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第92回

生成AI得意分野でも人間力を発揮する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤伸夫 氏

 



「非人間能力(脳力)活用」の時代、情報収集や分析、発想してまとめる分野では生成AIの方が人間よりも扱える情報量や処理スピードが圧倒的に優れています。その中で「良識」が必要となる場面では人間力がポイントになると、前回に検討しました。今回は生成AIが得意とする分野でも人間力がものを言う場面を考えます。



AIの思考は「ロジカルシンキングの疑似生成」

前回は生成AIの思考が万能ではないことを常識と良識を対比して考えました。「社会生活を送る上で『持っていて当たり前』の知識や価値観」という常識と、「健全な判断力をもって、物事の善悪を正しく見極める能力」という良識は、選択肢の検討段階では特段に差は付かないでしょう。

しかし相手の価値観や状況認識、経緯など様々な要素を踏まえて「良識を発揮する」ことは、AIには対応できません。人間力がポイントになります。一方で実は情報収集や分析、発想をまとめるというAIの得意分野でも人間力がポイントになる場合があります。


生成AIはなぜ、人間には及ばないパフォーマンスで情報収集や分析、発想してまとめる作業ができるのか?第1にインターネットという膨大な情報に接していること、第2に思考プロセスが様式化されており、それに基づいて電子回路が素早く処理していることが挙げられます。

「思考プロセスの様式化とは?」思考には大別して「ロジカルシンキング(LT)」と「非ロジカルシンキング(Non-LT)」があります。認知(情報収集)、選択、解釈・推論、出力(言語としてのとりまとめ、行動等への反映)という思考プロセスにおいて、例えばMECE (漏れなく重複なく)、ピラミッドストラクチャー(結論を頂点に、それを支える根拠を論理的に構造化)、ロジックツリー(思考対象を要素分解した上で観察・分析・原因究明・解決策模索等を行う)、演繹法(一般的ルールに具体事実を当てはめて結論を導出)、帰納法(複数事例から共通点を発見、一般法則を導出)などを活用することで、「同じ前提・評価軸に立てば似たような結論に近づく」ことをLTは目指しています。

生成AIは、インターネット世界にある大量の情報から人間が「論理的」と評価した文章や推論過程とされる構造を学習して、情報収集や分析、発想のとりまとめなどを様式に従って実行することでLTを疑似生成していると考えられます。



人間が非ロジカルシンキングを活用する

Non-LTは思考プロセスにおける選択、解釈・推論などについて既存ルール(前提)を活用せず、別の視点や意味づけを導入する思考法です。「同じ情報があっても異なる結論を導き出せる思考法」になる可能性があります。


ではどうやってNon-LTを実践するか?山のようにある中、思いついた事項を挙げていきます。例えば「リンゴが木から落ちるのを見たニュートンは、万有引力以外に何を発見できるか」と考えられるかもしれません。「その実が特大だった」とか「実を支える枝が鳥についばまれて折れていた」、「木から落ちても傷がつかなかったことに関心を抱いた」などと想定して、同じ現象から別の意味を引き出せるテクニックを身に着けていくのです。

また例えばLTではMECEを活用して重複した概念を一本化しますが、Non-LTでは「表現は似ているが本質が全く異なっている」あるいは「同じ本質について様々な表現がなされる」ことに着目して、新たな意味が見出せるかもしれません。例えば「容易と簡単が違うとしたら、どう違うのか」など、意味を創造してみるのです。

加えて例えばある命題があった場合の推論として「問題があれば解決する」というプロセスをたどるのがLTなら、Non-LTとして「問題があっても、どうすれば気にしないで済むかを考える」、「それを美点として納得させる方法を考える」などの推論ができるかもしれません。


このように考えると普通に目にする現象等をもとに、LTで導き出される一般的な結論ではなく、別の結論、新しい意味・概念を導き出せる可能性があります。今、情報の認知、整理、推論の各々に「非ロジカル」な発想法を挙げました。複数を掛け算すると別の結論が導き出せるでしょう。他にも変えられるポイントは沢山あります。

生成AIは、与えられた「自由な発想」を起点に思考展開できますが、前提や価値基準を疑って新たな起点を設けることは得意ではありません。AIは既存世界を高速で整理できる一方で、人間は「世界の見方そのもの」を変えられる可能性があります。人間が出発点を創造、AIと協力して新たな価値を量産できる可能性があります。


(最後に付言すると、ここで提案したNon-LTは「感情のおもむくまま・倫理観の破壊」まで容認するものではありません。より良い価値や意味を生み出すために既存前提を問い直す、高度で責任ある知的活動です。)




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>

https://www.innovations-i.com/panf/id/?id=845



【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/index.php/contacts/




なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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