第84回
前提が覆る時代に生き残る方法
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤 伸夫

2020年にコロナ禍が始まって、疫病が経済や生活に大きな影響を及ぼすことに、否応なく気付かされました。その後にウクライナーロシア戦争が勃発、未曽有の資材等値上がりと極端な人手不足が生じました。さらにはアメリカでトランプ大統領が常識を超える政策を矢継ぎ早に打ち出し、前提が次々と覆される時代になっています。今回は、このような時代に生き残る方法を考えます。
先行き不透明さの原因は「前提が覆ること」
現在の状況は「先行き不透明」だと言われています。「先が読めない」と「前提が次々に覆っている」という2つの要素が絡んでおり、AIの急激な変化などから「先が見えない」ことに注意が向きがちです。
一方で振り返ってみると、今まで「先が見えた」時代など、ほとんどありませんでした。平穏に見えた時代でも、予想を超える事態が生じて翻弄されるのは当たり前だったのです。現代が「難しい時代」と感じるのは、後者の「前提が覆る」度合いの激しさが原因と結論と言えそうです。
今、多くの前提(常識)が覆っています。需要構造、価格、顧客の行動、信じていた自社の強みなどが、ある日突然に変わってしまうのです。この状況に、どう立ち向かうか。「沢山ある選択肢のうち、どれを選ぶべきか分からない」というのは錯覚で、実は意外とシンプルです。中小企業の選択肢は、実はそれほど多くありません。
先行き不透明な時代に必要な「己を知り鍛えること」
前提が覆り先が読めない時代に、企業はどうすれば良いのか?「己を知り、相手を知れば戦いに勝てる」と言いますが、この二択でどちらを優先すべきなのか?
野球やサッカー、ボクシングやレスリングなどのスポーツの選手を観察すると示唆があります。これらスポーツにはシナリオがありません。試合の展開は、事前には分からないのです。
彼らは「相手を知り、それに対応した鍛錬や戦略を策定する」も行いますが、それを「自分を知り、鍛錬する」より優先することはないでしょう。ましてや戦いがどう展開するか、山のように場合分けして、各々への対応方法を検討するのは、かなりの使い手になってからです。
常に怠らず力を入れるのは、己を知り鍛えることです。自分を客観的に把握すると共に基礎体力を蓄え、基礎的な攻撃方法、防御方法を身に着けて強化し、いつでも自然に使えるようになるまで鍛え上げます。
企業ができる「己を知り鍛えること」
企業も最初に向き合うべきは「自分」です。但し「自社は何者か(自分のありたい姿)」より「自社は市場・顧客から何者と見られているか(他人が見ている姿)」に注目しましょう。技術・資産・歴史などは内部の物語であって、市場・顧客が関心を持つとは限りません。
市場・顧客が見ているのは「その製品・サービスに満足できるか」、「代替品はあるか?それより有利か」、「それを選ぶ理由は説明できるか」です。これに注目することで、「選ばれない理由」に気付ける場合があります。
モノやサービスの少なかった時代には「少ない候補を並べて、微妙な違いで判断する」ことが可能でしたが、今のように選択肢が多いとそれでは判断がつきません。圧倒的な差がなければ選ばれないのです。
「メリットが他を凌駕している」あるいは「他では得られないメリットがある」の他、「面倒がない、緩和される」等の理由が決め手になるのです。このような差を目立たせる原動力は、多くの場合「自分のありたい姿にこだわること」よりも「自分がどう見えているかに注意を払うこと」です。
それを踏まえた上で、基礎体力を高めるとはどんな意味か?「自らが選んだ事業を良好に実現できる力を高めていく」ことです。
例えばものづくりなら顧客が求める機能・性能・品質を妥当な価格で納期内に実現するという当たり前のことがきちんとできること、そして事業を継続・成長させ、社内に知恵やノウハウを蓄える原資となる利益を出すこと、を両立させることです。
「しかしどんな企業でも得手不得手があるが。」今ではアウトソーシングでフォローできます。「それは不得手なのね。不満足なところがあるけど、仕方ないね」と考える顧客は、今では少ないのです。アウトソーシングを含めた万策を執って実現した方が選ばれます。
ここまで出来た者が、仕上げとしての基礎攻撃力と防御力を高める取組みに入れます。答えはもう半分、出ています。選ばれない理由を排除して選ばれる理由を提供すること、つまり圧倒的な差別化です。このプロセスを、経済性をもって実現した者が生き残れます。
「当たり前のことを、究極の当たり前レベルに実現する。分かっているけれど難しいんだ。」仰る通りです。一方で先ほども挙げたように、アウトソーシングなど使える手は増えています。己を知り、ひるむことなく恐れることなく自分を鍛えた企業が生き残れると考えられます。
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なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。
プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。
独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。
現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。
【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions
- 第84回 前提が覆る時代に生き残る方法
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- 第82回 成長エンジンに乗る決意を固める
- 第81回 価格理論破壊時代に油断する危険
- 第80回 通用しなくなりつつある経済原則:価格
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- 第78回 壁とするか、未掴への入り口とするか
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- 第73回 あいまいさを創造性に繋げる方法
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- 第59回 再構築が望まれるエコシステムの姿
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- 第55回 地域の未掴をエコシステムとして描く
- 第54回 地域の未掴はどのようにして探すのか
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- 第33回 生成AIで新価値を創造できる人になる
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- 第17回 イノベーションが実現する産業構造
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- 第13回 日本のイノベーションが低調な一因
- 第12回 ミスコンから学んだ将来の掴み方(2)
- 第11回 ミスコンから学んだ将来の掴み方(1)
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- 第6回 中小企業5.0
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