NBCのベンチャー育成法がユニークなのは、取材したピッチコンテストもそうだが、名称が「メンタリング・プログラム」とあるように予選から決勝に臨むまで先輩経営者がメンター(助言者)となって寄り添い、面倒を見るからだ。企業と経営者の成長を促すのが開催本来の目的で、井川会長も「コンテストなので最優秀賞など順位をつけるが、終わってからもずっと支えていく」と明言した。審査委員も「メンタリングの成果なのだろう。(予選会から)成長がうかがえた」と話していた。先輩目線で個別メンタリングやスクール形式でのコーチングにより最後まで支えるのがNBCの真骨頂といえ、ステップアップを目指すベンチャー経営者にとって、まさに頼もしい兄貴的存在といえる。
審査委員が証券会社でもファンドでもなく、ベンチャーにとって先輩となる現役上場企業経営者というのも魅力的だ。プレゼンテーション後には現役経営者から収益性などについて厳しい質問やスケールアップに向けての親身になったアドバイスを受けられるからだ。審査委員の一人でメンタリング・プログラムを担当する青木正之副会長(Ubicomホールディングス代表取締役社長)は「尖ったベンチャーが登壇するので審査委員の我々も楽しみ。本業との親和性、相乗効果が見込めるなら業務提携や出資もありうる」という。審査委員は自社の営業資産を生かせるかどうかも念頭に入れてプレゼンに耳を傾けているわけだ。出場するベンチャーにとって、提携による成長機会を得るだけでなく、決定的に足りない資金力を補える可能性もある。
NBCは起業化支援プラットフォームとして、メンタリング・プログラムのほか「IPOスクール」を21年11月に開校した。こちらもIPOの先輩経営者がメンターとなって、ハウツー本には載っていない上場前の心構えやビジネスモデルの磨き方など、知っておきたい情報を伝授。東京証券取引所や証券会社、監査法人とも連携しており徹底的に教えるので、ちょっとした気づきも得られる。
21年のIPOは125社で、07年以来14年ぶりに100社を超え活況だった。ベンチャーの上場は日本経済に刺激を与えるので22年以降も「100社超え」を続けてもらいたい。そのためには世界を見据えるベンチャーの登場が待たれるし、出る杭を伸ばすサポート体制を整える必要もある。