Catch the Future<未掴>!

第19回

中小企業もイノベーションの主体になれる

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



日本にどのようにしてイノベーションを活性化するかについて考えているところです。前回まで、これから国単位でイノベーション活性化を目指す場合の産業構造について考えました。今回から、イノベーション実現の担い手について考えていきます。今、中小企業に、イノベーションの担い手になれる道が拓かれています。



イノベーションの担い手

イノベーションを語る時、これまでは「中小企業の役割は小さい。なぜならば中小企業には、イノベーションに求められる技術力や資本力が乏しいから」という認識が一般的だったと考えられます。


歴史的に見ても、その認識が正しかった時期が長かったと考えられます。産業革命前期では中小企業がイノベーションを担ったでしょう(その頃には、製造業には大企業がほとんど存在しなかったので)。しかし産業革命の後期以降からIT革命の頃(1990年代から2000年代)までは主に重厚長大製造業企業がイノベーションを担っていました。


その頃のイノベーションとは「新しい製品やサービス、部材料・素材、システム・ソフトウエア等を創造する(技術革新)」を意味しており、それには膨大な原資(資金・設備・人材その他)が必要だったからです。中小企業はこの時代、ごく限られた事例を除けばイノベーションの担い手としての役割を果たす事例は非常に少なかったのです。


しかし今は時代が変わっています。製品やサービス、部材料・素材、システム・ソフトウエア等が溢れかえっており、日々新しいもの、機能が付け加えられたもの、性能が向上したもの、小型化・複合化したものが登場しています。製品やサービス、部材料・素材、システム・ソフトウエア等を一から全て自前で開発せずとも、既に存在するものを組み合わせることで「新結合」という形態のイノベーションを生み出せる可能性が高まったのです(新結合はシュンペーターがイノベーション概念を発表した当初からあり、「シュンペーターが想定したイノベーションは新結合である」とまで言えるほどです)。


このような状況からイノベーションと認められるか否かの評価も、製品やサービスが技術的に、あるいは結合として優秀だというよりも、それらによって人々の生活が変わったかどうかを基準とするようになりました。イノベーションのコストが格段に下がり、評価基準も変化したことで、中小企業がイノベーションを実現するハードルが限りなく低められたと言えるでしょう。



中小企業によるイノベーション

「製品やサービス、部材料・素材、システム・ソフトウエア等が溢れかえり、日々新しく、機能が付加され、性能が向上し、小型化・複合化していくので、中小企業でも組み合わせることで新結合のイノベーションが可能になる」、「イノベーションの評価が、製品やサービスが技術的に、あるいは結合として優秀だというよりも、それらによって人々の生活が変わったかどうかを基準とする」というと「本当か?」との疑問が生じそうです。が、実は世の中はそのようなイノベーションが多々あります。


Facebook(以下“FB”といいます)をイノベーションとして挙げても異論はないでしょう。その革新性のゆえにFBは今や世界で冠たる巨大先進企業となりましたが、開業時点では創始者ザッカーバーグが立ち上げた零細企業に過ぎませんでした。ではザッカーバーグは何を行ったのか?ソーシャルメディアネットワーク(SNS)を初めて開発した訳ではありません。ネットワーク技術を開発した訳でもありません。既に存在するネットワークや、それを利用するためのアプリケーション言語、あるいはその他の要素を新結合的に連携活用してFBを開発したのです。産業革命後期からIT革命頃までの重厚長大製造業企業によるものと比較すると段違いに「軽い努力」で、イノベーションが結実したと言えます。



中小企業がイノベーションできた理由

改めてFBがイノベーションとなった理由を考えると「人々の生活を変えたから」に行き着きます。ではなぜSNSを創造していないFBが人々の生活を変えられたのか?一つには(ここでは細かく指摘できませんが)FBの秀逸なアイデアが挙げられます。但し、それだけでは不足でしょう。


もう一つに、ザッカーバーグが結合させられる題材(ネットワークやアプリケーション言語、その他の要素)の存在が挙げられます。それ以前は十分な題材がなかったのでイノベーションは生まれませんでした。一方でその後はTwitterやInstagramなどが目白押しで出現しています。「SNSの世界で一番手のFB以外イノベーションは生まれない(親の総取り)」ではなかったのです。その後も秀逸なアイデアをもとに題材を活かせば、イノベーションは生まれています。今後も生まれるかもしれません。その主人公は大企業とは限りません。FBやTwitter、Instagramがもともとそうだったように、中小企業がイノベーションの主体になり得ます。


イノベーションは中小企業に実現できるものに変化したのです。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


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なお、冒頭の写真は写真ACから webbiz さんご提供によるものです。webbiz さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

中小企業診断士事務所 StrateCutions 代表
合同会社StrateCutions HRD 代表社員
落藤 伸夫

早稲田大学政治経済学部卒(1985 年)
Bond-BBT MBA 課程修了(2008 年)
中小企業診断士登録(1999 年)
1985 年 中小企業信用保険公庫(日本政策金融公庫)入庫
2014 年 日本政策金融公庫退職
2015 年 中小企業診断士事務所StrateCutions 開設
2018 年 合同会社StrateCutions HRD 設立


Webサイト:StrateCutions

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