マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>
筆者:StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤 伸夫
当たり前すぎて省みることのない「マネジメント」について、改めて考えてみます。実は過去の経緯や誤解に基づいたマネジメントが常識となっている場合があり、これを改善することで飛躍的にマネジメントのパフォーマンスを改善することができる可能性があります。本編は前編として、現場マネジメントについて考えます。
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中川課長がMCS論から導出された現場マネジャーの5つの役割を浸透させようとしても、組織戦略室の上層部は乗り気ではないようです。その理由は、上層部の頭の固さだけでなく、方法論を提示していないことへの不安なのかもしれません。実はMCSは方法論も提示しています。現場マネジャーが行える3つのマネジメントとは何かと言うと・・・。それを復習して、本シリーズは大団円を迎えます。
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約一年にわたった現場マネジャーのマネジメントに関する三上部長の説明も、そろそろ終盤のようです。組織戦略室での実践も、少しずつ進んできました。次なる一歩を進めるため、中川課長は、MCS論から導出された現場マネジャーの役割を浸透させていきたいようです。現場マネジャーの5つの役割を復習してみると・・・。
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現場のマネージャーがマネジメントをする上で重要となるポイントを今回は総括します。アクション・コントロール、リザルト・コントロールそしてピープル・コントロールの各コントロールが得意とする効果を考慮し、組み合わせ、各コントロールの欠点を補い矛盾する目標に立ち向かわせる創意工夫が大事です。
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第47回 現場マネジャーのマネジメント方法(ピープル・コントロール)(後編)
働く人の特性、ひいては人間心理を上手く活用するピープル・コントロールには長所も短所もあります。歴史的に見るとピープル・コントロールはアクション・コントロールやリザルト・コントロールより後に確立されたので、これらのコントロールの欠点をフォローしているという長所があるのです。一方でピープル・コントロールには、他のコントロールが持っているような特性がないという短所もあります。どういうことかというと・・・。
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第46回 現場マネジャーのマネジメント方法(ピープル・マネジメント)(中編)
働く人の特性、ひいては人間心理を上手く利用しながら従業員に働いてもらうのがピープル・マネジメントです。これには、個人としての性格に働きかける以外に、集団としての人の性格に働きかける方法もあります。適切な職場の雰囲気や文化を醸成して、人々を促すのです。では、それをどうやって行えば良いかというと・・・。
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第45回 現場マネジャーのマネジメント方法(ピープル・コントロール)(前編)
現場マネジャーが行うマネジメントの方法として、3つめはピープル・コントロールです。言葉からすると「人を操る」ことだと思われそうですが、そういう意味ではありません。人の性質を鑑みながら、喜んで仕事してもらうように、喜んで会社との軸を合わせるようにしていくマネジメントのことです。ピープル・コントロールにはパーソナル・コントロールとカルチャー・コントロールがあります。このうちパーソナル・コントロールの具体策はというと・・・。
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第44回 現場マネジャーのマネジメント方法(リザルト・コントロール)(後編)
リザルト・コントロール(ノルマ制)は広く耳にしますが、意外と使える場面を選びます。間違った場面で使うと成果が出ないばかりか、働く人々のモチベーションを下げてしまう可能性さえあります。では、どのような場面で使えるかというと・・・。
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第43回 現場マネジャーのマネジメント方法(リザルト・コントロール)(中編)
ノルマとして知られているリザルト・コントロールとは、目標を提示し、達成度合いを基に報酬することによって、望ましい結果の実現に向けて努力するよう動機付けるコントロールだといえます。しかし、うまくいかないことも少なくありません。それは多くの場合、目標を工夫することによって対処できるようです。どういうことかというと・・・。
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第42回 現場マネジャーのマネジメント方法(リザルト・コントロール)(前編)
現場マネジャーが部下をマネジメントする方法として、アクション・コントロールの次にリザルト・コントロールを教えてもらいました。一般には「ノルマ」として知られている方法です。中川課長はノルマ制で辛い思いをしたようですが、三上部長はノルマ制は人間的なマネジメント方法になり得ると言っています。その訳は・・・。
