知恵の経営

第211回

「ドラッカーの質問」に学ぶ

アタックスグループ 2019年9月10日
 
筆者は7月、20代で創業し設立10年目の2017年11月に東京証券取引所の新興企業向け市場マザーズに上場したクックビズの藪ノ賢次社長と対談形式のセミナーを行った。藪ノ社長は「日本が誇る多様な食文化こそが、世界と互角以上に戦える産業である」という志を掲げ、具体的には飲食業界の人材不足・高い離職率といった課題を解決すべく飲食業界特化型の人材ビジネスを展開している。

藪ノ社長は大学卒業後すぐに起業し、幾つかのサービス立ち上げを経験していたが、ある料理学校の幹部から「学校で学んでいる学生のアルバイト先を紹介してくれないか」という要望に応えたことが転機となった。「未来のコック・マネジャーである将来有望な彼らに、学業と相乗効果のあるアルバイトを紹介して、飲食業界から早期退職者を一人でも減らす」ことを目的としてフード産業特化の人材紹介事業を一人で立ち上げた。最初の5年間は自分の給与も取れない状態であったが、初志貫徹で上場を果たした。

藪ノ社長は対談の中で参加者の「成功要因は」との質問に丁寧に答えていた。筆者がなるほどと思ったことを列挙する。

1つ目は事業ドメインの選択が優れたことである。一般に人材紹介ビジネスは紹介者の年収に比例した報酬体系のため、年収が高い層を扱うが、クックビズは飲食業に特化し、比較的年収の低い市場に焦点を絞った。逆張りの発想であった。2つ目は藪ノ社長は飲食業界は素人であったため、先入観無しでマーケティングを行ったことである。料理専門学校生、飲食店主に徹底的にインタビューを行うことで何をすればよいかが見えたという。3つ目は人材の獲得と経営チームの確立である。

筆者は藪ノ社長の話を聞いていて世界的な経営学者、ピーター・ドラッカーの「経営者に贈る5つの質問」が頭に浮かんだ。ドラッカーの第1の質問は「われわれのミッションは何か」である。第2の質問は「われわれの顧客は誰か」である。クックビズのミッションは「食に関する全ての人の成長を実現する」である。「全ての人」とは飲食店で働く社員、経営者、そしてクックビズの社員全てである。またビジョンは『「食」を人気の「職」にする』という中期ビジョンと「食の力で世界をつなぐ」という長期ビジョンを掲げている。現在ではこのことが外国人材、具体的には日本で働きたいベトナム在住の学生にまで広がっている。

藪ノ社長はドラッカーが語った経営の在り方を学び実践している優れた青年経営者ではないかと思った。人口減で内需が減り先の見えない時代であるが、中堅・中小企業の経営者の方にドラッカーの質問に答えることで経営者として成すべきことは何かを考えることを薦めたい。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2019年9月10日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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