鳥の目、虫の目、魚の目

第7回

大企業病を患うな  風通しのよい組織を、思い込みは危険

イノベーションズアイ編集部 2022年1月28日
 
2021年にシステム障害を頻発させたみずほフィナンシャルグループは22年1月17日、再発防止と顧客の信頼回復を狙いに経営陣を刷新した。金融庁に業務改善計画を提出するとともに、引責辞任する坂井辰史社長の後任に2月1日付で木原正裕執行役を充てる新経営体制を発表した。

木原氏は同日の記者会見で「業務改善計画の遂行に全社一丸となって取り組み、不退転の決意で臨む」と語った。その上で「企業風土を大胆に変革したい。社員の自律的で建設的な発言や行動を歓迎する組織にする」と強調した。金融庁から「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」という企業風土を指摘されていたからだ。

坂井氏を含む歴代トップも企業風土改革を掲げてきたが、実を結ぶことはなかった。今度こそ古い体質と決別できるのか、まさに不退転の決意で臨むべきであり、それこそ経営陣の覚悟が問われる。

失態はみずほにとどまらない。トップが関わった不正会計に端を発し株主対立から会社分割を選択せざるを得なくなった東芝、不正検査を長年にわたり隠蔽してきた三菱電機など日本を代表する企業、エリート集団の不祥事が近年、多発している。

再発防止を誓いながら、なぜ失敗を繰り返すのか。みずほが指弾された企業体質が「日本株式会社」にはびこっているとしか思えない。

要は大企業病を患っているのだ。保守的で非効率的な企業体質・組織風土や、全体最適ではなく部署最適に陥りがちだ。そのため他部署が何をしているのか知らず、興味も持たない。縦割りの弊害で、事業部門が違えば違う会社であり、独特の仲間意識が醸成され、そのムラ社会に閉じ籠もってしまう。ある総合商社は「新入社員時代に配属された部署が〝本籍〟となり、その時に与えられた本籍がずっとついて回る」という。他部署に異動しても最後は本籍に戻るというわけだ。

エリート意識が強い社員もチャレンジを忘れ、変化を恐れる。排他的で、事なかれ主義が染みつくので、言われたことしかしなくなる。自分の責任の範囲内だけしか注意を払わず、周りで何か問題が起きても知らんぷりで、見て見ぬふりをしてしまう。社員のモチベーションが高まるわけがない。

検査不正問題の責任を取って取締役会長を退いた三菱電機の柵山正樹氏は辞任会見で「現場の意見を聞いていたつもりだったが…」と吐露した。社長時代に各地の拠点や工場に出向いて社員と直接対話する機会を設けていたが、社員の本音を聞き出していなかったと悔やんだ。後の祭りだ。工場現場に浸透する品質への過信に加え、縦割り組織のもとで醸成された所属組織への帰属意識の高さとそれに伴う本社への不信感が組織的な隠蔽につながったのだろう。

企業が衰退する原因の一つに社員の保身がある。自分がかわいいのだ。このため過去の継続、現状維持、組織防衛に走ってしまい、周囲の変化に対応できず没落する。こうした自己満足の世界にどっぷりつかると、過去の成功体験、例えば不正検査を許してきたのは「製品は安全であり、求められる性能は出している」「もともと一般的な規格より厳しい基準で作っているので問題ない」という自己肯定に固執、世界の常識から外れてしまう。顧客の信頼を失うのは目に見えているのに危機管理マインドすら働かない。

こうした大企業病を患うのは規模の大小を問わない、中小・ベンチャー企業でも起こりうる。少数精鋭なので属人主義に陥りがちで、人事は停滞する。社長も社員を信頼せず、何でも自分で決めて自分でやってしまう。倒産する会社の社長は過去の成功体験・ルールに固執するため「人の言うことを聞かない、勉強しない、社員を信じない」といわれる。前例にこだわり、変革を求める声にも耳を貸さない。思い込みが強く、風通しが悪いのだ。まさに大企業病といえる。

唐突だが、ここでクイズを一つ。「低いつもりで高いのは何か」。答えは気位だ。

東京・高尾山の山頂近くの薬王院にかつて、「つもり違い十カ条」の看板があった。残り九カ条は以下の通りだ。

高いつもりで低いのは教養/深いつもりで浅いのは知識/浅いつもりで深いのは欲/厚いつもりで薄いのは人情/薄いつもりで厚いのは面の皮/強いつもりで弱いのは根性/弱いつもりで強いのは我/多いつもりで少ないのは分別/少ないつもりで多いのは無駄―。


筆者も看板を見るため高尾山に登ったが、見当たらず関係者に聞いたところ「ある登山者から『こんな看板は外せ』といわれ、倉庫にしまいました」と返ってきた。看板を見て、どの条文か知らないが心にグサッと刺さったのだろう。ところで、あなたの会社はどうだろうか。ビジネスモデルや事業戦略は強いつもりで弱くないか。提供する製品・サービスを愛するファンは多いつもりで少なくないか。社員のモチベーションは高いつもりで低くないか。「つもり違い」は企業成長を阻害するのは間違いない。一度考えてみる必要がある。

 
 

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