第96回
非人間脳力活用時代の構想力
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤伸夫

今までのパラダイムが覆る産業革命期には「構想力」のある者が大きなメリットを受けられると考えらえます。非人間脳力が活用できるようになった今回の革命期に、どのように構想力を発揮できるかを考えていきます。
構想力の定義と、スケール・質へのこだわり
構想力とはなにか?漠然としたアイデアや目標を具体的で実現可能なビジョンや計画にまとめ上げる能力だと言われています。最初は単なる思い付きに過ぎないが、それが完全に実現した全体像を描き(ビジョン)、全体を形成する要素を明確化し、機能や効能を生む構図を描写し(構造化)、実現の道筋を描いて問題の解決方法まで想起して整理する(計画への落とし込み)力です。
新規事業立上げなどで関係者を巻き込むプレゼンテーションの説得力を高めため、構想力が重要とされてきました。
一方で革命期における構想力にはもう一つ、条件が加わります。「構想力」という言葉自体にはスケールや質などについての制約はありません。端的に言えば町内会のイベントを企画する時にでも構想力は発揮できる、構想力が発揮される場合と発揮されない場合とではパフォーマンスに大きな違いが生じる、という認識です。
一方で革命期における構想力を語る時にはスケールや質などに無関心ではおられません。例えば蒸気機関や鋼鉄製の機械設備が利用可能になった場合に、既に存在した工場制手工業で利用していた機械に蒸気機関を付し、鋼鉄製に改める構想を立てるのか、それとも従来は大型船であっても木製帆船だったが今後は蒸気機関を載せた鉄鋼船とする構想を立てるのか、明らかに後者の方がスケールや質などの点で優れていると判定されます。
革命期の構想力には「社会の新しい姿を描く能力」という新しい定義が加わると考えられます。
非人間脳力活用によるメリット
現代の産業革命では、この点に大きなスポットライトが当たると考えられます。現代の産業革命の根幹は「非人間脳力の活用」すなわち思考における人間の制約が外れることにあります。今までの構想はどうしても人間の常識に囚われがちでしたが、今は生成AIを活用して殻を破った発想が可能になるかもしれません。それができるか否かで、構想力に大きな差が出るのです。
制約から解放された生成AIを活用して、構想のスケールや質などをどのように高められるか?例えば「どう実現するか」への心配を解き放って「何を実現したいか」に集中できるかもしれません。今までは構想の自由度よりも実現プロセスでの壁を乗り越えることが課題でした。構想力に構造化や計画への落とし込みが含まれていたのも、その表れでしょう。「今までにプラスアルファを重ねていく」アプローチも、その影響だと考えられます。
しかし生成AIの非人間脳力を活用できるようになると、構造化や計画への落とし込みについてかなりの程度、委託できるようになるでしょう(完全に委託できなくてもヒントやパーツは提供されるので、人間の負荷が軽減されるのです)。このため人間はビジョンあるいはその先の「実現したい意味」に集中できます。壁打ちによりスケールアップ、ブラッシュアップできるかもしれません。
生成AIが構想力を爆発させる
描かれるビジョンが生成AIの台頭後、どんどんとスケールアップしている姿を私たちは見ることができます。前回も挙げたITセキュリティ世界でのClaude Mythosはその典型例でしょう。
ここでは加えて創薬プロセスの変化を挙げておきます。AIによるシミュレーションにより人間の手による実験時代とは比べものにならない成果が生まれたことで、「治療する医療」から「病気になる前に防ぐ医療」へと構想そのものが変わり始めています。
このように考えると、ありとあらゆる場面でスケールアップした質の高い構想を生める可能性を、理解できると思います。
学校は、今の学校である必要はありません。娯楽も、仕事も、いや世界も、今のような姿である必要はないのです。
「そこではどんな意味が実現されているか」を考えることが、これからの構想力になりそうです。
「あまりにもスケールが大きすぎて、イメージが湧かない」仰る通りですね。各々が、自分が気になるところ、こだわるところで構想力を発揮できれば良いと思います。
例えば通院に負担を感じる人は、AIにより健康管理がなされる時代に、病院にどんな存在であって欲しいかを描けるかもしれません。
分析も計画もAIが支援してくれますが「何を実現したいか」を決める支援は難しいでしょう。
これからは構想力こそが人間の、希少な資源になる時代です。事実上全ての人に開かれている門戸から入り、未掴を掴める人になっていきましょう。
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なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。
プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。
独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。
現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。
【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions