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第41回 現場マネジャーのマネジメント方法(アクション・コントロール)(後編)
現場マネジャーが部下をマネジメントしようとする時、行うべき行動もしくは行ってはならない行動を示して実行を促す「アクション・コントロール」を使うことができます。このマネジメント方法には長所と短所があるので、時と場合を適切に選んで行うと効果をあげることでしょう。それはどういうことかというと・・・。
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第40回 現場マネジャーのマネジメント方法(アクション・コントロール)(中編)
現場マネジャーが行うマネジメントとしてアクション・コントロールを教えてもらっているところです。今回、三上部長が教えてくれたのは「行動制限」というやり方。鍵やパスワードにより、資格のない人がアクセスするのを防止することができます。そして職場で多様されているのが「管理的制約」です。組織のマネジメント改善は、多くの場合、この管理的制約を改善していくことによって行われています。それはどういうことかというと・・・。
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第39回 現場マネジャーへのマネジメント方法(アクション・コントロール)(前編)
現場マネジャーが現場をマネジメントする方法として、まず、アクション・コントロールを教えてもらうことになりました。アクション・コントロールには「なすべき行動もしくはなさざるべき行動を伝え、それを促したり動機付ける、時には強制する」という意味合いがあります。では、行動を促したり動機付ける、時には強制するために何ができるでしょうか?MCSでは「行動責任」や「行動制限」、「事前レビュー」そして「冗長性」という方法が提示されていると三上部長は言います。今回は「行動責任」について説明してもらいました。
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第38回 現場マネジャーのマネジメント方法(全体像)(後編)
現場マネジャーがマネジメントを行う場合にはアクション・コントロール、リザルト・コントロール、そしてピープル・コントロールがあると知った中川課長。ピープル・コントロールが一番優れた方法なら、それだけ勉強しようと思ったようです。しかし、その考えは違っているようです。各コントロールには得意分野があると、三上部長は言います。それはどういうことかというと・・・。
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第37回 現場マネジャーのマネジメント方法(全体像)(前編)
現場マネジャーの役割について話を聞いてきた中川課長。MCSの観点から体系的に説明されたことで学ぶことが多かったのですが、ストレスもたまってきたようです。多様な役割があるにもかかわらず、そのやり方がわからないからです。その疑問を三上部長にぶつけると、答えは意外にも、それはMCSで提示されているとのことでした。三上部長は現場マネジャーのマネジメント方法は3つに分類されるとのことです。それは何かと言うと・・・。
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現場マネジャーの役割として環境整備を指摘された中川課長。初めは何のことか分からなかったようです。しかしマネジメントが成功するかしないか影響する要因の一つに、「部下が指示通り動けば成功する環境を整えてやること」があると言われて、納得します。それ以外の環境整備として何が挙げられるか問うてみると、三上部長は、あるプロジェクトについてサポートを要請されたマネジャーを例に説明しました。それはどういうことかというと・・・。
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現場マネジャーの役割について、パフォーマンスの向上、連携、戦略対応、矛盾解消と教えてもらった中川課長。もうこれで終わりかと思ったら、三上部長はもう一つ、加えました。「環境整備」です。マネジャーが、自分の指示や命令を部下が聞いてくれる下地を作る訳です。これまでは組織が「彼が君たちの上司だ。指示や命令を聞きたまえ」というのが当たり前でしたが、これからはWin=winの関係を元にすべきだと、三上部長は言います。それはどういうことかと言うと・・・。
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矛盾への対応が現場マネジャーに期待されていることを知った中川課長。ただ、それをマネジメントで実現するという意味がわからないようです。矛盾対応は高度に知的な思考によって実現するものだと感じられてしまったからです。三上部長は、シビアな問題こそ現場の働き手に知恵を出してもらうことが必要で、それを促すためのマネジメントが大切になる言います。それをどうやって行うかというと・・・。
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現場マネジャーは矛盾の解消に勤めなければならないと聞いた中川課長。複数の上級マネジャーが異なる観点でマネジメントすることが組織に矛盾をもたらしていると聞いて、上級マネジャー同士で解消してくれたら良いのにと感じてしまいました。が、三上部長によると、そうではないそうです。矛盾した課題に現場が取り組み解決していくことで、組織は強くなります。その重要な役割を果たすにあたっての方向性を、三上部長は10の方向性としてまとめてくれました。それは何かと言うと・・・。
