共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?

第3回

私の悩みは地域のお悩みと考え“共創”する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



今回は「共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?」新コラム・シリーズをスタートさせた直接の理由からお話ししたいと思います。共創型金融というアイデアは、今回お話しする出来事から生まれました。



個社ではなんともしがたい経営課題

ある社長と打ち合わせをしていた時のことです。近況について「なかなか業績が上向かない」と話されました。「平成の半ば、まだ『失われた10年』と言われる頃までは集客に努力したらそれなりに集まってくれた。しかし今は無反応で、努力の甲斐がない。頑張ろうとのモチベーションを発揮するのが難しくなっている」とのお話でした。「弱音を吐いても良くなりません。頑張りましょう」との声を先回りして封じようとしたのか「知り合いの社長たちと飲みに行っても、似たような話ばかり。どこも同じで、みんな厳しい」とのことでした。

確かにその地域では以前ほどの活気はありません。少子高齢化と人口減少がダブルパンチとなって需要の減少を引き起こしているので、先ほどのコメントのように各店舗が集客に向けてキャンペーン等を売っても「笛吹けど踊らず」の状況となってしまい、いくら経営努力しても効果が得られないのです。このように人口減少や消費構造の変化などによる需要そのものの縮小は、一企業・経営者にはどうしようもない課題だと感じます。


その話を聞いて感じたのは「社長の悩みは、今や地域全体の悩みなのだな」ということです。先ほど挙げた人口減少などによる業績の低迷や人手不足などの現象は、一社だけに起きていることではありません。地域の多くの事業者が共通して抱えている「地域の課題」です。

そう考えると、悩みについて別の捉え方が可能になるかも知れません。自分の会社だけでは対応が難しくても、「地域として取り組めないか」という視点が持てる可能性があります。個社ならば集客のためにキャンペーン等を打つ、求人のために利用するエージェントを増やすというアプローチしかないかもしれませんが、地域で取り組むとなると、全く別のアプローチが可能になる可能性があります。それを目指してみるのです。



地域課題とすることでのアプローチ変化、姿勢変化

個社が苦しんでいる需要の低迷や人手不足などの悩みについて地域の悩みと捉えると、取組みの方向性が変わると考えられます。地域活性化というゴールに向けて「地域の魅力ある商品をもっと力強く発信しよう」とか、「共同で何かを作り上げられないか」と“共創”を考えられるようになるのです。地域に住む人々や、もしかしたら近隣地域の人々あるいは全国の人々にまで関心を持ってもらえるよう情報発信する商品、あるいはこれから開発する新しい商品のラインナップに自社商品を含めることができれば、新境地が拓けるかもしれません。


「それは可能性に過ぎない。」確かに可能性にしか過ぎませんが、個社の悩みとして取り組む場合と地域の悩みとして取り組む場合とでは、注げる資源やターゲットへのアピールが格段に異なることに注目できます。個社でキャンペーン等を打つ場合には、自分の資源(提供できる商品ラインナップやキャンペーン等につぎ込む資金等)に限定されます。顧客へのアピール度も、数多くの競合(強豪)の中で目立つのは困難かも知れません。

しかし地域の悩みとするとラインナップの幅が広がりアピール度も高まります。「足りないなら増やす」対策は、自社単独では難しいけれど、仲間を増やすというアプローチでなら可能かもしれません。そこまで努力すれば地域の商工団体や行政の協力が得られる、あるいは巻き込んで自分たちには不可能な策まで実施してもらえるよう頼めるかもしれません。


ポイントは「あきらめる理由が減ること」だと考えられます。個社で「もうダメだ、これ以上は無理」と考えるとその先に行くのは難しいけれど、地域で考えると「仲間を増やせば良いかもしれない。仲間と新たな取組みを試せるかもしれない。商工団体や行政を巻き込むと力を貸してくれるかもしれない」と展望が拓けてきます。

「失敗とは目標を達成できないことではない、あきらめることだ」という言葉があります。自社が直面する悩みは高い壁のように感じられ「あきらめるしかない」と考えがちですが、地域での共創を目指すことで、新たな境地に踏み込んでいける可能性を掴みたいと考えます。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

新型コロナウイルス感染症が収束して社会的にも中小企業金融においても「平時」に戻ったとの声がある中、今後は「共創」を目指す企業が躍進していく時代になると確信、全ての中小企業がビジョンを描いて持続と発展を目指すよう提案することとして「共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?」コラムを2025年10月からスタートさせた。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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