知恵の経営

第235回

医療機器産業の台頭期待

アタックスグループ 2020年3月10日
 
工業統計調査によると、日本の工業生産額は約305兆円である。これを業種別にみると、自動車を代表とする輸送用機器が約60兆円、以下、化学工業の28兆円、食料品の26兆円、鉄鋼の19兆円、そして工作機械を中核とする生産用機械が17兆円などと続く。

自動車を中核とする輸送用機械は、工業生産額の19.7%を占める最大産業である。加えて言えば、金属製品や鉄鋼、生産機械、非鉄金属、電子、プラスチック、そしてゴム工業などは、少なく見ても、その50%以上は自動車が市場である。

そこで、これら業種の合計生産額である88兆円の半分の44兆円をプラスすると、自動車産業の生産額は104兆円。つまり、工業生産額のなんと34.1%を占めるのである。

日本のモノづくりは、自動車産業に過度に依存しているのである。それゆえ、もしも自動車産業に深刻な問題が発生したならば、国内経済は同じく深刻な状況に陥るといっても過言ではない。

つまり、日本の工業は極めてアンバランスな業種構成と言える。しかも、過去20年以上、自動車産業の生産シェアは年々高まっているのである。こうした構造は、早急に戦略的に変えていかなければならない。自動車産業は、既に国内は決定的に成熟化しているばかりか、少子高齢化の影響もあり、右肩下がりの業界になってきている。

さらに、電気自動車(EV)への移行や、メーカー間の戦略的連携、部品の共通化や一体化の進行は、関連産業のビジネスチャンスを将来大きく減少させていくと思われる。だからこそ、もう1つの国際的比較優位な産業の台頭が強く望まれるのである。

モノづくり産業が、とりわけ参入してほしい産業は医療機器分野である。医療機器の生産額はわずか1.9兆円と、工業生産高の0.7%しかなく、輸入浸透度、つまり輸入品の占める割合は53.9%なのである。国内で使用されている医療機器の過半数以上は、海外の医療器メーカーに依存しているのである。

日本の産業史をみると、大半は輸入品(舶来品)の国産化がスタートであり、その意味でも、ぜひとも多くの中堅・中小企業にチャレンジしてほしいのである。医療器産業は、自動車産業とは異なり、業界は多品種少量市場であり、その加工精度はもとより高品質が要求される。だからこそ、中堅・中小企業が担うべきと言える。

医療機器産業が、近い将来、外貨を稼ぐ産業になったとき、日本のモノづくり産業は、再び世界から評価・尊敬されるに違いない。

<執筆>
経営学者・元法政大学大学院教授 人を大切にする経営学会会長・坂本光司氏
2020年3月10日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

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