- 第96回 非人間脳力活用時代の構想力
- 第95回 未掴は「構想して掴む」時代になる
- 第94回 生成AIを活用して学問を進化させる
- 第93回 生成AIで学びを発展させる
- 第92回 生成AI得意分野でも人間力を発揮する
- 第91回 常識はあるが良識はないAIを使いこなす
- 第90回 知識増殖者・意味創造者が果たす役割
- 第89回 新産業革命期に生まれる「意味創造者」
- 第88回 新たな産業革命期を乗り越えるには
- 第87回 「新たな産業革命期」を迎える
- 第86回 自ら前提を変えて道を切り拓く
- 第85回 前提が転覆する可能性に備える
- 第84回 前提が覆る時代に生き残る方法
- 第83回 成長エンジンに乗る3要素を固める
- 第82回 成長エンジンに乗る決意を固める
- 第81回 価格理論破壊時代に油断する危険
- 第80回 通用しなくなりつつある経済原則:価格
- 第79回 未掴入口の捉え方
- 第78回 壁とするか、未掴への入り口とするか
- 第77回 生成AIを活用しながら人間力を発揮する
- 第76回 生成AIがもたらす革命的変化に対応する
- 第75回 100億宣言を実のあるものにする
- 第74回 100億宣言企業が募集されています
- 第73回 あいまいさを創造性に繋げる方法
- 第72回 あいまいさに耐えられない危険性
- 第71回 イノベーションの量産でジレンマ回避
- 第70回 イノベーションのジレンマは不可避か
- 第69回 激動の時代に「どのように」始めるか
- 第68回 激動時代に起業家の発想を取り入れる
- 第67回 トランプ関税を乗り越える産業・政策
- 第66回 トランプ関税を考えて今後を見通す
- 第65回 企業が描きたい大戦略
- 第64回 大戦略を描いていくことの大切さ
- 第63回 技術か経営かではなく、技術も経営も
- 第62回 ニッサン・ホンダの破談をどう捉えるか
- 第61回 社会システム変化の軸となる主体性
- 第60回 社会システム視座の必要性
- 第59回 再構築が望まれるエコシステムの姿
- 第58回 突きつけられる課題と、その対応方法
- 第57回 「好ましいインフレ」を目指す取組
- 第56回 「好ましいインフレ」を目指す
- 第55回 地域の未掴をエコシステムとして描く
- 第54回 地域の未掴はどのようにして探すのか
- 第53回 日本の未来を拓く構想と新しい機関
- 第52回 新政権に期待すること
- 第51回 日本ならではの外貨獲得力案
- 第50回 未掴を掴む原動力を歴史的に探る
- 第49回 明治時代の未掴、今の未掴
- 第48回 オリンピック会場から想起した日本の出発点
- 第47回 都知事選ポスターから考える日本の方向性
- 第46回 都知事選ポスター問題で見えたこと
- 第45回 閉塞感を打ち破る原動力となる「気概」
- 第44回 競争力低下を憂いて発展戦略を探る
- 第43回 中小企業の生産性を向上させる方法
- 第42回 中小企業の生産性問題を考える
- 第41回 資本主義が新しくなるのか別の主義が出現するのか
- 第40回 「新しい資本主義」をどのように捉えるか
- 第39回 日本GDPを改善する2つのアプローチ
- 第38回 イノベーションで何を目指すのか?
- 第37回 日本で「失われた〇年」が続く理由
- 第36回 イノベーションは思考法で実現する?!
- 第35回 高付加価値化へのイノベーション
- 第34回 2024年スタートに高付加価値化を誓う
- 第33回 生成AIで新価値を創造できる人になる
- 第32回 生成AIで価値を付け加える
- 第31回 価値を付け足していく方法
- 第30回 新しい資本主義の付加価値付けとは?
- 第29回 新しい資本主義でのマーケティング
- 第28回 新しい資本主義での付加価値生産
- 第27回 新しい資本主義で目指すべき方向性
- 第26回 新しい資本主義に乗じ、対処する
- 第25回 「新しい資本主義」を考える
- 第24回 ChatGPTから5.0社会の「肝」を探る
- 第23回 ChatGPTから垣間見る5.0社会
- 第22回 中小企業がイノベーションのタネを生める「時」
- 第21回 中小企業がイノベーションのタネを生む
- 第20回 イノベーションにおける中小企業の新たな役割
- 第19回 中小企業もイノベーションの主体になれる
- 第18回 横階層がイノベーションを実現する訳
- 第17回 イノベーションが実現する産業構造
- 第16回 ビジネスモデルを戦略的に発展させる
- 第15回 熟したイノベーションを高度利用する
- 第14回 イノベーションを総合力で実現する
- 第13回 日本のイノベーションが低調な一因
- 第12回 ミスコンから学んだ将来の掴み方(2)
- 第11回 ミスコンから学んだ将来の掴み方(1)
- 第10回 Futureを掴む人になる!
- 第9回 新しい世界を掴む年にしましょう
- 第8回 Society5.0・中小企業5.0実践企業
- 第7回 なぜ、中小企業も5.0なのか?
- 第6回 中小企業5.0
- 第5回 第5世代を担う「ティール組織」
- 第4回 「望めば叶う」の破壊力
- 第3回 5次元社会が未掴であること
- 第2回 目の前にある5次元社会
- 第1回 Future は来るものではない、掴むものだ。取り逃がすな!