知恵の経営

第271回

経営にぬくもり・温かみ

アタックスグループ 2020年12月15日
 
今回は、第10回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で、審査委員会特別賞を受賞した静岡県浜松市で、蜂蜜を製造・販売する長坂養蜂場を取り上げる。同社は、長坂善人社長の祖父で創業者の喜平氏が、1935年に自身の体質の弱さを蜂蜜の栄養によって回復したことをきっかけに、他の人たちの健康も願って創業した。

2013年以降は、その思いを受け継いだ若き3代目の善人社長と弟の恭輔専務が2代目の父から後継し、人口わずか1万5000人の町で、年間35万人を集める蜂蜜専門店になっている。

善人氏は、社長に就任した際、売り上げという結果を求めすぎるあまり、社員への思いをないがしろにし、社員を疲弊させてしまった苦い経験がある。「社員第一主義の考えを持たず、ひたすら顧客第一主義で働いた結果、温かみがなくなり、何のために仕事をやっているのか分からなくなってしまった」と、自身がやってきたことが間違っていたことに気付き、自分たちが本当に働く仲間と何をやりたいのかを真剣に見つめ直し、「ぬくもりある会社をつくりましょう」という経営理念と、「BEE HAPPY!」というミッションにたどり着いた。それ以降、毎年5アイテム以上の、他社にはない独自性のある新商品を販売している。

新商品開発方針として、(1)「ミツバチの恵みを通じて客の美と健康づくりの役立ちをし、ぬくもりあふれる暮らしをお届けします」という「BEE HAPPY!」のミッションから外れていないか、(2)開発している商品が暮らしに本当に役に立つか、(3)商品に出合えてよかったと喜んでいただけるか-を重視している。

その結果、蜂蜜を嗜好(しこう)品とはせず、また、テクニックやブームに走らず、商品づくりを行ってきた。何より、開発方針に込められた思いを、新商品にどんどん注ぎ込んでいる。蜂蜜に秘められた力に着目し、食品・健康食品・化粧品などを次々に開発。今現在、年間100種類以上の商品を取り扱っている。

同社は、01年に浜名湖畔沿いに店舗を移転。訪れた方にも自然の営みを感じてもらえるようミツバチ観賞ができる中庭を設けるなど、緑あふれる店舗になった。今ではわずか20坪の小さなお店に年間35万人を超える客が訪れている。

また同社の通信販売を利用する会員も5万人を超え、そのリピート率も極めて高い。さらに、店舗や通信販売を通して客から寄せられる声を、数多くの新商品開発に反映させている。

顧客第一主義の下、客にとにかく喜んでもらおうとすればするほど、社員が疲弊してしまい、結果がついてこない企業も多いように思う。その解決に悩む読者には大いに参考になる事例と思われる。


アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2020年12月15日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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