第94回
生成AIを活用して学問を進化させる
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤伸夫

生成AIによって学び方も新たになる可能性があります。これまでは文字情報に情報源を求める(講演など人からの学びではない)場合には、市販の教科書・参考書・専門書を利用していました。これからは生成AIによって「自分専用の教科書・参考書・専門書」を入手できるようになります。今週はこれが学問の進化に繋がる可能性について、掘り下げて考えていきます。
学ぶとは学問の進化歴史をたどること
教科書や参考書・専門書などは何のために存在するか?もちろん、過去に作られた知恵などを習得するためです。ある分野の勉強を進めていく、深めていくとは、その分野における進化の歴史をたどるという意味合いがあります。
例えば算数・数学であれば「古代には数字が使われ四則計算が行われていた、中世は微分、積分が開発された、近代は確率論が活用された」と進化しました。時間軸をできるだけ現代に近付けていくというのが勉強、あるいは学習だったのです。正解が開発された問いの答えを導き出す方法を理解し再現できること、標準から応用までの各種解法を活用できることを目指します。
では過去に学問は、何を原動力に進化してきたのか?様々な要因があります。最初に思いつくのは「偶然」でしょう。リンゴが木から落ちることで万有引力を思いついたニュートン、シャンデリアが揺れているのを見て振り子の法則(周期性)を見つけ出したフーコーなどです。
一方で「必要に応じて」というアプローチもあります。幾何学の原型は、ナイル川の氾濫後に土地を再測量して区分け・再配分する技術として約4000年以上前にエジプトで生まれたとされています。微分は天体の動きや落下など物理現象を正確に予測するため、ニュートンやライプニッツなどにより開発されました。
加えて既存理論の破綻(他理論の必要性)があります。アインシュタインの相対性理論は、ニュートン物理学では説明できない事象を説明するために考えられました。
あるいは道具の高度化も学問発展の原動力となっています。望遠鏡の発明により天文学が革命的に発展した、顕微鏡の発明により微生物学が発展したなどです。
加えて学問間の融合もありました。現代経済学は数学の力を借りて高度化・精緻化されています。他にも学問進化の原動力は沢山ある、無限にあると言っても過言でないほどです。
生成AI活用による学問のオリジナル進化
前回に「あてがいぶちの小説を読むのではなく、自分が読みたい小説を生成AIに書いてもらい、それを読めるようになる」というお話をしました。小説の生産者が“writer“から”producer”になるということです。
小説の著述家として技能がなく、それを行う時間がなくても、小説の構想できる人になれば、オリジナルなエンターテインメントを入手できるようになるのです。
学びにおいても、これと同じポジションを取れる可能性があります。今までは教科書や参考書・専門書から学ぶという受け手としてのポジションがメインでしたが、「自分は何を学びたいのか、今ある学問をベースにどんな方向性で発展させたいのか」を考えて、それに適う専門書を自分自身で企画して生成AIに書いてもらうのです。
可能性が無限にあり、中にはノーベル賞ものの新しい理論がそれから生まれる可能性も否定できません。一方でもっと小さな「新しい発見」も無限に可能です。
前回、生成AIに「徳川家康が行った統治から企業経営者はどんな学びができるか」を相談、一揆対策として自ら東照大権現になったり寺請制度を設けたことなどを学べたとお伝えしました。
徳川家康の統治上の工夫について、歴史愛好家にとっては当たり前の知識かもしれませんが、経営者では知っている人は限られているでしょう。その「融合による学問進化」がAIにより実現したのです。
生成AIはネット上に存在する全ての情報のアプローチできるので、質問しさえすれば「それなりの」情報を探してくれます。AIにとっては経営学と歴史の間にある垣根は関係ありませんから、両方の情報をAIが持つ「疑似ロジカルシンキング」で融合、新たな知見として提供してくれるのです。
ネット上には正確な情報もあれば間違った情報もある、事実だけでなく意見、あるいは事実でも的確とは言えない切り取りを行った情報もあります。
また整理の仕方も、ロジカルシンキングのルールに則った処理ではなく「言葉同士を、統計的に繋げてみた」という程度で処理したものなので、正確性を保証できるものではありません。検証が必要です。一方で、その検証作業をするうちに、自らの学びが深まっていきます。
これからは生成AIを活用、自分なりの新たな学問を作り上げ進化させることで、自分自身も加速度的に進化させていける世の中になっていくと考えられます。
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なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。
プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。
独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。
現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。
