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第83回

成長エンジンに乗る3要素を固める

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



2026年はどんな年になるのか?するのか?昨年末に日本銀行が発表した政策金利引上げに絡んでどのような姿勢を取るかが、一つの分岐点になるかもしれません。前回はこれを成長エンジンと捉えるようご提案しました。今回は成長エンジンに乗るための条件について考えます。



政策金利引上げから得られる2つの教訓

政策金利の引上げから、2つの教訓が得られると考えられます。1つは資金ポジションの違いによる分断が生じること、もう1つは「共通」を狙うべきことです。

分断は政策金利引上げの直接の効果として生まれます。「預金のある企業・家計は有利、借金のある企業・家計は不利」という現象です。一方で「共通」はないのか?あると考えられます。ビジネスで利益を出す動機が強まり、改革が進み、交代が進む可能性です。


金利が高いと「ビジネスをしている以上、金利よりも大きく儲けがなければならない。知恵を絞り、努力しなければならない」と考えざるを得ませんが、低金利環境下では「低収益・低成長で仕方ない。それで良い」との意識が芽生え、ビジネスへの期待値も極めて低くなる可能性があります。

すると生産性向上に向けた改革への意欲が失われてしまうと共に、生産性向上に努めない企業にも「居場所」ができて退出しないで済む状況が生じ得ます。人口減少など需要が弱含みの環境では、意欲ある交代要員がいたとしても最初は固定客がいないので既存ビジネスに負けてしまう、このため生産性の高い要員への交代も進まないという弊害が生じます。こうやって低収益・低成長が常態の「失われた10年、20年、30年」が続いたと考えられます。


日銀は金融システムの堅持と通貨(円)への信認強化を司る機関なので「このような意図でもって政策金利を引き上げたのか?」と問われると、「そうではないだろう」と答えざるを得ません。しかし日本経済を舞台に生きる企業あるいは働き手としては「金利が高まったのだから、今まで以上に儲けることに本腰を入れよう」と前向きに捉えた方が自分のためになります。「共通」に着目して、それを活かす「本気度」を高めていくのです。



高金利時代に進む需要の二極化に対応する覚悟

では、どう生かすか?二極化への対応が考えられます。

政策金利上昇による分断は、需要の二極化を生むと考えられます。1つの極はメリットを享受できる層が求める高付加価値・高価格な商品やサービス、もう1つの極は負担が増して慎重な消費を余儀なくされる層が求める妥当な価値を低価格で提供する商品やサービスです。

忘れてはならないのは、どちらも正解だが、両者の間(中途半端)は間違いであることです。高付加価値は実現できないので中途半端な価格で提供する、あるいは徹底的な低価格は実現できないので中途半端な機能やサービスを残しておく。それらは結局、誰からも選ばれません。高金利時代、経営の曖昧さは許されないのです。


ここで興味深いのは、高付加価値路線も低価格路線も、アプローチの基本構造は同じだということです。「思想」を掲げ、「システム」を確立し、「一貫性」を持った経営行動を執ることが求められます。

思想とは“Why”「何のために、その機能・品質とするのか、価格帯とするのか」に関する信念です。高付加価値路線も低価格路線も多大な企業努力が求められるので、その根拠を思想として固めるのです。この問いに答えを持たない企業は迷走します。持ったとしても、顧客や社員・関係者の同意が得られない答えでは力は限られるでしょう。賛同あるいは賞賛が得られるほどの答えを明確に持てた企業が大きな力を発揮できると考えられます。

システムとは“How”「人の単なる気まぐれではなく、思想に裏付けられた仕組みにより業務が回る」基盤です。機械やITに組み込んで自動化し、人が入り込む余地をなくすのが良いとは限りません。現場仕事からビジネスモデル遂行まで思想を良く理解する人々が創意工夫しつつ、AIや物的資産を活用することがポイントと考えられます。

一貫性(consistency)とは「WhyとHowの間に5W1Hを矛盾なく配置する」することです。多くの企業は昔から備えた“How”システムを備え、加えて“Why”思想を抱くようになっていますが、残りの要素全てに一貫性を持つことができていません。顧客“Who”のターゲッティングに失敗している、市場“Where” や製品“What”が間違っているなどがあると、力は発揮できないのです。


成長エンジンに乗るにはこの3要素を固めることがポイントになります。競争に勝つことではありません、自分に勝つことが求められています。それを知ることが、得られる一番の教訓と言えるかもしれません。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>

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【筆者へのご相談等はこちらから】

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なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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