Catch the Future<未掴>!

第95回

未掴は「構想して掴む」時代になる

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤伸夫

 



本コラムのタイトルは「未掴」つまり「未来ではない」との主張です。未来は今来ていないけれどそのうち来る、みんなに来るものですが、未掴は掴まない者には得られないという趣旨で命名しました。生成AIの発展・浸透で、それがもう一段レベルアップしたと考えられます。「掴む者」の上に「構想して掴む者」が存在するようになったのです。今回はこのことについて考えていきます。



産業革命期における2階層の成功者

未掴というタイトルの裏には「今は産業革命期だ」との意識があります。18~19世紀の産業革命期に何が起きたか。蒸気機関や鉄鋼製の(木製とは比べものにならない)大規模・精密機械(非人間労力)の導入で、工場制手工業者が消失しました。

もともとの工場制手工業者は、新たに生まれた機械制大工業者になれる一番の優先切符を持っていたはずですが、多くはその切符は使わず工場制手工業にこだわって次第に淘汰されてしまったのです。

また工場制手工業における職人などの中には「機械が私たちの仕事を駆逐している。打ち壊して仕事を守るしかない」とラッダイト運動を起こし、これらの者も未掴を捉えられませんでした。

一方で工場制手工業における職人のうち少なからぬ者は、機械制大工業の担い手となりました。彼らは優先切符を持っていませんでしたが、自らの工夫と努力で未掴を掴んだのです。


ここで一つ注目したいのは、機械制大工業の担い手が均一ではないことです。細かく分類すればキリがありませんから2つのパートに分けると「自らの工夫により新しい機械、新しい生産体制、新しい製品と用途などを作り出して新市場を作り出し者(フロントランナー)」と、「それらを模倣した者(フォロワー)」です。

当然、後者よりも前者の方が得られる利得が大きく、それゆえ進化のエネルギーが高まるのですが、ポジションは固定的ではありません。昨日はフロントランナーだった者が今日はフォロワーになってしまう、その逆も真なりです。

日本における代表例として豊田佐吉が挙げられるでしょう。最初は海外から輸入された自動織機の模倣でしたが、次第に自らの工夫をプラス、世界に負けない自動織機を開発しました。それから得た莫大な資本で自動車産業にも進出、日本を代表する会社、世界中に知られる自動車メーカーに成長することができたのです。



現代のトップランナーと成功のカギ

18~19世紀に起きた「非人間労力活用」としての産業革命においても受けるメリットの大小違いが生じたとするなら、現在に進行中である「非人間脳力活用」としての産業革命においても受けるメリットに違いが生じる可能性があること、理解できると思います。実際にその実例を、私たち自身が目にしています。

現在に最もメリットを受けている者の典型例として挙げられるのは、生成AIを開発する一部の企業群です。黎明期には先行者が一社、他は二番煎じに見えましたが、今では特徴を打ち出し独自分野のトップとなっています。

現在(2026年7月)時点でホットなのはネット上の脆弱点を素早くあぶり出せるアンソロピックのクロード・ミュトスでしょう。当社はオリジネーターからのスピンアウトで「何か独自路線を切り拓けるのだろうか」と疑問に思っていた人が多いのではないかと思われますが、今では生成AIの一境地を確立しており、その影響力から一般公開が制限されているほどです。


18~19世紀の産業革命と現代の産業革命で、大きなメリットを受ける者に共通点があるか。「構想力を働かせた者である」ことが挙げられます。以前の産業革命期では「今まで工場製手工業で行っていた機織りに蒸気機関や金属製の大規模・複雑・精密な機械設備を取り入れる」に止まらず「自動車生産にコンベアを使う流れ作業を取り入れる」や「電力の供給とそれを使う電灯や電気製品をセットで供給する」あるいは「鉄やコンクリートを使った巨大橋梁を建設、今までは渡し船を使うしかなかった地域を地続きで繋げて都市を飛躍的に発達させる」などという構想力を発揮した者が産業革命のメリットを最大限に享受し、時代のリーダーとなったのです。

現在の「非人間脳力を活用する産業革命」においても、構想力を発揮する者が大きなメリットを手に入れ、時代を強力に引っ張っていくでしょう。

現在でも既に指令さえすれば休むことなく作業を続ける特性を生かして縦横無尽に検索して多種多様なデータを収集・検証して莫大なデータベースを構築、今までは扱うことのできなかった無数の選択肢を検証して目的に適った選択肢を見つけ出す、あるいは今まで目的としていなかった有用性を見付けて実現化するアプローチで成功を勝ち得ている者がいます。


その道が幅広く開かれていることが、現代の産業革命の「すごい」ところです。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>

https://www.innovations-i.com/panf/id/?id=855



【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/index.php/contacts/




なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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