第82回
成長エンジンに乗る決意を固める
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤 伸夫

2026年の幕が開きました。今年をどんな年にするか?昨年末12月19日に日本銀行が政策金利を引き上げたことについてさまざまな受け止めがある中、これをどのように受け止めるかの姿勢で企業の行く末が変わる、未掴を掴めるものと掴めないものとの差が出ると考えられます。今回は成長エンジンを捉える姿勢について考えます。
政策金利引上げの動機と日銀の立ち位置
政策金利引上げの動機として第1に挙げられるのは金融システムの維持です。政策金利が抑えられたことで金融機関の収益性低下と弱体化が顕著になっています。金融商品売上や付帯サービス収入のある金融機関は好調ですが、預金を原資に企業や家計等に資金を貸し付ける(間接金融)収益は非常に低い水準に留まり、赤字の機関もあります。
特に地域での弱体化が懸念され、このままだと地域から金融システムが崩壊していく可能性も考えられます。自助努力も促しながら、一定の金利水準を実現できる環境整備を狙ったと考えられます。
第2は、円の信認に係る側面です。円安傾向が恒常化すると、どうなるか?負のスパイラルが発生し、歯止めが効かなくなる可能性があります。原油や食品など基礎的物資のかなりの部分を輸入に頼る日本では、円安で実質コスト(円で支払う価格)が高まると、国内の留保がどんどん失われ競争力が弱まってしまう、それがまた円安を加速させていくと考えられます。資金が必要となる為替介入で対応するよりも、金利でもって資金の流入を促す必要性を感じたのではないでしょうか。
一方でこちらの効果は疑問視せざるを得ない状況です。日本政府による「責任ある積極財政」に懸念してか、政策金利引上げ発表直後に円安に振れる動きがありました。
このような状況もあって「日本経済が未だ万全とは言えない状況下で利上げを行うと、不調な中小企業や中流以下の家計に不利だ。日本銀行はこれらを切り捨てるのか」という声が聞かれます。「日銀は特定層に有利な選択をしたのではないか」との見方が生まれてしまうのも、無理からぬことなのかもしれません。
しかし上に示したように、日銀の動機は金融システムと円を守ることにあります。「弱い主体に配慮して金利を上げない」ことで通貨の信認と金融システム安定を後回しにすると、もっと手痛い状況になるとの判断だと考えられます。
従来の再解釈と、成長エンジンへの期待
「日本経済がもっと手痛い目に会うとはどういう意味か?」それは「低収益・低成長で仕方ない」意識が浸透し、実際に低収益・低成長が常態となることです(失われた10年、20年、30年)。この意識・状態による日本経済への影響は、実はリーマンショックなど甚大だが一時的な景気後退よりもはるかに大きいものです。
どんなに大きな景気後退でも時間が経てば回復でき、世界的な序列が乱れることもありません。しかし低収益・低成長を許容する意識が蔓延して常態化すると回復できません。国際的にも序列が低下してしまい、(少なくとも経済側面をベースとした)国民の幸福度も大きく低下します。
その裏で何が起きているか?金利が低いと「これくらい儲けなければビジネスの意味がない。事業にお金を使うより、銀行で運用した方が良い」というハードルが、極めて低くなります。
このため生産性向上への意欲が失われて改革が行われなくなる一方で、生産性向上に努めない企業にも「居場所」ができて退出しない、需要が弱含みの環境下、新たなプレイヤーも登場しにくいという弊害が生じます。その結果、賃金は上がらず、若い人材は挑戦の場を失い、成長分野への投資も滞ります。
このように考えると政策金利の引き上げは「日本経済を活性化しよう。企業も『もっと儲けよう』との意識を高めていこう」との成長エンジンになり得ます。
「しかし、高金利は投資意欲を減殺するぞ。」では、これからは付加価値を生む事業を加速させる投資を、よく考えた上で、固い意思と実行力でもって実施しましょう。今までは「やらないより、やった方が良いな。金利も低いし、とりあえず投資しておくか」で良かったかもしれませんが、これからは儲かるビジネス、筋肉質な事業体質を身に着けられる投資を行うのです。
現在、政府も「自らを活性化しようとする企業」を強力に応援する姿勢でいます。「年商100億円企業創出」は、その代表格です。その一環として準備された「成長加速補助金」の採択者として、100億円に一歩届かない現状70億円から80億円の企業よりも50億円を割り込む企業、思い切った成長案を策定して実現を目指す企業が多く採択されています。
2026年の初頭にあって「環境が厳しいので何もできない」ではなく「だからこそ打開していこう」という気概でスタートしたいと考えています。
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なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。
プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。
独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。
現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。
【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions
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