Catch the Future<未掴>!

第86回

自ら前提を変えて道を切り拓く

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



前回、先行き不透明で景気失速の可能性を否定できない時代には「己を知り自己鍛錬する」ことが生き残りのポイントだと考えました。今回は高市政権の歴史的勝利を踏まえて、中小企業が取るべき姿勢を検討します。



歴史的大勝で笑みを見せなかった高市首相

2月8日(日)に行われた衆議院議員選挙で、高市早苗首相が率いる自由民主党が歴史的大勝を遂げました。316議席とは衆議院の2/3を超える議席数で「絶対安定多数」、参議院では過半数を取れていないとはいえ目指す政策を実現できるレベルです。

「大勝を遂げたのだから首相はさぞ笑いが止まらないだろう」かと思うとその逆で、当日や翌日の会見では真剣な面持ちで「政策の大転換を前に国民の信任が必要と考えた。それが得られた」と意志を込めながらも淡々と語っていたのが印象的でした。


今回の選挙ではほとんどの政党が物価高への支援や減税を唱えたので「政策ではあまり差がない」と感じられました。このため首相が「高市早苗を信認するかどうか問う」と発言しても、筆者はその意図を十分に汲み取ることができなかったのです。

しかし、投票当日及び翌日の会見での真剣な表情を見て、高市首相が信認の重さをどれほど重く感じているのか理解できました。



日本の状況を企業に模して考えてみる

日本は今、どんな状況か?新型コロナウイルス感染症蔓延により経済に大ブレーキがかかった時期と比較すると「好調」で株価は史上最高を更新し続けていますが、恩恵に与っているのは限られています。

政府は賃上げを声掛けていますが物価上昇スピードに追い付けず、庶民の生活は苦しくなるばかりです。

人手不足が深刻化して事業を普段通り回すことさえ難しい中、労働分配率が高い中小企業は賃上げが難しく、二重苦・三重苦の状況です。失われた10年、20年、30年の影響から抜け出せない中小企業も「置いてけぼり」をくらっています。


この状況を企業に模して考えてみましょう。半世紀前は最速スピードで発展、「業界ナンバー2」も達成した。しかしバブル崩壊で失速するとその後は足踏み状態で、トップ集団から抜けて今では第2グループに飲み込まれている。

その間、事業継続や発展に向けた投資(効果はまだら模様で、トータルとして効果は芳しくないと言わざるを得ない)のために支出がかさみ、今では年間売上の倍、収入対比だと10倍にも及ぶ借金がある。給料は何十年も据え置き状態で、物価高の昨今、社員は疲弊している、そういう状況の企業に例えられます。


この企業を再生させるため、どんな策が取れるか?過去の経験から小手先の策が効果を出すとは思えません。力を合わそうにも、社員は有能だが最新IT等に対応できる教育・訓練は業界平均を下回る状況。

では新機軸を打ち出せばよいのか?他社が次々とイノベーションを打ち出し現実化して果実を刈り取る姿を見て真似したくなりますが、成功要因の一つに「万が一失敗しても動じない莫大な資金力」が挙げられる以上、当社の現状ではよほどの腹案を注意深く進めなければ成功は覚つきません。



大胆な策の選択前に国民の信を問うた高市首相

高市首相をこの会社に最近に就任した社長とすると、「新機軸を現実化する戦略」を選びました。

大胆な投資を行うと共に、社員には先に生活を安定化してもらうべく給料引上げを目指し、物価高に追いつかない部分は時限的に会社が負担する方針です。これらの財源は借入に頼らなければなりません。


「金融機関等の評価は大丈夫か?」懸念もありますが、社長は「全社員の知恵と力を集結すれば金融不安が顕在化する前に改善効果が現れるだろう。いや、そうしなければ」と考えているようです。

これはとても大胆な案です。歴代首相はこれが有効性を期待できる限られた案の一つと分かっていたでしょう。しかし失敗時のリスクを考えて踏み切れなかったと思われます。


その案を高市首相は敢えて選ぼうとし、実際に採用するには国民の審判が必要と考えて衆議院を解散した、今回の選挙はこのような構図だったと考えられます。

その大勝利は、大多数の国民が高市首相の策に賛成したことを意味しています。この国を盛り立てる経済策が公約通り、力強く実施されるでしょう。


「それを期待していた。私たちの生活が早く楽になることを願っている。」企業の例で言えば、社員のその姿勢が戦略を台無しにします。

「社長は積極案を選んだ。この案を実行して成果をあげることで私たちの未来が拓ける。頑張っていこう」という社員がいる会社が成功を収めます。


「これまでは企業が苦しい時、国が支援してくれていた。今は企業と国は同じ船で頑張る時だ」と前提を変え、前向きに対応することで、私たちの未掴が掴めると考えられます。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>

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【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/index.php/contacts/




なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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