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現場マネジャーの役割として他との連携や戦略対応などを挙げられた中川課長、これらにはトラブルが付きものだし、現場のパフォーマンスとは矛盾する場合も多いと気がつきました。三上部長は、まさに矛盾に対応することも、現場マネジャーの役割だといいます。どうすれば良いか、「これぞ」という決まった策がある訳ではなさそうですが、三上部長は案があるようです。それは何かと言うと・・・。
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戦略への対応方法を「経営理念や経営戦略の、現場向けの翻訳」、「里程標と方法の提示」、「モチベーションの向上」と教えてもらった中川課長。戦略対応とは普段の仕事とあまり変わらないと感じてしまいました。しかし戦略への対応とは「現場の仕事を、以前の仕事から戦略に対応した新しい仕事に変えること」で、東横線渋谷駅の東横線ホーム移設ブロジェクトにも例えられる難事業です。それに対応するためには何が必要かというと・・・。
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現場マネジャーが行うべき戦略対応とは「現場の仕事を変えること」だと聞いた中川課長。その方法について三上部長に尋ねてみました。現場の働き手は、現場の普段の仕事については熟知していますが、戦略に対応することが何を意味するのか、理解できていないことがほとんどです。これを手取り足取り、押し付けではなく現場の働き手と合意しながら理解させ、実行に導くことが現場マネジャーの役割です。具体的には何をすることかというと・・・。
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現場マネジャーの役割について、三上部長はこれまで、現場のパフォーマンス向上と周囲との連携について説明してきました。現場が今、取り組んでいる仕事でより大きな成果を出せるように導く役割です。その次に挙げられたのが「戦略対応」でした。そう聞いた中川課長は、最初は当たり前だろう程度の反応でしたが、現場の仕事を変えることだと言われてびっくりしました。それはどういうことかというと・・・。
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現場マネジャーの役割として連携の促進がありますが、その方法論としては確立したものはないようです。ただ、三上部長は、今までの現場経験からいくつかの方法を体系化しているようです。それを実行することで、他部署との連携が促進されるという訳です。その方法論とは・・・。
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組織がきちんと機能するためには、現場が自己のパフォーマンスを高めるだけでなく、他と連携する必要もあります。組織とは、分業によって、一人ではできない仕事を成し遂げる仕組みと言えるからです。ある部署が仕事をする時に関係しているのは、上流工程や下流工程だけではありません。補給や保守をしてくれる部署とも連携しています。スケジュールなど、情報のやり取りもあります。各部署が、各々の関係者と上手く連携できるかが、組織としてのパフォーマンスに影響を与えているのです。
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第26回 現場マネジャーの役割(現場パフォーマンス向上)(後編)
現場マネジャーの役割の1丁目1番地は『現場が高いパフォーマンスをあげられるようマネジメントする』ことですが、意外なことに、それを行う一般的な方法論は語られていません。多くの方が『とにかく頑張ってみる』という意識でおられるのではないでしょうか?しかしドラッカーは、名著『マネジメント』の中で2つの方法を提示しています。その方法とは・・・。
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第25回 現場マネジャーの役割(現場パフォーマンス向上)(前編)
いよいよ現場マネジャーの役割について話が聞けるとあって、中川課長は喜んでいました。しかし、最初が「現場パフォーマンスの向上」と聞いて、がっかりします。そこで三上部長は「現場のパフォーマンスを高めるために、現場マネジャーは何をすべきなのだろう?」と尋ねますが、それには答えることができません。三上部長は、3つの方法があると答えました。その方法とは・・・。
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いよいよ現場マネジャーの役割について、三上部長が説明してくれることになりました。最初に「現場マネジメントの目的は何か?」と聞かれて、中川課長は「現場の統括」と答えてしまいました。しかしそれは日本の常識であって世界の非常識だそうです。世界の常識は「現場が最高のパフォーマンスをあげられるようにサポートすること」というのが、現場マネジメントの目的です。では、その考え方に基づいた現場マネジャーの役割は何かというと・・・。
