知恵の経営

第232回

第4次産業革命の時代における、トヨタの「危機感と価値観」

アタックスグループ 2020年2月18日
 
現在は第4次産業革命の時代といわれている。インターネットの普及と人工知能(AI)の進化が企業経営に及ぼす影響は絶大で種々な産業で既存のビジネスを破壊し始めている。例えばトヨタ自動車は「従来のクルマをつくる会社からモビリティーを提供する企業にモデルチェンジする」と宣言している。最近は豊田章男社長が2020年末に閉鎖するトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地を利用し、コネクテッド・シティーを完成させることを発表し話題となっている。このプロジェクトの狙いについてトヨタは「人々の暮らしを支えるあらゆるモノ、サービスが情報でつながっていく時代を見据え、この街で技術やサービスの開発と実証サイクルを素早く回すことにより新たな価値やビジネスモデルを生み出し続けること」としている。

トヨタはTPS(トヨタ生産システム)と継続的な原価改善活動によって資金を生み出し、この資金を使って100年に1度といわれる大競争時代を乗り切ろうとしている。今回発表された「コネクテッド・シティ・プロジェクト」は自動車メーカーの枠を超えた事業ドメインを目指す偉大な実験といえる。その裏付けとなるのは「もっともっといい車をつくろう」という愚直とも言えるまじめな生産活動によって生み出された資金なのである。

筆者は仕事の上でトヨタグループ中核企業の経営陣や工場の現場リーダーと接する機会が多い。いつも感じるのが「一人一人が組織の一員として自らの役割を認識し常にベストを尽くしている」ということである。トヨタには「物づくりは人づくり」という標語があるが、この標語は死語ではなくトヨタには仕事を通じて人が育つ風土があるように感じる。

自動車産業は極めて裾野の広い業界である。戦後の不況期にトヨタが倒産の危機に直面し、日本銀行名古屋支店長の救済案に銀行団が協調融資し、危機を乗り越えた歴史がある。トヨタが生き残ることができたことは現在の日本の繁栄を支えていることのつながり、日本経済にとって大変有り難いことであったと思う。

経済のグローバル化が進む中で日本の自動車メーカーは海外生産にシフトしている。トヨタも海外へシフトしてはいるが、一方で国内で300万台の車をつくると言っている。最近この言葉を聞かれることが少なくなっているが、トヨタで働く人たちが「もっともっといい車をつくる」という価値観を持ってトヨタ車と会社の価値を向上させていくことで技術・製造立国日本のリーディングカンパニーとして大競争時代を乗り切り、発展することを期待したい。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2020年2月18日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

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アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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