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第90回

知識増殖者・意味創造者が果たす役割

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



「非人間脳力(能力)の活用」がポイントになる今の産業革命では、これまでとは違った役割を果たす人が求められるようになります。今回は「知識増殖者」と「意味創造者」について考えていきます。


人とAI役割分担の基礎となる「思考の階層性」

現在進行している「IT・生成AIという非人間脳力(脳力)活用」について「これまで人間が担ってきた役割の一部がITやAIに置き換わる、仕事が奪われる」との側面で語られるのが多かったと感じます。

一方で、この動きは人間の役割を変えると捉える方が良いと考えられます。


過去の産業革命による「非人間労力活用」で人間の役割はどう変わったか?それまでは物理的な作用を及ぼすことは、農耕などでの牛馬活用等を除けば人間の役割でした。

それが機械に置き換わったことで人間は重労働から逃れる一方で「考える」役割にフォーカスできるようになりました。「100kg以上の運搬は無理、休養が必要」など人間固有の制約に囚われずに働く機械を利用して、自らは思考に集中することで、産業革命前には夢想できなかった建物や社会インフラ等が実現したのです。


「非人間的能力(脳力)活用」が実現することで、これと同様の現象が生じる可能性があります。IT・AIが得意な思考を任せることで、人間はより高度な思考を担えるようになるのです。


「より高度な思考とは?」思考は多層的に構成され、各層を行き来することで高度・複雑な思考が成し遂げられます。

思考を進める方向性では、認知の土台(基礎層)で記憶や抽象化、具体化(両者の往復)を行います。

理解の深化(分析層)は細分化(科学的思考)や不可視領域の扱い(科学的拡張)を行います。

新しい思考の創造(創造層)では横ずらし(アナロジー)、融合(シンセシス)、空隙(既存概念では説明できない事象を説明できる概念)の探求、思考創造(自らの欲求を満たせる新しい思考法の開発)を行い、更には法則性のないひらめき(無意識)も活用しています。


思考を活用する方向性では、情報の選択(選択層)で優先順位付け・価値判断・意思決定を行い、実行に繋げる(実装層)では試行・フィードバック・修正を行います。

他者と相互作用する(関係層)では情報交換・相互学習・相互刺激、社会・文化への昇華を行います。これら各層を行き来しながら人は思考を完成するのです。



知識増殖者・意味創造者が活躍する仕方

AIはこれから、思考の一部を担う「共同主体」になると考えられます。特に基礎層や分析層の思考はAIの方が広範な情報をもとにスピーディーに、人固有のバイアスに邪魔されずに「適切に」行えることが多いでしょう。

創造層でも特に横ずらしや融合では、量をこなす(多数の案を提出する)側面でAIに軍配が上がります。


一方で思考を活用する方向性では人間の「脳力」が重要です。選択層にしろ実装層にしろ関係層にしろ、活用段階では「相手は誰か」により、あるいは目的、価値観、制約条件により正解が異なるからです。

例えば飲食店が売上を増やしたい場合なら、その店が選ばれる理由が「美味しさ」、「豪華な雰囲気」、「人との暖かい繋がり」、「提供スピード」、「価格」のいずれかで正解は異なります。

さらに言えば強みでは勝負がつかないので弱みを克服しようとする場合、「私の弱みのうち何を克服して強みに変えるか」に正解はありません。それは人や組織固有の「意志」あるいは責任や覚悟の問題だからです。


一方で今指摘した問題は、基礎層や分析層、一部の創造層など量が問われる思考でも人間の介在がポイントになることを示唆しています。

AIは案を無限に創出しますが、数が多いほど手に負えなくなる、即ち選択が難しくなり、実行できなくなる・失敗する可能性が高まります。


ここで適切な者が情報のエンドユーザーとコミュニケーションして「良い問い」でもって意思や状況等を聞き出し、AIへの依頼に中間選択や条件付けなどして方向性を定め、質の高い思考を進めさせることで、情報の活用可能性が高まります。

それを担うのが「知識増殖者」です。


加えて、空隙の探求やオーダーメイド自分専用思考法を用意する思考創造、あるいは法則性のないひらめきを活用しながら今までにない価値を生み出すのは、人間の独壇場です。

なぜか?価値は、生み出せたらすぐに採用され、機能し、成果を出せる訳ではありません。「これを使う意味がある、使うことによる利便性等に意味がある」と説明し、相手に納得させることで採用・機能・成果に繋がるからです。

ロジカルな説明だけでなく、情熱や信念が相手の心に響く場合も多いでしょう。

利害を調整し、反対を乗り越えて、時には政治力を発揮する「押し通す力」も必要です。8

こうして価値を実現するのが「意味創造者」です。


両者のような高度な思考を行うことが、これからの人間の役割になると考えられます。




本コラムの印刷版を用意しています


本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>

https://www.innovations-i.com/panf/id/?id=838




【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/index.php/contacts/




なお、冒頭の写真は ChatGPT により作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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