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上級マネジャーの役割の最後は、これまで指摘した、戦略に関わる『戦略創造・ブレークダウン』、『現場マネジャーへのマネジメント』、そして複数の現場部門や経理部門などの管理部門を上手く連携させる『部門間連携』、そして『マネジメント体制の再構築』のベースとなる『財務的成果マネジメント』だと、三上部長は言います。これら全てのマネジメントがうまくいっているかどうかは、パフォーマンスを見て判断できるからです。しかし、もし不都合な現象が生じている時、これら4つの役割のいずれがうまくいっていないからか、それをどのように改善すれば良いかを知るのは簡単なことではありません。それを究明する手段として管理会計学が発達してきたのです。
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上級マネジャーにはマネジメント体制を再整備する役割もあると聞いた中川課長。最初は何のことか分かりませんでした。良いマネジメントができるかどうかは、マネジャーに頑張ってもらうことにかかっている他、仕組みに影響されることも多いようです。例えば決裁権者に情報が届かなかったら良い意思決定はできませんし、周囲に配慮する必要のないポジションの者が意思決定を行うと、周囲が困るかもしれません。組織の区分けによって協力して働くべき人々の間に壁が生じてしまう場合もあります。それを見直していくことが、マネジメント体制の再整備です。
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第21回 上級マネジャーの役割(間接部門を含めた部門間の連携)
上級マネジャーの役割の新たな側面とは「間接部門を含めた部門間の連携」を成り立たせ、推進させることだそうです。会社(組織)は分業によって一人では成し遂げられない大きな仕事を成し遂げる仕組みです。しかしパートを担う各部分は、現状のマネジメントのもとでは、協力するように促されているとは言い難い側面があります。それを機能させるのが上級マネジャーの役割です。分業は間接部門との間にもなされています。間接部門との連携が上手くいけば、現場が測り知れないメリットを受けられる可能性があります。
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第20回 上級マネジャーの役割(現場マネジャーのマネジメント)(後編)
上級マネジャーの役割について聞いている中川課長。最後は「現場マネジャーへのモチベーションアップと、配置・育成」と聞いて、もうわかった気分になっていました。アメとムチなのではないかと思ったのです。しかし三上部長は、それは乱用しない方が良い非常手段だと言います。MCS的には、マネジャーとマネジメントされる者、ひいては組織と従業員が目指すところの軸を合わせることがモチベーションに繋がるそうです。すぐには理解できなかった中川課長でしたが、JALの稲盛社長(当時)も活用した方法だと教えられると、以前に見て感銘を受けたドキュメンタリー番組を思い出し、納得したようです。
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第19回 上級マネジャーの役割(現場マネジャーのマネジメント)(中編)
上級マネジャーの役割を教えてもらっている中川課長。次の役割は「結果のフィードバック」と聞いて、部下を評価することだと思い込んでしまいました。しかし三上部長は、ここで大切なのは他人を改めさせるフィードバックではなく自分が改めるフィードバックだと言います。自分のマネジメントを調整したり、現場目標・戦略を変えていくのです。どういう意味かというと・・・。
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第18回 上級マネジャーの役割(現場マネジャーのマネジメント)(前編)
上級マネジャーの役割を聞いている中川課長。次は「現場マネジャーをマネジメントする役割」だと聞いて、当たり前すぎると感じたようです。でも、中川課長が挙げた「現場でトラブルがあった時には調整する」ことはマネジメントではないと反論されて、自分の「当たり前」が間違っていたことを知りました。三上部長は「現場目標・現場戦略の策定・伝達」と「結果のフィードバック」、「モチベーションアップ」そして「配置・育成」だと言います。最初の「現場目標・現場戦略の策定・伝達」は何かというと・・・。
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三上部長からMCSによるマネジメント・コントロールについて聞いている中川課長。これまでMCSの全体的な考え方や特徴などを聞いてきましたが、各論についての説明を聞きたくなってきました。最初は上級マネジャーの役割についてです。現場マネジャーの役割を考える前に、前提条件として、上級マネジャーの役割を押さえておきたくなった訳です。三上部長は、上級マネジャーには5つの役割があり、その筆頭は戦略機能だと言っています。それは何かというと・・・。
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第16回 ベンチャー企業の経営危機に対処する(後編)次の段階に対応する
新しい成長段階への突入がベンチャー企業の行き詰りの原因になったことを理解した中川課長、モバイルクラフト社は第1段階から第2段階に移行したことを見抜きます。混沌とした職場に規律を持ち込む指揮のおかげで、息を吹き返した訳です。しかしいつの間にか「自主性の危機」が訪れて、当社は新たな問題に直面することになりました。それはどんな事情だったのでしょうか?どうすれば対処できるのでしょうか?
