒体を集積する貴重な存在でもある。とはいえ、図書館の役割や求められる機能という点では、必ずしも多様な書籍に触れ、それらを読むための場という伝統的なものだけではなくなりつつあるようだ。
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前述の計画が見直される静岡県立中央図書館や計画が廃止となった伊東市の新図書館は当初、本来の図書館としての機能に加え、交流人口の拡大など地域振興も視野に入れた豪華で多機能なものだった。
ただ、利用者が減少傾向にある中では、図書館を作ること自体にもいろいろな意見がでてくる。しかも、聞こえてくるのは両極端な意見ばかりだ。
例えば、静岡市内の50代の男性飲食店経営者は「図書館なんで必要なんですか?。行ったこともないですが、何十億円とか何百億円とかを使って図書館を作るなんて無駄だと思う。そのお金で税金とか水道料金とかを下げるべきだ」という。
別の静岡市に住む40代の女性飲食店経営者は「豪華なものは要らないけど、図書館は絶対になくてはならない。スタジアムとかアリーナはなくてもいいが、人類の経験や知識の記録に誰もが接する場である図書館がないのはよくない。私は図書館でそういう書物を読むことはなく、ミステリー小説専門ですけどね」という。
こうした声は、いずれも図書館が〝紙の本を読むところ〟であることを前提にしている。しかし、図書館を情報の集積拠点とするなら、これからも紙情報だけでいいとは思えない。というのも、情報媒体はかつてないほど変化している。この変化を無視するのはダメだと思うからだ。
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公共図書館の利用者は、40~50代の子育て世代と60代以上のシニア層が中心だという。特に、平日の日中はシニア層がコアユーザーとなっているところが多く、歴史書や郷土資料、小説などがよく読まれているとか。これは、紙媒体の読者層とも一致しており、現行の多くの図書館の機能からすれば当然の結果だろう。そして、こうした機能や利用者は図書館にとって極めて重要なもので、だから現行の図書館が存続しているように思う。
反面で、現代人が情報を得る手段はこの30年ほどで大きく変化した。
2000年ごろまでは専門的な知識を得ようと思ったら図書館で専門書や専門誌に目を通すのが普通だった。が、いまやインターネット経由で高度に専門的な情報が得られるようになった。それこそ、図書館の蔵書よりも遥かに大量の情報がネット上にあふれている。
ただし、ネット上の情報は玉石混交で、情報の真贋は今後ますます難しくなることだろう。その点、図書館には原典がある。郷土資料的なものをはじめ、電子化されていない情報の宝庫でもある。
情報収集の初期段階ではネット上でAIなどを活用してあたりをつけることも多いが、いずれかの段階で確実な情報にアクセスする必要がある。専門家に話を聞くこともあれば、図書館や資料館で原典にあたることもある。図書館は、そうした確実な情報を担保する最後の砦。私見でいうなら無くてはならない存在だ。
とはいえ、利用者が減少する中では今後も維持運営上の課題が続出する可能性は高い。静岡県立中央図書館の見直し議論にもあるが、デジタル化を含めた〝非来館〟でも利用できるサービスの拡充は将来に向けた図書館存続のカギかも知れない。
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