知恵の経営

第160回

合成樹脂シート市場を創造

アタックスグループ 2018年5月28日
 
独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となり高収益を実現した企業を紹介している。今回は合成樹脂繊維を用いた製品と、その技術を応用した産業機械の製造・販売を行う萩原工業(岡山県倉敷市)の池クジラぶりを見ていきたい。

同社は1962年11月、萩原邦章会長の父親、賦一氏が花ござ用のたて糸を合成樹脂で製造するために設立。現在の主力製品はブルーシートだ。もともと水やほこりなどを防ぐ用途に作られ工事現場や災害現場のほか、花見や運動会のときにも敷物として使われている。同社が日本で初めて製造し、国内市場規模80億~100億円のうち、シェア3割とトップ、国産に限れば9割を占める。

高いシェアを獲得できた理由は3点ある。1つは「おもしれえ直ぐやってみゅう」という創業精神が根づいていることだ。「たかがブルーシート、されどブルーシート」と人をうならせるだけの進取の精神に基づく、高い技術力が育っている。

2つ目は独自の生産体制。高シェアを誇るシート製造には、材料となる糸から最終製品のシートまで一貫生産を行う国内唯一のメーカーであると同時に、工場内の製造設備を自社で開発してきた。

売り上げの4分の3を占める合成樹脂事業部と、同じく4分の1を占めるエンジニアリング事業部がある。2つの事業部はユーザーとメーカーの関係にもあり、合成樹脂事業部はエンジニアリング事業部の先端技術を活用することで、他社に先駆けて狙ったニッチ市場に新製品を投入できる。

3つ目は市場の選択にある。狙う市場は建築・土木、産業、農業用資材が中心で成長性に乏しい分野に見える。しかし新規参入がない非価格競争が可能なニッチ市場を選べば、トップシェアを維持し、高収益が可能になる。工事現場や災害現場などのように高い機能を求める市場で、一般製品の約数倍の価格でも同社が選ばれている。価格ではなく品質で勝負できる中高級品市場だけを選んでいる。

ブルーシートのほか、トップシェアを持つ製品は、テニスコート向け人工芝用パイルヤーン、土嚢(どのう)、カーペット基布、コンクリート補強繊維など多数ある。商品アイテム数は2000~3000種にも上る。

同社は、ニーズに基づいた中核技術を柱に改良・開発を続ける技術力と、自社開発の製造設備で他社に先駆けて新製品を投入できる生産体制を構築し、顧客から高く評価されている。

業界に存在しなかった「使う場所や用途に合わせて、さまざまな色や厚み、糸の素材を使い分けた合成樹脂加工製品」を販売する池のクジラになった。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

2018年5月28日 フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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