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第15回 ベンチャー企業の経営危機に対処する(中編)発展段階説
期待の星だったベンチャー企業が行き詰った原因は新しい成長段階に突入したからではないかと、三上部長は言います。成長は漸進的にではなく段階として訪れるという説明がよく分からなかった中川課長も、人間も段階的に成長していると聞かされて納得したようです。グレイナーの企業発展段階説とは・・・。
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緊急の用事があると呼びだされた三上部長。以前に買収したベンチャー企業、モバイルクラフト社(仮称)が危機的状況に陥っているとのことです。三上部長は、何も調べていないのに、ベンチャー企業が新しい成長段階で陥りがちな問題に苦しんでいるのではないかと指摘して中川課長を驚かせます。モバイルクラフト社の資料を読んで、その印象は正しかったと確信を得たようです。その問題は何かというと・・・。
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上位マネジャーと現場マネジャーとが、それぞれ複数の階層にまたがっていると聞いた中川課長、何が両者を分けるのかを知りたくなりました。その秘密が決算書にあると、三上部長は言います。決算書中の特定項目に責任を負うのが「財務責任センター」です。これには「売上センター」「コストセンター」「利益センター」「投資センター」があります。財務責任センターが、現場マネジャーを統括しているのです。一方で、財務責任センターをマネジメントしているのが、上位マネジャーです。
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第12回 現場マネジャーとは課長のこと?上位マネジャーとは?
MCSではマネジャーを、現場マネジャーと上位マネジャーの2種類に分類していると聞いて、中川課長は、課長と、それ以上の階層にあるマネジャーだと思い込んでしまいました。しかし三上部長によると、そうではないそうです。現場マネジャーも上位マネジャーも、複数の階層にまたがっていると、三上部長は言います。では、なぜそういえるかというと・・・。
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マネジメント・コントロール・システムの意味を改めて問うた中川課長、「マネジメントのコントロールが確実にされる仕組み」と教えてもらいました。あるマネジャーに自分なりにフィードバックして改善してもらうだけでなく、より上位階層にあるマネジャーが配下にあるマネジャーのマネジメントをフィードバックしながら改善していく、それを行う仕組みが「マネジメント・コントロール・システム」なのです。
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「なぜマネジメント・コントロール・システムと言うのか?マネジメント・システム、もしくはコントロール・システムで良いではないか?」と質問した中川課長に、その考え方は違うと三上部長は答えます。中川課長の考え方だとマネジメントとコントロールは似た概念ですが、マネジメント・コントロール・システムという場合は、全く違う概念なんだそうです。期待する結果を得るためにマネジメントを調整していくこと、すなわちコントロールしていくことを意味しているそうです。
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「マネジメント・コントロール・システム(MCS)とは、マネジャーを任命して、行うべきマネジメントを明確化して役割として与える。それを上司がチェックしてコントロールに繋げる」ということだと聞いた中川課長。一時は納得しましたが、よくよく考えると当たり前の話ではないかと気付きました。それをぶつけると、三上部長は、実はその通りで、だからこそMCSの考え方は普遍的なんだと答える一方で、実は皆が知らないような示唆があると言います。最初はマネジャーの役割です。マネジャーは2種類に分けられるそうです。
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「エコシステム」を例に「システム」が理解できた中川課長は、三上部長に促されて、マネジメントのシステムについても考えてみます。「誰が」「どのようなマネジメントをするか」を明確に示し、それがうまく機能するような「コントロールする仕組み」を内在したシステムのことをマネジメント・コントロール・システム(MCS)と言うそうです。日本ではまだ浸透していませんが、それを導入することが、ホワイトカラーの生産性を向上させる方法ではないかと、三上部長は言います。
