Catch the Future<未掴>!

第76回

生成AIがもたらす革命的変化に対応する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



生成AIの進歩スピードはすさまじいものです。これが私たちの生活や仕事にどのような影響を与えるか?「生成AIによって駆逐される職業があるようだ。」よく聞く言葉ですが、それ以外の意味合いも踏まえた方が良いと思われます。今回は、このことについて考えていきます。



人を残すにしても機械との共存は必須だった産業革命

生成AIは、例えば文書作成なら(一般ユーザーのレベルでは)、昨年はまだ「人が作成した文章をチェックする(作り手として間違いがないかチェックする。読み手として外してはならないポイントを指摘する、あるいは自分に不利な条項がないか確認する)」程度だったとの認識ですが、今は専門的文章でも「下書き」以上のレベルで提供されていると感じます。

以前ならこのレベル文章を書ける人は「有能な専門職」と認められたでしょうから、生成AIがこれらの仕事を奪うのは時間の問題と感じます。


「そうはいっても、特定事例にマッチした文章の作成や確認は人間にしかできず、今後も変わらないだろう。つまり生成AIを入れる必要もないということだ。このように考えると、あまり影響はないのではないか?」このような意見があることも確かです。但し、それはもしかしたら自分を窮地に陥れることになるかもしれません。

このことは、産業革命期の蒸気機関の導入を例にすると、理解できると思います。一部の資本家は積極的に導入しましたが、導入に及び腰だった人たちもいました。ラッダイト運動に参加した労働者だけではありません。

「蒸気機関が人間による作業全てを肩代わりできる訳ではない。代われたとしても、人間の方がはるかに品質が良かったり、そもそも蒸気機関を使う機械ではできない作業方法等もある。導入しないという選択肢もあると思われ、私はそれを選択する」と決めた資本家もいたでしょう。このような企業はどうなったか?大半は遅かれ早かれ淘汰され、今は残っていません。


最高度に発展したのは、人間の考えでもって機械の活用度を向上させた企業です。機械が実現する生産性を活用しながら、人間しか使えない技術や品質を実現するにはどうすれば良いか、知恵を出し切ったのです。機械を否定することなく、その手を借りながら人の知恵に拍車をかけることが、当時の生き残り策だったと言えます。



生成AIで誰でも「思考の壁打ち」ができる破壊力

「それは『今既に、優れた思考で知られた人以外はAIを使わなければ対応できない』という意味に聞こえる。」はい、そのような展開になると考えられます。「しかし生成AIを使うと自分の頭で考えられなくなる。結局、全ての人が生成AIの奴隷になるのではないか?」そうとも限りません。生成AIの使い方次第だと思われます。


生成AIの特徴は何か?一口で言うと、人間の発した質問に対して、インターネット上の情報をもとにアルゴリズムに従って合理的に返答してくれることです。この特徴は「常識外れな考えを検証する」という場面で、この上ないメリットを与えてくれると感じています。

常識とは異なる意見について意見を求めると、人間なら「そのような常識外れの質問には答えられない」と返されることが多いでしょう。返事が返ってきても、常識の範囲内での返事に終始することがほとんどです。


しかし生成AIなら常識外れの意見について、ネット上の膨大な情報を合理的に処理して返事を返してくれます。万一こちらの考えを理解せずに返事したとしても、生成AIは「相手の意見は常識外れだから」と価値判断を下したからではなく、単に質問者の表現が誤解に繋がりやすかったから誤解したに過ぎません。丁寧に説明したら、質問者の意図を汲んだ上で検証や発展の意見を提供してくれます。

質問者の「常識外れ」に対して生成AIが「それなら私も合理的思考ではなく、めちゃめちゃに答えてやれ」と対応することもありません。あくまでもインターネット上の情報をもとに、仕組まれたアルゴリズムに従って答えてくれます。


このような「思考の壁打ち」は、今まで普通の人には困難でした。「自分のどんな考えでも理解して、思い込み等も持つことなく、広範な情報をもとに合理的な思考で返答してくれるパートナー」を持てるのは、一部の特権階級しか望みようがなかったのです。

しかし今は誰でも生成AIを相手に思考の壁打ちを行うことで、常識の壁を越えていくという破壊力を手にすることができます。


その姿は産業革命以降も人間技で生き残った企業の姿に通じると思われます。これら企業が生き残れたのは、蒸気機関等を活用しながら人間技を磨いたからであるのと同様、AIを活用して自分の思考を最高度に磨き上げられた人が、今後に輝けるのだと考えられます。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


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なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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