【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions
- 第94回 生成AIを活用して学問を進化させる
- 第93回 生成AIで学びを発展させる
- 第92回 生成AI得意分野でも人間力を発揮する
- 第91回 常識はあるが良識はないAIを使いこなす
- 第90回 知識増殖者・意味創造者が果たす役割
- 第89回 新産業革命期に生まれる「意味創造者」
- 第88回 新たな産業革命期を乗り越えるには
- 第87回 「新たな産業革命期」を迎える
- 第86回 自ら前提を変えて道を切り拓く
- 第85回 前提が転覆する可能性に備える
- 第84回 前提が覆る時代に生き残る方法
- 第83回 成長エンジンに乗る3要素を固める
- 第82回 成長エンジンに乗る決意を固める
- 第81回 価格理論破壊時代に油断する危険
- 第80回 通用しなくなりつつある経済原則:価格
- 第79回 未掴入口の捉え方
- 第78回 壁とするか、未掴への入り口とするか
- 第77回 生成AIを活用しながら人間力を発揮する
- 第76回 生成AIがもたらす革命的変化に対応する
- 第75回 100億宣言を実のあるものにする
- 第74回 100億宣言企業が募集されています
- 第73回 あいまいさを創造性に繋げる方法
- 第72回 あいまいさに耐えられない危険性
- 第71回 イノベーションの量産でジレンマ回避
- 第70回 イノベーションのジレンマは不可避か
- 第69回 激動の時代に「どのように」始めるか
- 第68回 激動時代に起業家の発想を取り入れる
- 第67回 トランプ関税を乗り越える産業・政策
- 第66回 トランプ関税を考えて今後を見通す
- 第65回 企業が描きたい大戦略
- 第64回 大戦略を描いていくことの大切さ
- 第63回 技術か経営かではなく、技術も経営も
- 第62回 ニッサン・ホンダの破談をどう捉えるか
- 第61回 社会システム変化の軸となる主体性
- 第60回 社会システム視座の必要性
- 第59回 再構築が望まれるエコシステムの姿
- 第58回 突きつけられる課題と、その対応方法
- 第57回 「好ましいインフレ」を目指す取組
- 第56回 「好ましいインフレ」を目指す
- 第55回 地域の未掴をエコシステムとして描く
- 第54回 地域の未掴はどのようにして探すのか
- 第53回 日本の未来を拓く構想と新しい機関
- 第52回 新政権に期待すること
- 第51回 日本ならではの外貨獲得力案
- 第50回 未掴を掴む原動力を歴史的に探る
- 第49回 明治時代の未掴、今の未掴
- 第48回 オリンピック会場から想起した日本の出発点
- 第47回 都知事選ポスターから考える日本の方向性
- 第46回 都知事選ポスター問題で見えたこと
- 第45回 閉塞感を打ち破る原動力となる「気概」
- 第44回 競争力低下を憂いて発展戦略を探る
- 第43回 中小企業の生産性を向上させる方法
- 第42回 中小企業の生産性問題を考える
- 第41回 資本主義が新しくなるのか別の主義が出現するのか
- 第40回 「新しい資本主義」をどのように捉えるか
- 第39回 日本GDPを改善する2つのアプローチ
- 第38回 イノベーションで何を目指すのか?
- 第37回 日本で「失われた〇年」が続く理由
- 第36回 イノベーションは思考法で実現する?!
- 第35回 高付加価値化へのイノベーション
- 第34回 2024年スタートに高付加価値化を誓う
- 第33回 生成AIで新価値を創造できる人になる
- 第32回 生成AIで価値を付け加える
- 第31回 価値を付け足していく方法
- 第30回 新しい資本主義の付加価値付けとは?
- 第29回 新しい資本主義でのマーケティング
- 第28回 新しい資本主義での付加価値生産
- 第27回 新しい資本主義で目指すべき方向性
- 第26回 新しい資本主義に乗じ、対処する
- 第25回 「新しい資本主義」を考える
- 第24回 ChatGPTから5.0社会の「肝」を探る
- 第23回 ChatGPTから垣間見る5.0社会
- 第22回 中小企業がイノベーションのタネを生める「時」
- 第21回 中小企業がイノベーションのタネを生む
- 第20回 イノベーションにおける中小企業の新たな役割
- 第19回 中小企業もイノベーションの主体になれる
- 第18回 横階層がイノベーションを実現する訳
- 第17回 イノベーションが実現する産業構造
- 第16回 ビジネスモデルを戦略的に発展させる
- 第15回 熟したイノベーションを高度利用する
- 第14回 イノベーションを総合力で実現する
- 第13回 日本のイノベーションが低調な一因
- 第12回 ミスコンから学んだ将来の掴み方(2)
- 第11回 ミスコンから学んだ将来の掴み方(1)
- 第10回 Futureを掴む人になる!
- 第9回 新しい世界を掴む年にしましょう
- 第8回 Society5.0・中小企業5.0実践企業
- 第7回 なぜ、中小企業も5.0なのか?
- 第6回 中小企業5.0
- 第5回 第5世代を担う「ティール組織」
- 第4回 「望めば叶う」の破壊力
- 第3回 5次元社会が未掴であること
- 第2回 目の前にある5次元社会
- 第1回 Future は来るものではない、掴むものだ。取り逃がすな!