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我が社に新しいマネジメントを取り入れるためにはシステム化が必要だと言われた中川課長。しかし、ここでいう「システム」が何なのか、皆目見当がつきません。そこで三上部長は、まず、システムについて説明することにしました。特定の目的を実現するために組織や社会をシステム化するとは、担当者と役割を明確化した上で、うまくいかなかった場合にはコントロールできる仕組みを備えることがシステム化だと、三上部長は説明します。
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これからの我が社のマネジメントは、現場に従わせることではなく、現場を支援することを目指すべきだとの話を聞いた中川課長、組織企画室としてのレポートを書き始めたようですが、筆が止まってしまったようです。その話には重大な間違いがあるような気がしてしまったからです。それを三上部長にぶつけると、一番肝心なことをいい忘れていたとのこと。マネジメントのシステム化だそうです。
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自分の命令を部下に従わせることを目的としたマネジメントから、部下が良い仕事ができるようにサポートすることを目的にしたマネジメントにという三上部長に、中川課長は、一時は良い案だと感じたようですが、すぐに思い直したようです。それだと、部下が上司の命令を聞く根拠がなくなってしまうと。しかし三上部長は、その答えはドラッカーが示してくれていると説明します。
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今の我が社のマネジメントでは『プロフェッショナルたれ』という行動理念は実現できないと主張する三上部長に、『でも、それしかないなら仕方がないのではないか』と中川課長は食い下がります。三上部長は、日本のマネジメントが欧米に比べてパフォーマンスが低いという現象は、欧米のマネジメントはテイラーが発明したものが源流となっているという仮説で説明しました。
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徳川家康やマックス・ウエーバーが作った身分や権限をベースにマネジメントしていく考え方は、創意工夫や協力を求める組織には向いていないと、三上部長は言う。「でも、仕方ないではないですか。今はそれしかないのだから。」という中川課長に、三上部長は、それ以外の考え方もあるはずだと答えた。
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第2回 徳川家康とマックス・ウエーバーの亡霊に操られている?
翌週、中川課長は組織戦略室の応接に三上部長を招いた。昔話に花を咲かせた後、自然と話しはマネジメント改革に向かう。中川課長は、昔、三上部長が「徳川家康とマックス・ウエーバーの亡霊に操られている」と言った言葉を思い出した。彼らは悪人ですかという中川課長に、三上部長は、そうではない。彼らが作った仕組みを使って、彼らが意図したのとは違う目的で、組織を運営しようとしている自分たちの方に責任があると諭す。「全く分かりません」という中川課長に、三上部長は、徳川家康やマックス・ウエーバーが実現した組織の意味を教えてくれた。
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とある機械製品製造企業で現場部門統轄マネジャーを勤める三上部長と、かつて三上部長の部下だったが新設の組織戦略室に配属された中川課長の物語。組織戦略室で中川課長は「現場マネジャーの仕事を抜本的に見直せ」と指示されるが、その意味が全くわからない様子。以前にその下で働いた三上部長がマネジメントに一家言持っていることを思い出して訪ねてみたが・・・。
プロフィール
StrateCutions
代表 落藤 伸夫
「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。
それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。
筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。
Webサイト:StrateCutions