鳥の目、虫の目、魚の目

第51回

内にこもらず、外に出よ 「すぐ動く」経営者が世界を目指せる

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストM

 

ふらっと立ち寄った書店で平積みされた2冊の書籍が目に入った。タイトルは忘れたが、ともに「すぐに動く」ことを奨励する文言だった気がする。あれこれ考えすぎて動けない人が少なくないということだろう。内にこもっていては意思決定が遅くなるだけだ。アニマルスピリッツが求められる世界では致命的といえる。

頭でっかちで理屈屋(決して理論家ではない)が多い気がする。知識や理屈ばかり先行して実際の行動が伴わない。独断と偏見に凝り固まっていることも多々ある。独りよがりなので話し合ってもかみ合わず、喧々囂々と好き勝手なことを言い合うばかりで議論は紛糾する。

そんな時間があるのなら、さっさと動き出せばいい。「善は急げ」というではないか。「すぐ動く」に尽きる。チャンスはいつまでも待ってくれるものではなく、外に出ていく人がうまくいく。「外向き志向」だ。アンテナを高く張って外に目を向け、探しものを見つける。それが成功をもたらす。

地球4週分周る

実践する経営者がいる。「温故知創でサステナブルな社会をつくる」をミッションに掲げ、スマートフォンなどモバイル端末の再生事業を手がけるニューズドテックの粟津浜一社長だ。端末のライフサイクルすべてをカバーする一気通貫のサービスの提供を目指し、まさに東奔西走する。

ミッションの達成に向け、端末を使い捨てるのではなく、手入れを重ねながら使い切る時代を創る。その実現に必要なピースを探すため、「昨年(2025年)は海外出張を10回、距離にすると地球4周分を回った」という。

「外に目を向ける」という行動力の源泉を聞くと即座に返ってきた。「世界に出ていくには、世界に飛び込むしかない。行けば何とかなる」。動き出すことが大事なのだ。

今年1月に米ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES2026」に出展、世界初となるスマホのバッテリー残量予測システム「スマホの御守」を発表した(写真)。ブースでは製品紹介と実機を使ったデモンストレーションを行い、来場者に「バッテリー切れがない未来」を体験してもらった。

その合間を縫って会場を隅から隅まで回った。「めちゃくちゃ歩いた。ピンポイントの課題を持って歩くことも、そうした意図がなくてもブースを回れば何かが見つかる。気づきも得られる」と言い切る。会期中にプレゼンを含めて名刺交換したのは約50人に上った。

足りないピース見つける

今回の参加目的は、創り上げたビジネスモデルが世界で受け入れられるかどうかを確認することだった。この1年を振り返ると、25年3月のスペイン・バルセロナで開催されたモバイル関連の国際展示会「MWCバルセロナ2025」で自動検品ロボットと出会った。すかさず生産拠点があるセルビアに飛んで現地でロボットを評価・検証。その場で契約交渉に臨んだ。同年9月には独ベルリンでのテクノロジー国際見本市「IFA2025」に行って、半固体電池メーカーを見つけた。

海外に飛ぶことで、端末を使い切る時代の実現に必要なピースを手に入れたわけだ。自動検品ロボットと巡り合ったことで、中古端末の外装にできた微細な傷から動作状態、ランク付けまで一貫して行える態勢を整備。中古を新品同様に再生することを可能にした。

一方の半固体電池を取り込んだことで、社会問題となっているモバイルバッテリの発火・発熱リスクを大幅に低減。バッテリーの安全性に加え、長寿命化や利便性向上をアピールすることで、消費者の購買意欲を喚起する。

CESではそれなりの手応えを感じたが、ビジネスチャンスを探るベンチャー企業が集まる会場に足を運んで気付いたことがあった。中国・韓国勢の行動力に目を見張ったというのだ。「日本に足りないものが分かった。『何をしにここに来ているのか』というモチベーションが全く違う」。

ベルリンで見つけた半固体電池を製造するのはPOWER電器(大阪市)。経営を担う中国人は「英語を話せないが、モノを置いておけば良さが分かる」ということで出展を決めたという。同社は「新しい世界を創造する」を理念に掲げ、安全性・信頼性・革新性を備えた製品開発に注力。海外展示会への出展などグローバル市場への発信も積極的だ。

「若気の至り」で突っ走る

完璧を求める日本との違いを見せつけられた格好で、中国・韓国勢に後れを取るのも頷ける。粟津氏は「世界を見据えるなら、引っ込み思案はだめ」と明言する。

「若気の至り」という言葉がある。猪突猛進と言い換えてもいい、ベンチャー経営者の特権だ。少々危なっかしくてもいいから、突っ走ることを許される。失敗しても、先々の大きな成功を生むきっかけになるかもしれないからだ。

イノベーションを起こすには痛みが伴うものだ。それを避けているから、日本経済は停滞から長らく脱し切れない。保守的で内向き志向、しかも守りに徹し攻めを忘れているから、海外で活躍できるベンチャー人材が育たず、国際的な視点でビジネスを展開できない。「日本のベンチャー企業は小粒」といわれる所以だ。

人口減少とそれに伴う市場縮小の日本に閉じこまっていたらどうなるか。結果は分かり切っている。だから世界で勝負するしかない。失敗を恐れないチャレンジャーはゲームチェンジャーになりうるし、新陳代謝を起こせる。目指すは世界だ。粟津氏に「次回の海外出張は」と聞くと「3月のMWCに行く」と返ってきた、どんなピースを手に入れるのか楽しみだ。

 

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