知恵の経営

第231回

「工芸の工業化」で生産革命

アタックスグループ 2020年2月12日
 
広島市佐伯区で、木製家具の製造・販売を行うマルニ木工を知っているだろうか。1928年に山中武夫氏が、加工によって自在に形を変える木の不思議さに魅了されて創業した会社で、木材の曲げ技術を確立した。現社長の山中武氏は、国内はもちろん、欧州、北米、オーストラリアなど世界30カ国へ輸出し、世界に多くのファンを持つ。代表的商品である「HIROSHIMA」といういすは、米カリフォルニア州にあるアップル本社にも数千脚納入されている。

ここまで成功できた理由の一つは、創業者の「工芸の工業化」というこだわりを徹底的に追求してきたことにあった。工業化と言っても、長年伝統工芸として受け継がれてきた、日本の木工職人が持つ匠(たくみ)の技、一品ごと手作りすることからくる工芸美を失わないよう、全部を機械任せにはせず、バランス良く、人の手も入れながら量産化することに挑戦した。

そのため機械の自社開発、匠の技を数値化するプログラミング技術、分業による生産技術など、さまざまな技術開発に取り組んできた。その結果、全て手作りだと100万円くらいになってしまういすも、工業化によって10万円台で作ることができるようになっている。

また、外部の著名なプロダクトデザイナーをアートデザイナーとして迎え入れ、世界に誇る日本発の家具ブランドとして確立することを目的に、「MARUNI COLLECTION」を立ち上げた。これにより、木工メーカーに徹し、デザイナーと協働することで、従来の家具業界では考えすらしなかった「世界の定番」を目指した。

国際的なデザイン感覚、日本独自の木に対する美意識、そして精緻な木工技術の3つが融合した造形美は、「名作」を生み出し、世界から注目を集めることになった。「HIROSHIMA」は、著名なプロダクトデザイナー、深澤直人氏とのタッグによって生まれた、氏の「生涯の名作」でもある。

ただ、デザイナーと連携すると言っても、外部デザイナーの出すアイデアを丸ごと受け入れ、それを形にすることはしない。構造上の無理が生まれ、いすとしての機能を果たせなくなる可能性があるからだ。最高のモノづくりのために、妥協することなく、座り心地、強度、デザイン性、手の届く価格という4つをバランス良く維持する。

精緻な木工技術により、国際的に著名なデザイナーと一緒になって名作を量産し、手の届く価格で提供したからこそ、国内外から高い評価を得ることができたのだ。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2020年2月11日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

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アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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