知恵の経営

第171回

今こそ、問われる障害者雇用

アタックスグループ 2018年9月25日
 
改正障害者雇用促進法が2018年4月1日に施行された。障害者の法定雇用率は、民間企業がこれまでの2.0%から2.2%に、国・地方公共団体などが2.3%から2.5%に、都道府県などの教育委員会が2.2%から2.4%に、それぞれ引き上げられた。厚生労働省のホームページを見ると、障害者がごく普通に地域で暮らし、地域の一員としてともに生活できる「共生社会」実現の理念の下、従業員が一定数以上の規模の事業主は、障害者の割合を「法定雇用率以上にする義務があります」と書かれている。(アタックス研究員・坂本洋介)

こうした思いとは裏腹に発覚したのが、省庁および地方自治体などの公的機関で、規定の審査をせず障害者の法定雇用率を水増しした問題である。

障害者手帳の確認が厚労省の通知に記載されていなかったことから、各自が自己申告で障害者に認定するなどの採用が行われ、その認定も、弱視や健康診断において異常が確認されたとする職員を障害者認定していたというから、あきれるばかりだ。さらに、この問題を排除した正確な平均雇用率は2.49%から1.19%にまで下がったというから、悪意ではなかったという説明を信じろというのも無理な話だ。

本来、障害者雇用を先頭に立って旗振り役として推進していくべき、省庁および地方自治体などの公的機関がこれでは、わが国の障害者雇用の促進、共生社会の実現など、夢のまた夢でしかない。

わが国の障害者雇用の現状を見ると、2017年の調査結果では、民間企業の雇用障害者数は49万5795人、実雇用率は1.97%でしかなく、法改正前の義務であった2.0%にも達していない。さらには、法定雇用率を達成した企業の割合も50.0%と、ようやく半数に達したというのが実態だ。

ただ、民間企業における障害者雇用は確実に進んでいる。雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新していることからもそれが分かる。また、前年の調査と比較すると、雇用障害者数は前年比4.5%(2万1421人)増加、実雇用率も同じく0.05ポイント上昇している。

さらに、法定雇用率達成企業も同1.2ポイントの上昇と、いずれの数値も増加・上昇していた。

民間企業の障害者雇用への機運が年々高まっているなかで起きた今回の問題は、それに水をさす本当に残念な問題だ。しかし、考えようによっては障害者雇用に、より真剣に向き合うチャンスともいえる。

本当にわれわれがすべきことは、嘘をついてまで満たさなければならない法定雇用率ではなく、働く機会を求めている障害者の夢を実現させることなのである。

2018年9月24日フジサンケイビジネスアイ掲載
 
 

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